スバル フォレスターの新型と旧型を比べてみた

スバルのエース的存在、フォレスターを新旧比較

1997年に登場したクロスオーバーSUVのスバル フォレスター。個性的なモデルが多いスバルのラインアップの中で比較的地味(!?)なモデルだが、実はスバルの年間販売台数の1/3を占める重要なモデルである。そんなスバルのエース的存在が5代目にフルモデルチェンジされた。

ただ、ユーザーの声の中には「旧型(4代目)から変わり映えしない」と言う意見もあるそうだ。そこで、今回は新型と旧型を比較してみようと思う。

新旧フォレスターを画像でチェック(画像196枚)

フォレスターのエクステリア/ボディサイズ/取りまわし性を新旧比較

新型のフォレスターのエクステリアは、インプレッサからスタートしたスバルのデザイン言語「ダイナミック×ソリッド」の全面採用に加え、室内が広い/積載性が良いをイメージさせる容積感と単なる四角いクルマにならないようなスタンスの良さを兼ね備えた「モダンキュービックフォルム」と言う考え方を盛り込んでいる。それでもメカニズム的に変更が難しいフロントタイヤとAピラーの位置関係や、長めのフロントオーバーハングなどから、パッと見たプロポーションは旧型と似ているのも事実である。

しかし、実際に日の光の下で見比べると旧型とは似ているようで異なる。つまり、進化よりも深化、パッと見た瞬間の華やかさではなく、見れば見るほどジワーっと良さが伝わるデザインなのだ。

旧型はカジュアルで「使ってナンボ」と言ったツール的な良さとスバルらしい機動性の良さを感じさせるデザインだったが、線の細さや腰高感などからSUVらしい“たくましさ”に欠けていたのも事実だ。

対して新型はより筋肉質でたくましさを増したフェンダー周り、走りの力強さを表現したホイールアーチ、安心感のある前後バンパーデザインなどにより、よりSUVらしい力強さ/機能性の表現に加えて細部の作り込みの良さなどから、車格が1ランク上がったくらいの印象を受ける。

ちなみに、新型フォレスターのボディサイズはボリューム感が増したデザインのため旧型よりもかなり大柄になったように見えるが、実際の寸法は全長4625×全幅1815×全高1730mmと先代(全長4595×全幅1795×全高1715mm)に対して必要最小限のボディ拡大が行われている。ホイールベースは旧型+30mmの2670mmだが、最小回転半径は5.4m(旧型比+0.1m)と取り回しのよさも健在だ。

フォレスターのインテリアを新旧比較

キープコンセプトのエクステリアに対しインテリアは全面刷新。インパネ周りはデザイン/質感共に大きくレベルアップした新型インプレッサ用がベースだ。

「デザインが共通になってガッカリ」と言う意見も聞くが、実はこのインパネはインプレッサ用として開発したのではなく、「次世代スバルにふさわしいインパネは?」と言うコンセプトで開発された物である。とは言え、SUVのフォレスターへの採用にあたって“らしさ”がプラスされている。

インパネからドアトリムまでラウンドした形状はクルマに守られている安心感を表現。更にフォレスター用に新設計された高さ/幅を上げてインパネから繋がる強さを表現したセンターコンソールとの組み合わせにより「SUVの力強さ」を、ステッチや立体感のあるツインキルト加工を施したドアトリムは「本物感」と「SUVらしいゆとり」を感じさせる演出をプラス。ちなみにフォレスター用センターコンソールは意匠だけでなく、インプレッサよりもヒップポイントの高いシートポジションにシフトレバーの位置を上げることで操作性にも寄与している。

旧型もインプレッサ用をベースにしながらセンタートレイの処理や、グリップが特長のドアパネルなどを用いてフォレスターらしさを演出しているものの、新型と比べるとよく言えばカジュアルで機能的、悪く言えば事務的で安っぽく感じてしまう。

ただ、個人的には旧型はメーカーオプションでSDナビゲーション&ハーマン・カードンサウンドシステムが選択可能(新型は海外向けに設定あるが日本向けは設定なし)だったのは偉い!!

フォレスターの居住性を新旧比較

居住性は全幅アップが室内の乗員同士の距離の拡大、ホイールベース拡大(+30mm)が後席の居住性アップに用いられるが、実際に座ると足元スペースは旧型に対して「おっ、広い!!」と実感できるレベル。

スバル伝統の視界の良さに加えてスクエアなボディ形状による積載性の高さはもちろん、デザインにこだわりながらも1300mmの開口幅を持たせたリアゲート周りなど、機能が犠牲になっていないのも嬉しいポイントだ。

このように乗員全てが快適に過ごせる空間を構築しているのに対して、旧型はどちらかと言えば前席が優先であること、後席やラゲッジスペースは狭くないが広くもない……と言った感じである。

フォレスターの動力性能を新旧比較

新型フォレスターのパワートレインは水平対向2.5リッターNAと水平対向2.0リッター+モーターの「e-BOXER」の2タイプ。どちらも改良版となるCVT・リニアトロニックの組み合わせだ。

2.5リッターNAはすでに発売中のインプレッサ/XV用の2.0リッターNAと同じく直噴化とそれに伴う最適設計で約90%の部品を見直したことで、184ps/239Nmのパフォーマンスと14.6km/L(JC08モード)の省燃費を両立。e-BOXERは2.0リッターエンジンとトランスミッションの間に10ps/65Nmのモーターを挟んだシンプルなパラレルハイブリッド。基本的なシステム構成は先代XVハイブリッドを継承するが、バッテリーがニッケル水素からリチウムイオンに変更されている。

メインユニットの2.5リッターNAはドカーンと出るパワーではないが、実用域のトルクアップと想像以上にレスポンスのいい特性と合わせてリニアトロニックのレシオカバレージ拡大などにより、スペック以上の力強さと実用域のドライバビリティの良さが印象的。「これならNAでも十分だよね」と言わせるポテンシャルを持つ。

e-BOXERはSIドライブのモードで性格が異なる。「I」はモーターアシストが自然で2.2リッターNAくらいのトルク感だが、「S」はアクセルを踏んだ際に瞬時に立ち上がるトルク感はまさに「電動ターボ」と言ってもいいくらいの力強さ。ただ、モーター出力がそれほど高くないため、その加速感は高回転まで続かない。

旧型には「SUVのスポーツ」と呼べる2.0リッターターボがあった・・・

対して旧型のメインユニットは2.0LリッターNA。

新世代ボクサーになり実用域のトルクやドライバビリティはよくなっているものの、絶対的な出力は過不足なし……と言ったレベルなので、高速道路での加速やワインディングでは必要以上に高回転を多用してしまうのも事実だ。

ただ、旧型には新型にはラインアップのない2.0リッターターボ「DIT」がある。レヴォーグ/WRX S4と同じエンジンで、出力こそフォレスターの性格に合わせて控えめな280ps/350Nmだが、「SUVのスポーツ」と呼べるパフォーマンス。実用域からモリモリトルクが湧き出る最近のダウンサイジングターボとは異なり、回すほどにパワーが盛り上がるタイプだが、動力性能に余裕があるため、燃費は状況によっては2.0リッターNAを上回ることも!?ちなみにディーラーでは新型にターボが搭載されないことが解ると、旧型ターボの駆け込み需要が一気に増えたと言う話も聞いている。

現在、スバルの多くの車種はNA中心のエンジンラインアップでターボの肩身は狭くなっているが、スバルが掲げる「安心と愉しさ」の「愉しさ」のためには、ターボは欠かすことのできない物のような気がしている。そう考えると、新型フォレスターのエンジンラインアップはちょっとドライすぎるような気がする。ここは旧型の勝ちである。

MT+エマージェンシーブレーキの組み合わせを切望!

トランスミッションは新型ではCVTのみの設定で、旧型にラインアップされていた6速MTは消滅……。メーカー関係者は「ラインアップしても売れない」、「アイサイトとの組み合わせが難しい」と語るが、トヨタやマツダ、ホンダがMT+エマージェンシーブレーキの組み合わせをラインアップしており、販売比率も想定以上の高さと聞く。そう、シッカリ訴求すればシッカリ売れることを証明している。ここはターボエンジンと合わせてスバルに考えを改めてもらいたい部分の一つである。

フォレスターの走行性能を新旧比較

フットワークは旧型も水平対向エンジン+シンメトリカルレイアウトと言う素性の良さに加えて、2015年11月のマイナーチェンジで大きく手を入れたことで、モデル末期まで評価は高かったが、個人的には、「SUVの中ではいいけど、他のスバル車と比べると」とエクスキューズがあったのも事実だ。

対して、新型は「本当にSUVなの?」と言うハンドリング性能を実現している。スバルの次世代プラットフォーム「SGP」は、ディメンジョンが不利なSUVでベストを目指して開発されたプラットフォームである事と、インプレッサ/XVで開発された知見がフィードバックされた結果である。

先代に対して「違和感のないシットリしたステア系」、「操作に対して応答遅れがなく正確にクルマが動く」、「4つのタイヤにシッカリ仕事をさせている」と言った感覚に加え、「ストローク感の高いしなやかさ」、「アタリのやさしい快適性」がプラスした新型フォレスター。

乗り味は17インチ仕様は先代からの正常進化で、フォレスターらしい心地よいダルさを残しながらも、操作に忠実で安心感のある走り。一方、18インチ仕様は17インチ仕様より精緻でドシッとしたステアフィールとフラット感を重視し姿勢変化を抑えたハンドリングで、「目線の高いSTIコンプリートカー」と呼びたいくらいの正確な走り。

e-BOXER(アドバンス)は、軽快なハンドリングのガソリン車に対して、ハイブリッド化で重くなった車両重量を活かしたゆったりしたクルマの動きと、18インチを履きながらもシットリした乗り味は、ガソリン車よりも動的質感が高い。

AWDシステムは旧型/新型共にアクティブ・トルクスプリットAWD(ACT-4)+X-MODEで、最低地上高220mmを確保。旧型でもクロカン四駆に匹敵する悪路走破性を備えるが、新型は制御の最適化に加えてX-MODEモードの切り替えを2モード備えることで、悪路をより楽に安心して走ることが可能となっている。ただ、新型は電子パーキングブレーキなのに対して旧型は機械式。利便性は新型が断然上だが、低μ路での曲がるキッカケやもしもの時の第3のブレーキと言う意味では、機械式も捨てがたい。

フォレスターの安全システムを新旧比較

安全支援システムは旧型のアイサイトバージョン3に対して、新型は最新のアイサイト・ツーリングアシストを採用。アイサイトバージョン3はライバルに対して優位な点はあるものの、同メーカーの中で比べると、最新が最良であるのは仕方ないだろう。

更に新型にはスバル初採用の「ドライバーモニタリングシステム」も搭載。インパネ上部にあるマルチファンクションディスプレイ付近にあるカメラで、ドライバーのわき見/居眠りを推定して注意を促すことで安全運転をサポート。また、登録したドライバーを顔認証で判断、シートポジションやドアミラー角度、空調設定の自動調整を可能にする。実際に使ってみるとかなり便利な機能で、全車標準装備にしてもいいくらい(現在はアドバンスのみ)。

スバル フォレスター新旧比較 総評

このようにクルマの仕上がりに関しては新型の圧勝だが、個人的にはちょっと優等生すぎるような感じもする。例えば、エンジンはバランスの良さは2.5リッター、時代を考えるとe-BOXERだが、「ベストはコッチ!!」と言う決定打に欠ける。そういう意味では、荒削りだが個性溢れる旧型のターボや6速MTを指名買いしたくなる気も解らなくない。

と言うわけで、素性が良いクルマは欲が出る……と言うことで、思わずスバルファンがニヤッとするような “プラスα”が欲しい。例えばMTはともかくせめてターボエンジンを組み合せたフォレスターのフラッグシップ「STIスポーツ」などはどうだろうか?

[TEXT:山本 シンヤ/PHOTO:和田 清志]

スバル 新型フォレスターの主要スペック

スバル 新型フォレスターの主要スペック

グレード

アドバンス(e-BOXER)

プレミアム

全長×全幅×全高

4625×1815×1715mm

ホイールベース

2670mm

車両重量

1640kg

1530kg

乗車定員

5人

エンジン種類

2L水平対向4気筒 DOHC

16バルブ デュアルAVCS直噴

2.5L水平対向4気筒 DOHC

16バルブ デュアルAVCS直噴

排気量

1995cc

2498cc

エンジン最高出力

107kW(145ps)/6000rpm

136kW(184ps)/5800rpm

エンジン最大トルク

188N・m(19.2kgm)/4000rpm

239N・m(24.4kgm)/4400rpm

モーター最高出力

10kW(13.6ps)

--

モーター最大トルク

65N・m(6.6kgm)

--

駆動方式

AWD(常時全輪駆動)

トランスミッション

リニアトロニックCVT(マニュアルモード付)

JC08モード燃費

18.6km/L

14.6km/L

WLTCモード燃費

14.0km/L

13.2km/L

市街地モード燃費

11.2km/L

9.6km/L

郊外モード燃費

14.2km/L

14.6km/L

高速モード燃費

16.0km/L

16.4km/L

価格(消費税込)

309万9600円

302万4000円

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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