トヨタ 新型カローラスポーツ試乗│ベーシックな標準仕様モデルの高水準な仕上がりに驚く!

大衆FFハッチバック 新型カローラスポーツの実力はいかに!

正式名称は事前の噂通りトヨタ「カローラスポーツ」となったこのモデルも、トヨタ 新型クラウンと同時に千葉のかずさアカデミアパークにて、試乗会が開催された。

読者の皆さんは既に、カローラハッチバック(仮称)という名のプロトタイプを富士スピードウェイのショートコースで試したレポートを読んだと思う。僕はこのプロトタイプについては、富士のショートコースで試乗した時から好印象を抱いていた。

端的に言って、その走りはしっかりと磨きこまれており、大衆FFハッチバックとしてみた時に、ライバルと比べても遜色ないどころか、乗り心地の良さや静粛性の高さなど、トヨタらしい部分でのアドバンテージも実現できていたのだった。

そして今回は、ナンバープレートが交付されて初の公道での試乗ということになる。果たしてクローズドの富士ショートコースで抱いた好印象は、公道ではどうだったのか? 早速レポートしていきたい。

>>新型カローラスポーツの内外装デザインを画像で見る(128枚)

輸入車のような雰囲気をもつ外装と、歴代カローラにはないオシャレな内装

それにしてもカローラスポーツ、佇まいが良い。デザインやその顔つきは賛否両論あるだろうが、少なくともタイヤとホイールハウスの隙間はしっかりと詰めてあり、輸入車的な雰囲気を漂わせている。

また、アグレッシブな顔つきから、印象的かつスポーティなサイドビュー、そして力強さとスタンスの良さを感じるリアビューといった具合で、全体的に“座り”の良い感じの佇まいだ。

一方のインテリアは、僕が試乗したモデルではサドルタンのカラーとなる本革とファブリックのコンビのシートが、これまでのカローラにはなかったオシャレな感覚を生んでおり、この点についても良い印象を覚えた。室内の質感はとびきり高いわけではないし、最新のモデルという未来感も強くはないが、ゴテゴテとしすぎず飽きのこない感覚を持っている。

同クラスに敵なし!?ノーマルのアシが高級車のような乗り心地を実現

今回試乗したのは、1.2リッターの直噴ターボエンジンを搭載し、CVTを組み合わせたGグレード(16インチタイヤ)と、1.8リッターの直噴エンジンにモーターを組み合わせたお馴染みのTHS-IIハイブリッドG “Z”(18インチタイヤ)の2台。まずはGグレードから試乗した。

走り出してまず圧倒的にインパクトがあるのは、タイヤの転がり出しが極めて滑らかに躾けられていること。この走り出しの滑らかさは高級車を思わせるようなスムーズさで、今回のカローラを送り出した関係者の自慢の部分でもある。

確かに新型カローラスポーツは、自慢の通り滑らかに転がり出し、その後、実に優れた乗り心地を示してくれる。路面の凹凸をしっかりといなし、荒れた路面を整えながら走っているかのように振動をしっかりとカットして、心地よい感覚を伝えてくる。

しかも驚きなのは、この仕様のショックアブソーバーがノーマルであること。KYBによるこの新開発ショックアブソーバーは、電子制御可変のような特別な機構を持たないものの、新たに開発したオイルなども含めて、このクラスの常識を覆すものになったといえるだろう。だから正直、ベーシックなモデルがこの乗り心地なのか!と感心させられるのだ。

そしてもちろん乗り心地だけでなく、コーナリング時の姿勢等も見事に躾けられており、実に素直に走ってくれる印象を受けた。これまでのTNGAを採用したモデルの中でも、もっともステアリングフィールが優れたものに進化したことも関係しているといえるだろう。

この結果、決して走る楽しさ・気持ち良さが前面に出ている感じではなく、ファントゥドライブとまではいかないけれど、操作に対して忠実に反応してくれる無駄のないハンドリングが構築されているので、毎日乗って飽きのこない軽やかさや味わいがあるのだと思えたのだ。

1クラス上を感じさせる静かな室内環境

さらに走って印象的なのは、静粛性の高さだ。このクラスのコンパクトハッチの場合、路面とタイヤが生むロードノイズ等は、ある程度室内に侵入する傾向にあるが、新型カローラスポーツではそれを感じさせない静粛性の高さがある。

特に低音のゴロゴロしたような音がしっかりとカットされており、1クラス上を感じさせる静かな室内環境が構築されていた。

 優れた乗り心地と忠実なハンドリング、そして高い静粛性といった具合で、カローラスポーツは比較的ベーシックな位置付けにある1.2L搭載のGでかなり高く評価できると感じた。

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プリウス譲りのハイブリッドシステムはさらに滑らかに、そして気持ちよく進化

そして次に1.8リッターエンジンとハイブリッドシステムを搭載したハイブリッド G “Z” グレードに試乗したのだった。

1.2リッターターボのGグレードからの乗り換えでは、端的にまず走り出しがハイブリッドゆえの静かで滑らかで力強いという印象を与えてくれて、未来的な感じは当然こちらの方が強い。

プリウス譲りのハイブリッドシステムはある意味完成形ともいえるわけで、走らせた時の違和感はどんどん少なくなっている。確かに踏み込めば、アクセル開度と加速が乖離するゴムバンドフィールはあるものの、以前よりは違和感は少なくなっているし、日常使いであればむしろ、アクセルの踏み込みに対するツキの良さは気持ち良い力強さを感じさせるほどになっていると表現できる。

AVSの方がスペック的には上の「はず」だが、実際のアシの印象は・・・

とはいえ走り出しで感動を覚えたのは1.2リッターターボの方。なぜなら今回試乗したハイブリッドG “Z”グレードにオプション装着されるショックアブソーバーは電子制御可変のAVS(Adaptive Variable Suspension System)。先に試乗したKYB製のノーマルダンパーとは別物なため、単純に印象が異なるのだった。

スペック的には当然、AVSの方が上である。なぜならそこにはAVSならではの減衰力の可変幅を活かした、しっとり感を伴った乗り心地の良さや、歯切れの良いスポーティさを実現できる「はず」だからだ。

しかしながら、以前に富士のショートコースで試した時もそうだったのだが、今回のショックアブソーバーはノーマルとAVSを比べると、やはり明らかにノーマルの方が好印象を与えてくれる。

なぜスペックが優れているAVSよりもノーマルダンパーが好印象なのか

タイヤサイズもノーマルが16インチで、AVS付き18インチという違いも関係しているのだろうが、やはり今回はノーマルのショックアブソーバー装着車の滑らかな走り出しと乗り心地の良さが良い印象だった。

比べるとAVSは、乗り心地や走りそのものに悪影響はないものの、ノーマルと比べるとしなやかさには欠ける部分がある。本来ならば、AVSの採用によって、よりしなやかで乗り心地の良い動きを作る幅があるはずなのだが、この点でノーマルが優勢なのだ。おそらくさらに高い速度域や、様々なシーンで走れば良い面が出てくるのだろうが、今回の試乗シーンでは印象の良さはノーマルに譲っていた。

同じ日に試乗会を開催した新型クラウンも同様の印象だったのだが、今回のAVSは世代的な進化がないからか、カローラに装着されるAVSそのものの新世代へのスイッチが必要だと思えた。

静粛性の高さは、1.2リッターターボと同じように好印象を得ていただけに、ここにノーマルのショックアブソーバーで得られた走りだしの滑らかさや、乗り心地の良さが加わればさらに良いモデルになるだろうと感じたのだった。

ハイブリッドモデル+ノーマルサスペンション仕様の公道での印象については、次の機会があればまたご紹介したいところだ。

カローラスポーツ、もうひとつの目玉“コネクティッド”の完成度は!?

それにしても今回の新型カローラスポーツは、トヨタの新世代アーキテクチャであるTNGAのコンパクト形では第3弾ということもあって、これまでのプリウスやC-HRに比べてもさらに好印象を与えてくれるものに進化している。

その意味ではTNGAの中で最も完成度の高さを感じさせるプロダクトになったといえる。それほど、今回新型カローラスポーツに実際に試乗してみて、とても好印象を得たのだった。

しかし!今回は新型クラウンとともに新型カローラスポーツもまた、「コネクティッド」を売りにしてきたわけだが、この点では新しさをあまり感じられなかったのだが残念なところ。

確かにオペレーターサービス等が新型カローラスポーツにまで降りてきたことは歓迎したいが、車内での曖昧な会話を拾ってくれる対話型のユーザーインターフェイスに関しては、既に登場しているメルセデス・ベンツ Aクラス(日本では未発売)に比べると、できることが限られているという印象を受けたのも事実だ。

LINEとの提携によって始めたサービスも、クルマと文字で対話することにプラスして、クルマの機能を操作できるような内容まで踏み込んで欲しかったともいえる。あるいは日本語ならではの知性的な対話型インターフェイスがあっても良いのかもしれない。ともかく、この点に関しては正直なところ「期待はずれ」といえるものが多かったのだった。

しかしながら、こうしたサービスはハードウェアの大幅な変更なくしても進化させていくことはある程度できるだろうから、今後の進化にも期待したいところである。

兎にも角にも標準仕様の高水準な仕上がりに驚かされた

それにしても今回は、ノーマルモデルに驚かされる試乗会だったということに尽きる。

正直、カローラスポーツという大衆ハッチバックが、これほどまでに走りにおいて驚かせてくれるとは思っていなかった。富士のショートコースで試乗した時もその予兆は確実にあったが、今回公道で試乗したことで、その完成度の高さはホンモノだと痛感したのだった。

みなさんも機会があったら是非、一度試してみることをおすすめしたい。

[Text:河口まなぶ Photo:小林岳夫]

>>新型カローラスポーツの内外装デザインを画像で見る(128枚)

トヨタ カローラスポーツの主要スペック

トヨタ カローラスポーツの主要スペック
グレードHYBRID GGG

駆動方式

2WD

2WD

4WD

トランスミッション

電気式無段変速機

(リダクション機能付きのTHS2)

CVT

CVT

価格(消費税込)

252万7200円

225万7200円

245万1600円

WLTCモード燃費

30.0km/L

16.4km/L

15.2km/L

市街地モード燃費

29.4km/L

12.9km/L

12.3km/L

郊外モード燃費

32.9km/L

16.9km/L

15.6km/L

高速モード燃費

28.8km/L

18.2km/L

16.6km/L

全長

4375mm

4375mm

4375mm

全幅(車幅)

1790mm

1790mm

1790mm

全高(車高)

1460mm

1490mm

1490mm

ホイールベース

2640mm

2640mm

2640mm

乗車定員

5人

5人

5人

車両重量(車重)

1370kg

1310kg

1370kg

エンジン

直列4気筒+ハイブリッド

直列4気筒+ターボ

直列4気筒+ターボ

排気量

1797cc

1196cc

1196cc

エンジン最高出力

72kW(98PS)/5200rpm

85kW(116PS)/5200~5600rpm

85kW(116PS)/5200~5600rpm

エンジン最大トルク

142N・m(14.5kgf・m)/3600rpm

185N・m(18.9kgf・m)/1500~4000rpm

185N・m(18.9kgf・m)/1500~4000rpm

モーター最高出力

53kW(72PS)

--

--

モーター最大トルク

163N・m(16.6kgf・m)

--

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燃料

無鉛レギュラーガソリン

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河口 まなぶ
筆者河口 まなぶ

1970年生まれ。大学卒業後、出版社のアルバイトをしたのちフリーランスの自動ライターとなる。1997年に日本自動車ジャーナリスト協会会員となり、自動車専門誌への寄稿が増え、プレイステーション「グランツーリスモ」の解説も担当。現在、自動車雑誌を中心に一般誌やwebで自動車ジャーナリストとして活躍。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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