スバル 新型フォレスター2.5L X-BREAK 試乗|乗ってわかったスペック以上の実力とは

新型フォレスターをいよいよ日本の公道で試す!

2018年3月のニューヨークオートショー2018で世界初公開されたスバル 5代目フォレスター。国内向けは正式発売前の2018年5月18日から予約が開始され、以降、約2カ月で販売目標(2500台/月)を大きく上回る9100台を受注した(7月29日時点)。正式発売は7月19日なので、多くの人が実車を見ずに注文を入れているわけで、フォレスターのブランド力の高さ、信頼性を証明していると言えるだろう。

そんな新型フォレスターを公道で試す機会がやってきた。筆者はすでに別の取材でスバルの葛生テストコース内で試乗済み。クルマの仕上がりに関してはかなり好感触を得ているものの、やはり最終結論は“リアルワールド”を走ってから判断したい。

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アウトドアをイメージさせるデザインの「X-BREAK」

試乗車はガソリン車の中で、よりアウトドアをイメージさせる内外装コーディネートが特長となっている「X-BREAK(エックスブレイク)」だ。

エクステリアはキープコンセプトながらも、スバルの新デザイン言語「ダイナミック&ソリッド」と、フォレスター独自の「モダンキュービック」の考えが盛り込まれ、実車を見ると先代モデルと似ているようで似ていない。パッと見の華やかさではなく、見れば見るほどジワーっと良さが伝わるデザインである。

ただ、ドライブトレインの制約により、フロントタイヤからAピラーの位置関係を大きく変えられないので、全体のプロポーションバランスは“変わった感”が少ないのも事実。この辺りはパッケージ自体を刷新させてガラッと印象を変えたマツダやボルボとは対照的だ。

パッと見ると新型フォレスターはかなり大柄になったように感じるが、実際の寸法は全長4625×全幅1815×全高1730mmと先代モデル(全長4595×全幅1795×全高1715mm)に対して必要最小限の拡大。スバル伝統の視界の良さに加え、最小回転半径は先代比5.4m(先代+0.1m)と取り回しのよさも健在だ。

全面刷新したインテリア!どこが変わったのか

一方、インテリアは全面刷新。先代同様にインプレッサ系のインパネをベースにするが、デザインと質感が大きくレベルアップしたのに加えて、コクピット感覚を強めるために高めに配置されたセンターコンソールや、リアルさを目指した加飾やステッチなどを効果的に用いることでSUVらしさを演出。これはエクステリア以上に大きな進化だ。

ただ、個人的にはフォレスターの個性の一つだったグリップ式のドアハンドルが廃止されたのは残念。また、情報過多なモニター類、数が多すぎてブラインドタッチが難しいステアリングスイッチ、そして決して使いやすいとは言えないディーラーオプションのナビゲーションなど、インプレッサやXVで改善してほしいと思っていた部分もそのまま引き継がれてしまった…。

ちなみに、X-BREAKはレッドオレンジとグロスブラックのワンポイントが特長となっているが、現在は様々なメーカーのクロスオーバーSUVにオレンジが採用されていることもあり、やや食傷気味な感も否めない。

ホイールベースは先代+30mmとなる2670mmだが、拡大分は全てリアシートの足元スペースに活用。実際にリアシートに座ると足元の広さは実感できるレベルである。

ラゲッジスペースはVDA容量で、505リットルから520リットルにアップされているが、スクエアでフラットな形状であることとリアゲート開口部も歴代フォレスター最大の1300mm確保と、数値以上に使える積載能力を持つ。

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パワートレインは約90%の部品が見直しに!

パワートレインは、直噴化とそれに伴う最適設計により約90%の部品が見直された2.5リッターNAの「FB25」とCVT「リニアトロニック」の組み合わせである。

184ps/239Nmのパフォーマンスは決してドカーンと出る力強さではないが、実用域のトルクアップと想像以上にレスポンスの良さ、リニアトロニックのレシオカバレージ拡大などにより、スペック以上の力強さと実用域のドライバビリティの良さが印象的で「これならNAでも十分だよね」と言わせるポテンシャルを備えている。

リニアトロニックも、普通に乗っている限りはCVTのネガティブな部分はほとんど顔を出さないレベルに来ているが、ワインディングを走ると必要以上に高い回転を使いたがる特性がちょっと気になる。もちろん、世にあるCVTの中ではトップレベルにはいるのは間違いないが、レスポンスやダイレクト感などに関しては、そろそろ限界に来ているかもしれない。

燃費は14.6km/L(JC08モード)だが、一般道から高速道路、ワインディングをバランスよく走って11-12km/L台だったが、実燃費の詳細なレポートはこちらを参照していただきたい。

◎燃費レポートをチェック>>スバル 新型フォレスター 2.5リッター実燃費レポート|排気量アップはどう影響するか!?気になる燃費を徹底検証

いい意味でSUVっぽくないハンドリング性能

走りの部分はインプレッサからスタートしたSGP(スバル グローバル プラットフォーム)を水平展開しているが、実はディメンジョンが不利なSUVでベストを目指して開発されたプラットフォームである。

加えて、インプレッサ/XV開発時の知見やフィードバックによるアップデートも相まって、各部はレベルアップされている。絶対的な剛性だけでなく剛性バランスや力の流れも考慮したボディ、理想のジオメトリーでよく動くサスペンションなどが盛り込まれているのだ。

先代モデルの実力もなかなか高かったものの、「SUVの中では」とエクスキューズがあったが、新型フォレスターは「本当にSUVなの?」と言いたくなるハンドリングである。

先代に対して「違和感のないシットリしたステア系」、「操作に対して応答遅れがなく正確にクルマが動く」、「4つのタイヤにシッカリ仕事をさせる」と言った基本性能の高さに加えて、「抜群のロールコントロール」、「ストローク感の高いしなやかさ」、「アタリのやさしいフラットな快適性」がプラスされている。

ちなみにX-BREAKは17インチアルミホイール+225/60R17の組み合わせで、フォレスターシリーズ唯一のオールシーズンタイヤを履いている。最低地上高は220mmかつ決してハイグリップタイヤではないにも関わらず、ワインディングではロールやクルマの動きは大きめながらも手に汗握ることなく、むしろ「楽しい!!」と感じられるレベルを実現していた。

欲を言えば、もう少しコーナリングの一連の動きに一体感が欲しいのと、クルマの無駄な動きを抑えるとより気持ち良さは増すと思うが、これはSTIスポーツパーツ(フレキシブルタワーバー&フレキシブルドロースティフナー)を装着すればほぼ解決できるはず。

そこから先は、より精緻でドシッとした乗り味が特長の18インチ仕様「プレミアム」を選びたくなるが、フォレスターの旨み「オン/オフのバランス」と言う意味で言えば、やはりX-BREAKがベストかなと感じた。

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最新の「アイサイトツーリングアシスト」が全車標準装備

スバル得意の安全運転支援システムは最新の「アイサイトツーリングアシスト」が全車標準装備となっているが、アイサイトセーフティプラス(運転支援&視界拡張)は上級グレードのプレミアムとハイブリッドモデルであるe-BOXER搭載のアドバンスのみ標準装備で、X-BREAKとツーリングではオプションとなる。

スターティングプライスを下げたい気持ちも解るが、安全をアピールしているからこそ全車標準装備にすべきだ。この辺りは同じ立ち位置のボルボ(全グレードどころか日本で発売する全モデルに標準装備)を見習ってほしい。

このように、新型フォレスターは「おっ!!」と言うような“飛び道具”はないものの、SGPを始めとする基本に忠実な設計により、全体のバランスは非常に高い所にあり、最も激戦区と言われるCセグメントのクロスオーバーSUV市場でトップ争いをするための武器は全て備わっている。そういう意味では「オールロードツアラー」と呼んでもいいかも。

ただ、個人的にはちょっと優等生すぎる感じがするのも事実である。もちろん、スバル最量販モデルと言う立ち位置を考えると全く異論はないが、加えてスバル好きが思わずニヤッとするようなフォレスターシリーズを牽引する“個性”があると魅力はより引き立つと思う。例えば、次世代ダウンサイジングターボを搭載した全天候型スポーツ「STIスポーツ」などはどうだろうか?

[Text:山本シンヤ/Photo:茂呂幸正]

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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