アウディ 新型A6アバント 55 TFSI クワトロ 試乗|自動運転の未来を感じた往復1000kmのロングドライブ(2/2)
- 筆者: 伊藤 梓
- カメラマン:茂呂 幸正・アウディジャパン・MOTA編集部
よく曲がるのに、なぜか感じた走りへのモヤモヤ
アウディはとにかくどのモデルも直進性がいいので、高速道路の長距離移動は本当に苦がない。普段私は自分で運転するのが好きなのでACC(アダプティブクルーズコントロール)はあまり使わないのだが、今回のA6試乗ではわりと積極的にオンにしていた。
その理由は多分、走りの感覚にあった。
これまでのアウディよりもさらに増した”コンピュータールームのような感覚”は、どうやら室内インテリアのせいだけではないようだ。
レールに乗せられているような感じ
これまでアウディは無機質ながらも、たとえばこちらがスイッチを押したらそれにカチッと応答する、そういう受け答えはしていたように思う。なので、デジタルながらも素直な反応を楽しむことができて、運転し甲斐はあったのだ。
ところがA6では、その受け答えが薄まって、クルマだけでできる領域が増えたような、そういうやりとりを楽しむのとは違う方向へ行っているような気がした。4輪操舵や可変のステアリングギアレシオの影響が大きいのか、ハンドルを切った量に対して、とてもよく曲がる。
「よく曲がるクルマ」は本来は楽しいものだが、 A6はそうではなくて、たとえば電車が線路を進んでいくように、電車の意図ではなくレールによってその進路を決められている感じだ。自動車のインプレッションで自分がハンドルを切った感覚とクルマの動きがぴったり合うことをよく「オンザレール感覚」と言うが、それとは違う、まさにそのままの意味での「レールに乗せられている感」を覚えた。
自動運転への過渡期、A6はその狭間にいる
モヤモヤが晴れた瞬間
富山までの道のりはやはり最初に予想したとおり、何の苦もなく、体にも大きな疲れはなかった。ただ何となく「デジタル化の極み」までいってしまったA6についてモヤモヤと考えていた。
それがスッキリ晴れたのは、富山からの帰り道。別の取材が終わって、夕方から富山を出て東京まで一直線に帰ることになったとき「さすがにここから420km運転はきついな」と思い、途中で編集者の方に運転を代わってもらう気でいた。ところが、道中ずーっと同乗者らと話し込んだりしているうちに、あっという間に首都高が目の前まで迫っていたのだ。そのとき「なるほど、A6は自分で運転するクルマと自動運転のクルマの狭間にいるのだ」と理解した。
アウディでは、A8からレベル3の自動運転を可能にするシステムを搭載できるようになっている。完全な自動運転が実現化すれば、クルマは運転や移動するものだけではなく、車内で過ごす空間も変わってくるはずだ。たとえば車内で仕事をしたり、本を読んだり、ゆったりとくつろいで話をしたり…。
A6はきっとその未来を見ながら作られたクルマだ。だからこそ、運転の楽しさどうこうよりも、運転自体がとても安楽で、それ以外の時間が充実してくる。こういったクルマもこれから増えるのだろうし、必要なのだと思う。
クルマの未来は二極化?
とはいえ、クルマ好きとしてはそれ一辺倒のクルマになっては寂しい。しかし、従来の役割をRSモデルなどが担ってくれるなら話は別だ。これからは安全に便利に遠くへと行けるクルマと、自分で乗って楽しいクルマがより二極化していくのかもしれない。そうすれば、それぞれ振り切った開発ができるようになって、また新しいクルマの未来が見えてくるような気がする。
今回のA6アバントはその狭間で揺れているようにも思ったが、実は未来への大きな一歩を踏み出したモデルなのかもしれない。
[筆者:伊藤 梓・撮影:茂呂 幸正・アウディジャパン・MOTA編集部]
Audi A6 Avant 55 TFSI quattro[4WD] 主要スペック
Audi A6 Avant 55 TFSI quattro S line[4WD] 主要スペック | |
---|---|
車種名 | Audi A6 Avant S line |
グレード | 55 TFSI quattro |
価格[消費税8%込] | 10,410,000円 |
全長×全幅×全高 | 4,950mm×1,885mm×1,465mm |
ホイールベース | 2,925mm |
駆動方式 | quattro(4WD) |
車両重量 | 1,930kg |
乗車定員 | 5名 |
エンジン種類 | V型6気筒 DOHC |
総排気量 | 2,994cc |
エンジン最高出力 | 250kW(340PS)/5,200~6,400rpm |
エンジン最大トルク | 500Nm(51.0kgf-m)/1,370~4,500rpm |
トランスミッション | 7速Sトロニックデュアルクラッチトランスミッション |
使用燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
燃料消費率(JC08モード燃費) | 12.3km/L |
サスペンション形式 | (前)ダブルウィッシュボーン式/(後)ダブルウィッシュボーン式 |
タイヤサイズ | (前・後)245/45R19 |
※試乗・撮影車にはオプションで「オプションカラー」(90,000円)/「パワーアシストパッケージ」(160,000円)/「リアコンフォートパッケージ」(260,000円)/「Bang & olufsen 3Dサウンドシステム」(180,000円)/「アシスタンスパッケージ」(140,000円)/「ドライビングパッケージ」(380,000円)等のオプションを装着
この記事にコメントする