ボクサーサウンドって何?かつてのスバル車は、なんでドコドコ音がするの?(1/2)

  • 筆者: マリオ 高野
  • カメラマン:オートックワン編集部・株式会社SUBARU

ボクサーエンジンが奏でるボクサーサウンドとは?

水平対向エンジンは、ピストンの動きがボクサーのパンチの動きに似ているとされるから「ボクサーエンジン」と呼ばれ、さらに独特の音色を奏でる排気音は「ボクサーサウンド」と呼ばれています。

クルマ用の水平対向エンジンは、左右に分かれたシリンダーからの排気をエキゾーストマニホールドで1本にまとめるのですが(部品点数を減らすため。そうしないと4気筒ではマフラーが4つも必要になる)、各シリンダーからのエキゾーストマニホールドの長さが異なると、集合部分で排気ガスがバラバラにぶつかり合う排気干渉と呼ばれる現象が起こり、排気音が「ドロドロ」とか「ドコドコ」、あるいは「ドルルルル」などといった独特の音色となります。

文字化する音は人によって異なりますが、ここでは便宜上「ドコドコ音」で統一させてください。

>>ボクサーサウンド全盛期のインプレッサやレガシィの画像を見る

ボクサーサウンドってどんな音?動画でチェック

V型エンジン搭載のアメ車もドロドロ音がする

水平対向エンジン以外では、V型エンジンも左右に分かれたシリンダーからの排気を集合させるので、やはりドコドコ系の音色になりやすい構造と言えます。しかし、ドコドコ系の排気音は、クルマ好き以外の人には騒音でしかなく、徹底的に排除される方向に技術が磨かれたので、ここ20年ほどの間に生産されたV6エンジンではほとんど聞こえなくなりました。V6エンジンで最後まで個性的な音色を奏でていたのはアルファロメオでしょうか(147GTAあたりが最後世代)。

V8エンジンでも、高級サルーンなどではやはりドコドコ音を徹底的に排除していますが、アメリカのスポーツカーなど、一部のクルマでは今でも意図的にドコドコ系のサウンド(アメ車のV8の場合はドロドロ音と表現される)を聴かせるように作られています。

水平対向エンジンの場合は、V型と比べると平べったくて幅が広い構造をしており、排気がエンジンの左右の端っこから配置される関係でエキゾーストマニホールドが長く、かつ不等長になりやすいため、V型よりもさらに個性的な排気音となる場合が多いのです。

スバルは過去60年間にわたり主力販売車種に水平対向エンジンを搭載し続けてきたので、「SUBARU=ボクサーサウンド」というイメージが定着。スバルもこれをアイデンティティとして大事にしており、「BOXER SOUND」という雑誌を出していたほどでした。

不等長エキゾーストがボクサーサウンドの原因

そんなスバルの水平対向エンジンも、最初からドコドコ音が出ていたわけではありません。初の量産乗用車として世に出したスバル1000は妥協を排して性能を追求した設計により、コストがかかる等長エキゾーストマニホールドを採用していました。エンジン本体の作りも入魂設計だったので、60年経った今も完調な個体なら掛け値なしに「モーターのよう」と形容できるほどの緻密な回転フィールが得られます。

排気音も濁りのない澄んだ音色にて、スバル1000の現役時代を知る古参のスバルファン諸兄に「スバル1000こそが真のボクサーサウンド」と語られると、ヴィヴィオからスバルを知った新参ニワカファンの筆者などは、ぐうの音も出ません。

そもそも、スバルのボクサーサウンドは世代によってかなりの違いがあります。等長エキゾーストマニホールドはコストがかさむという難点がある上、スバル1000の後継モデル(ビッグマイナーチェンジ)である1300Gでは排気量の拡大や排ガス規制への対応、さらには4WD化によるフロアのセンタートンネルの大型化などもあって、早くもエキゾーストマニホールドは不等長となり、ドコドコ音が出るようになりました。

もちろん、排気音の質を左右する要素はエキゾーストマニホールドが等長か不等長かだけではありません。エキゾーストマニホールドの集合部分の形状や材質、太さ、サイレンサー容量などの様々な要素から、その時代、世代ごとに音色は変わってきました。

1990年代のレガシィやインプレッサは大音量のドコドコ音が轟く

歴代ボクサーサウンドの中でも、もっとも多くの人に強く記憶されているのは、1990年代のレガシィ(初代~3代目)やインプレッサ(初代~2代目前期型)が奏でていた音色でしょう。レオーネ時代もドコドコ音を奏でていましたが、レガシィ&インプレッサの世代になってスバル車の走りは激変。若者を中心にユーザー層が一気に拡大したので、この時代のドコドコ音がスバル車の原体験として刻まれている人は多いのです。

特にこの時代にバカ売れしたターボエンジン搭載車は不等長のエキゾーストマニホールドで大パワーを発揮させていたので、歴代スバル車の中でもっとも大音量のドコドコ音が轟いていました。

WRCでも市販車からの改造範囲が狭かったグループA時代はドコドコ音を炸裂させながらワールドチャンピオンを獲得したこともあり、ますます「スバルのボクサーサウンド=ドコドコ音=最強」の図式が浸透します。そのため、90年代前半のWRC参戦期にスバルが好きになった人は、この時代の音色が今も忘れられないという人が多いのです。筆者もその一人で、新車で購入してから25年経った初代インプレッサWRXが今も手放せない理由のひとつは、「あの当時のドコドコ音を今も楽しみたい」という願望がなくならないからです。

しかし、もちろん当時のスバルファンのすべてがドコドコ音を歓迎していたわけではありませんし、スバル自身も不等長エキゾーストマニホールドからの脱却をはかっていました。

>>等長エキゾースト採用でスバルの音が普通になってしまった!(次のページ)

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マリオ 高野
筆者マリオ 高野

1973年大阪生まれ。免許取得後にクルマの楽しさに目覚め、ヴィヴィオとインプレッサWRXを立て続けに新車で購入。弱冠ハタチでクルマローン地獄に陥るも、クルマへの愛情や関心は深まるばかりとなり、ホンダの新車セールスマンや輸入車ディーラーでの車両回送員、ダイハツ期間工(アンダーボディ組立て)などを経験。2001年に自動車雑誌の編集部員を目指し上京。新車情報誌やアメ車雑誌の編集部員を経てフリーライターとなる。編集プロダクション「フォッケウルフ」での階級は「二等兵」。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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