独プレミアムDセグメントセダン 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:茂呂幸正
待望の7速AT「7Gトロニック」が全車に搭載
ボディサイズは、4,595mm×1,770mm×1,445mm(※AMGスポーツパッケージ装着車は1,430mm)と、今回の3台では唯一、全幅が1.8mを下回る。
サイズこそ小さいながらも、メルセデスのサルーンとして王道を行くフォルムを持っており、それが同モデルの高い人気につながっているのは間違いない。
アバンギャルド系では、メルセデスのスポーティモデルの象徴であるスリーポインテッドスターがボンネット上ではなくフロントグリル中央に大きく配置され、さらに「AMGスポーツパッケージ」を装着すると、AMGデザインのホイールが与えられ、バンパー等もボリューム感のある形状となる。
2011年5月のマイナーチェンジで、全体的にシャープでスポーティなデザインとされたほか、LEDを駆使した各種ランプが採用された。
加えて、これまで上級モデルのみ採用されていた7速ATが、この機に全車に採用されたのも朗報だ。
エンジンスペックに変更はなく、C200系の1.8リッター直4ターボは最高出力が135kW[184ps]/5250rpmで、270Nm[27.5kgm]という最大トルクを1,800~4,600rpmという幅広い回転域で発生する。
ギア比が細分化されたことで体感的な動力性能面でも有利となり、さらに10・15モード燃費についても従来の11.6km/Lから12.8km/Lに向上した。
また、AMGパッケージには、フロントブレーキがドリルドディスクとなるほか、ダイナミックハンドリングパッケージが与えられるのだが、この仕上がりが素晴らしい。
操縦安定性と乗り心地の両立ぶりは見事というほかなく、もともとよくできていたところ、さらに今回の3モデルの中でも一歩先を行った印象である。
直噴リーンバーンの新エンジン
ボディサイズは4,540mm×1,800mm×1,435mmと、大差ではないものの3台の中では最も短い全長となる。
日本の立体駐車場への対応のため他国向けと異なる薄いドアハンドルを設定し、1,800mmちょうどの全幅を実現している。
エクステリアは、キドニーグリルやリング状のポジションライトなど特徴的なアイコンを持ち、起伏に富んだ面構成による美しい造形に加え、2008年11月のマイナーチェンジでリフレッシュされたこともあり、登場から時間が経過しているものの古さを感じさせない。
ハイラインパッケージ(35万円)を選ぶと、クロームライン・エクステリアや後述するインテリアの上級装備が与えられる。
2010年5月の一部改良で3シリーズ全車のエンジンが変更され、320iに搭載される2リッター直4の自然吸気エンジンは直噴化とともに希薄燃焼テクノロジー(リーン・バーン)を採用。
最高出力125kW[170ps]/6700rpm、最大トルク210Nm[21.4kgm]/4250rpmへとスペック向上をはたすとともに、10・15モード燃費は15.2km/Lに達している。
実際、過給機の付くほかの2モデルに比べても、動力性能面で引け目を感じることはなく、4気筒ながら振動感は小さく、むしろ軽快な吹け上がりが心地よく好感が持てる。
なお、6速ATのほかに貴重なMTを選ぶことも可能で、そちらにはアイドリングストップ機構も備わる。
走りは、前後50:50の重量配分へのこだわりもあってか、素直なハンドリングが心地良い。アクティブ・ステアリングは320iには設定がなく、切り始めの操舵力がやや重めだが、慣れればそれほど気になることはない。
乗り心地は、標準装備のランフラットタイヤによるコツコツ感は多少あるものの、上手く履きこなしており、不快な固さを感じることもあまりない。
エントリーモデルのエンジンも2リッターに
今回の中でもっとも大きい、4,705mm×1,825mm×1,440mm(※Sライン装着車は1,420mm)というボディサイズ。
フロントアクスルの後方にエンジンを縦置きするレイアウトを採用したことで、オーバーハングが短めの、FFらしからぬバランスのよいルックスとなっている。
ホイールベースは上記2モデルに対して50mm長い。
全体的に丸みを帯びたフォルムが上記2モデルとの違いながら、デザインテイストは標準モデルにおいてもスポーティテイストを強調したものとなっている。
シングルフレームグリルや、アウディのブランドイメージ向上に一役買ったといえる、いち早く採用したLEDによる先進的な光の演出も特徴的だ。
なお、撮影車にはアウディエクスクルーシブの7ツインスポークアルミホイール+255/35R19タイヤ(価格30万円)が装着されている。
2011年4月の改良で、A4のFFのエントリーモデルに搭載していた直4直噴ターボエンジンの排気量を、1.8リッターから2.0リッターに拡大。
同じエンジンを積むクワトロモデルよりも30ps、30Nm程度のデチューンではあるが、従来のFFモデルに比べると、最高出力が118kW[160ps]/6200rpmから132kW[180ps]/4000~6000rpm、最大トルクも250Nm[25.5kgm]/4500rpmから320Nm[32.6kgm]/1500~3900rpmへと大幅に向上した。
実際、体感する力強さでは上記2モデルをだいぶ上回る。組み合わされるトランスミッションは、従来どおり「マルチトロニック」と呼ぶCVTで、10・15モード燃費は12.6km/Lとなる。
従来は速度域で変わりすぎる感のあった電動パワステのフィーリングも自然になり、ハンドリングも相変わらずFFとは思えないほどシャープなステアリングレスポンスを持っている。
デザイン・スペックの総評
ドイツの3大プレミアムブランドのエントリーセダンだが、かつては同セグメントのセダンは「コンパクトセダン」という認識だったが、今やコンパクトという雰囲気ではなくなり、れっきとした主力モデルに成長した。実際、世界的な販売面でもボリュームゾーンとなっている。そんな中で、パワートレインについてはダウンサイジング指向がいっそう強まっている最中であり、各社のアプローチの違いも興味深いところである。ちなみに、車検証記載の車両重量および前後軸重は、C200が1520kg(820kg/700kg)、320iが1520kg(760kg/760kg)、A4が1560kg(900kg/660kg)となっており、320iの好数値が光る。
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