スズキ 新型ジムニー vs スズキ ハスラー どっちが買い!?徹底比較

あなたは”オフロード派”と”シティ派”?スズキの人気SUVを比較

人気の高いSUVは、オフロード派とシティ派に分けられる。オフロード派は悪路の走破力を優先して開発され、耐久性の高いプラットフォームと足まわりを備える。後輪駆動をベースにした4WDシステムを搭載して、駆動力を高める副変速機を採用することが多い。

シティ派は、前輪駆動をベースにした乗用車タイプのプラットフォームを備え、居住性、乗降性、走行安定性、乗り心地などが優れている。悪路の走破力はオフロード派ほど高くないが、4WDを備えれば雪道程度なら十分に走れる。そのために今ではシティ派が増えて、SUVの売れ行きも堅調だ。

そしてスズキは、オフロード派とシティ派のSUVを、軽自動車のサイズで両方ともにそろえる貴重なメーカーとなっている。オフロード派には、2018年7月に20年ぶりのフルモデルチェンジを受けた新型ジムニーがある。シティ派は2014年1月に発売された(発表は2013年12月)ハスラーだ。後者のプラットフォームは先代ワゴンRと共通で、シートの配列、シートアレンジなども踏襲されている。

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ジムニー vs ハスラー|ボディスタイル/サイズ/視界/取りまわし性比較

両車ともに丸形のヘッドランプを装着するが、外観のデザインはまったく違う。ジムニーは角張ったオフロードSUVの典型で、エンジンを縦向きに搭載した後輪駆動がベースだからボンネットが少し長い。後席側のドアを備えない3ドアボディだ。ハスラーは逆にボンネットが短く、室内空間を長く取った5ドアになる。

ボディサイズは、両車ともに軽自動車だから、全長は3395mm、全幅は1475mmで等しい。全高はジムニーが1725mmと高く、ハスラーは1665mmだから60mm低い。

ホイールベース(前輪と後輪の間隔)はジムニーが2250mm、ハスラーは2425mmだから175mm上まわる。外観の見栄えも各部の寸法も、かなり異なる。

悪路の走破力に影響を与える最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は、ジムニーがオフロードSUVらしく205mmを確保して、ハスラーは175mm(4WD)だ。

視界はジムニー、ハスラーともに優れ、両車は同等と判断して良い。取りまわし性では、ボンネットが良く見えるのはジムニーのメリットだ。ハスラーも空間効率を重視した軽自動車では珍しく、ボンネットの手前が少しだけ視野に入る。

最小回転半径はジムニーが4.8m、ハスラーは4.6mに収まって小回り性能が優れる。それでも両車を比較して運転がしやすいのは、ボンネットが良く見えるジムニーだ。

勝者:ジムニー

ジムニー vs ハスラー|内装のデザイン/質感/操作性/視認性比較

両車ともにメーターが大きめで、エアコンのスイッチなども、インパネの比較的高い位置に装着した。視認性と操作性は良好だ。遊び心もあり、ハスラーのインパネは滑らかな樹脂で仕上げられ、ステッカーなどを貼ることができる。

一方、ジムニーのインパネは光沢を抑え、キズが付いても目立たない。無骨な雰囲気が演出され、ほかの車種とは違うジムニーの個性を感じる。

勝者:ジムニー

ジムニー vs ハスラー|前後席の居住性比較

前席は両車ともに頭上の空間が広く、シートのサイズにも余裕を持たせた。その上で比べるとジムニーが快適だ。ホールド性が優れ、特に体重の加わる背もたれの下側と座面の後方をしっかりと造り込んだ。長距離も快適に移動できる。

これに比べるとハスラーは、シートの生地が少し滑りやすい。しかも生地の伸縮性もいま一歩で、ジムニーに比べるとホールド性が見劣りする。前席はジムニーの勝ちだ。

しかし、後席はハスラーの圧勝となる。ハスラーは床と座面の間隔を十分に確保して着座姿勢が優れ、シートのサイズにも余裕を持たせた。ジムニーの後席は、床と座面の間隔が不足しているから座った時に膝が大きく持ち上がる。シートのサイズもハスラーに比べると小さい。

そして、身長170cmの大人が乗車した時の後席の足元空間は、ハスラーが後席のスライド位置を後端に寄せた状態で、握りコブシ3つ分を確保した。トヨタ クラウンでも握りコブシ2つ半だから、ハスラーの後席には、前後方向についてはタップリした足元空間が確保される。これに比べるとジムニーの後席は、握りコブシの半分程度だ。膝の持ち上がる着座姿勢も含めて窮屈に感じる。

勝者:ハスラー

ジムニー vs ハスラー|乗降性比較

前席は両車ともに床の位置が適度だ。ジムニーは本格的なオフロードSUVだが、床をあまり高めていない。前席の着座位置もちょうど良く、乗降時における腰の移動量を抑えた。

後席はハスラーが圧倒的に勝る。ジムニーは3ドアボディだから、後席に乗るには、前席の背もたれを前方へ倒してスライド位置も前端まで寄せねばならない。ジムニーの実用性はクーペと同程度で、後席の乗降性や居住性は悪い。ハスラーなら後席もスムーズに乗り降りできる。

勝者:ハスラー

ジムニー vs ハスラー|荷室比較

ハスラーはジムニーに比べるとボンネットが短く、前述のように後席の容量が大きい。これを畳むと広い荷室に変更できる。

ハスラーの後席は背もたれを前側に倒すと座面も連動して下がり、フラットでさらに広い空間になる。しかも座面の昇降機能、前後のスライド機能は、両方ともに左右独立式だ。後席にチャイルドシートを装着した時などは、前寄りにスライドさせると、車内後部の荷室が広がってベビーカーなどを積みやすい。

ハスラーに比べると、ジムニーの荷室は圧倒的に狭い。後席を使った状態では、ほとんど荷物を積めない。後席の背もたれを前方に倒しても、荷室容量はクーペと同程度だ。スライド機能などは装着されない。

そしてリヤゲートを開いた時の路上から荷室床面までの高さも、ハスラーの方が低く抑えられ、荷物を大きく持ち上げずに済む。

荷室の素材は、両車ともに汚れを落としやすく、使い勝手が優れている。

勝者:ハスラー

ジムニー vs ハスラー|動力性能&エンジンフィーリング比較

ジムニーは、耐久性の高いラダーフレームと悪路に対応したサスペンション、副変速機を内蔵した4WDなどを備えるためにボディが重い。そこで全車にターボを搭載した。ハスラーはターボを装着しない自然吸気と、ターボの2種類を用意した。

条件を合わせてターボ同士で動力性能を比べると、ハスラーが力強い。車両重量はジムニーXCが1030kg、ハスラー4WD・Xターボは870kgで160kgも軽いからだ。エンジンの性格は、両車ともに実用回転域の駆動力を高めており、1リッターのノーマルエンジンを積んでいるような感覚で馴染みやすい。

勝者:ハスラー

ジムニー vs ハスラー|走行安定性比較

ジムニーは新型になって走行安定性を向上させた。先代型に比べると操舵に対する反応の仕方が正確で、峠道などでは旋回軌跡を拡大させにくい。先代型に比べると違和感なく運転できるようになった。

しかし、あくまでもジムニーは、デコボコの激しい悪路を走るためのクルマだ。激しい衝撃に耐える必要もあり、運転感覚の優先順位は下がる。ステアリングの形式も、ハスラーはラック&ピニオン式だが、ジムニーはボール&ナット式だから操舵した時の反応が鈍くなるのは否めない。

従って走行安定性はハスラーが高い。ボディサイズも、ハスラーはジムニーに比べて全高が60mm低く、ホイールベースは175mm長い。ハスラーには走行安定性を確保する上で有利な条件が多い。

勝者:ハスラー

ジムニー vs ハスラー|悪路の走破力比較

ジムニーの圧勝だ。滑りやすく、デコボコの激しい悪路でも、ごく普通に走れてしまう。もちろん限界はあり、無理は禁物だが、日本で遭遇する悪路であれば大半の場所は走破できる。狭い林道でも小回りが利き、日本の悪路で使うには最強のSUVだ。

勝者:ジムニー

ジムニー vs ハスラー|乗り心地比較

足まわりの設定が悪路に対応したジムニーは、乗り心地でも不利になりそうだが、実際に運転すると意外に快適だ。悪路を走破するために、足まわりの伸縮性が優れ、ゆったりした乗車感覚を味わえる。ボディの傾き方は大きめで、好みの分かれる乗り心地だが、軽自動車であることをあまり意識させない。

ハスラーは単純に少し硬めの設定だ。路面の状態が良くない市街地を時速40~50kmで走ると、上下に揺すられる印象がある。タイヤの空気圧も、ジムニーは前輪が160kPa、後輪が180kPaだが、ハスラーは前後輪ともに250kPaと高い。転がり抵抗を抑えることが目的だが、一般的に230kPa以上になると、乗り心地に悪影響が生じやすい。

勝者:ジムニー

ジムニー vs ハスラー|安全&快適装備比較

ジムニーはデュアルセンサーブレーキサポートを幅広いグレードに設定した。単眼カメラと赤外線レーザーを使って、緊急自動ブレーキを作動させる。ハスラーは2個のカメラを使うデュアルカメラブレーキサポートを上級のXとXターボに採用した。両タイプともに歩行者を検知して、機能は互角ともいえるが、エアバッグで差が付いた。ジムニーは前席サイド&カーテンエアバッグを全車に標準装着したが、ハスラーには設定がない。

勝者:ジムニー

ジムニー vs ハスラー|燃費性能とエコカー減税比較

ジムニーの燃費データはWLTCモードだが、4速ATが13.2km/Lで、5速MTは16.2km/Lだ。ハスラーの4WD・Xターボは26.2km/Lになる。約2倍の差が付き、数値上はハスラーの燃料代はジムニーの半額で済む。

ATのメカニズムは、ハスラーが高効率な無段変速ATのCVT、ジムニーは悪路で使いやすく耐久性も優れたトルクコンバーター式の4速になる。ハスラーは先に述べたタイヤの指定空気圧も含めて燃費を重視しており、ジムニーは走破力だから燃費の優先順位は下がる。

勝者:ハスラー

ジムニー vs ハスラー|グレード構成と価格の割安感比較

ジムニーは全車がターボを搭載して、3グレードのみの設定だ。後席のヘッドレストなどを省いたビジネス向けのXG、キーレスプッシュスタートなどを備えた中級のXL、LEDヘッドランプやアルミホイールなどを装着する上級のXCとなる。

一方、ハスラーはベーシックなA、中級のGとGターボ、上級のXとXターボだ。AとGは緊急自動ブレーキを作動できる安全装備が赤外線レーザーのみを使う簡易型になり、歩行者を検知できず作動速度の条件も時速30kmと低い。

そうなると機能の充実した一般的な推奨グレードは、ジムニーがXC(184万1400円/4速AT)、ハスラーは4WD・Xターボ(167万4000円)になる。

普通に街中で使うなら、ハスラー4WD・Xターボが割安だ。車内が広く、シートアレンジなども充実して価格は16万7400円安い。

しかし、悪路を走るユーザーなら、ジムニーXCが買い得だ。ラダーフレームを備えたシャシー、4WDシステムなどはすべてジムニーとジムニーシエラのために開発され、高コストなクルマ造りをしている。それだけに走破力は抜群に高い。

勝者:引き分け

ジムニー vs ハスラー|総合評価

ジムニーは新型になって、運転感覚と乗り心地を大幅に洗練させた。市街地を走る使い方でも特に不満はないが、本質は悪路を走るために開発されたオフロードSUVだ。走破力を高めるために、後席と荷室の広さ、燃費性能などを犠牲にしているから、悪路をまったく走らない使い方ではもったいない。せめて雪道程度は走りたい。それでも運転していると楽しい気分にさせてくれる。街中を普通に走るだけでも、ジムニーらしさを満喫できる。

ファミリーからパーソナルまで、一般的な用途にはハスラーが適する。基本的な機能はワゴンRと同じく実用的で、SUVの楽しさを調味料のように上手に使っている。安全装備も充実しており、発売から3年半以上を経過した今でも選ぶ価値が高い。

勝者:ハスラー

[Text:渡辺 陽一郎/Photo:島村 栄二・和田 清志]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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