トヨタの新ブランド"GR"とは?ヴィッツGRや86GR等、G'sとの違いを徹底解説

TOYOTA GAZOO Racing(トヨタガズーレーシング)が市販モデルをもっと”スポーツ”にする!

トヨタ G'sが”GRシリーズ”に改名! 新たに3つのグレードを設定

トヨタは世界販売ナンバーワンを競う大規模メーカー(子会社のダイハツと日野を含む)だ。日本国内のシェアも抜群に高く、2016年には国内の総市場に占めるトヨタ車(レクサスを含む)の割合は32%、小型/普通車に限れば48%に達した。手掛ける車種も多岐にわたる。

このトヨタ車をベースに、チューニングを施したモデルが以前は”G's”(ジーズ)として扱われていた。外観には独自に開発されたエアロパーツを備え、アルミホイールやタイヤも変更される。ボディ剛性の向上、サスペンションの変更なども行われ、コンプリートカーと呼ばれる完成されたチューニングモデルに仕上げた。

このG'sとトップモデルの”GRMN”が、2017年9月19日に刷新されて新しい段階に入った。

トヨタの新しいスポーツブランド”GRシリーズ”とは

従来と同様のコンプリートカーだが、新たにGRシリーズと名付けられた。GRはトヨタのモータースポーツ部門を総称する”TOYOTA GAZOO Racing”(トヨタガズーレーシング)の頭文字に由来。走りに関するチューニングのクラスに応じて、”GRスポーツ”/”GR”/”GRMN”(これは以前から設定されていた)の3種類を設けている。

専用のエアロパーツやアルミホイールは全車に備わり、内装にもスポーツシートが装着されて、装飾類も変更を受ける。LEDビームも採用した(ヴィッツとアクアのGRスポーツを除く)。この点は基本的に全車共通だ。

走りに関係したチューニングのクラス分けは、GRスポーツがベーシックなタイプ、GRは中級クラス、GRMNはスポーツ性が最も高い。このほかノーマル車に装着するGRパーツも用意する。

やや分かりにくいのが、ベーシックなタイプがGRスポーツ、その上に位置するのがGRになること。言葉の響きや感覚的な印象でいうと名称が逆のようにも思える。

>>TOYOTA GAZOO Racingが挑むチューニングカーの新世界「GRシリーズ」を画像でじっくりチェック

▼トヨタ GRブランド発表会の様子

”GRスポーツ”は最も身近なカスタムモデル[3つのGRシリーズ その1]

まずベーシックな「GRスポーツ」は、ユーザーのライフスタイルに応じて選べる拡販型のスポーツモデルになる。

2017年9月19日に発売された車種としては、ヴィッツ、マークX、ハリアー、ヴォクシー&ノア、プリウスPHVがあり、2017年の冬にはプリウスαやアクアも加える予定だ。

ベーシックといってもチューニングの内容は本格的で、ボディの捩れが生じやすいドアやリヤゲートの開口部には、溶接箇所を増やすなどの補強を施す車種もある(プリウスPHV/プリウスα/ヴォクシー&ノアを除く)。

シャシーはアンダーフロアと呼ばれるボディ底面の骨格を中心に、大半の車種がフロアブレースを加えて補強する。ボディの土台に相当する底面部分と、上屋の両方を強化する考え方だ。

これらのうち、ヴィッツとアクアのGRスポーツは型式指定を受けて、いわゆるカタロググレードと同じ扱いになる。持込登録をする手間とコストを省略した。

その代わり前述のフロアブレースは装着されないが、ボディのスポット溶接箇所は増やしている。サスペンションのセッティングはボディ補強に応じて変更されるが、ローダウンは施されない。型式指定を受けることが前提になると、パーツを追加したり最低地上高を変更することは難しい。

一方、GRスポーツでも持込登録となる車種は、全車がローダウンサスペンションを装着する。ブレーキにはカラードキャリパーを採用して、アルミホイールとタイヤもインチアップされる。

GRスポーツのラインナップと価格
車種名グレード名エンジン・排気量駆動方式トランスミッション価格

ヴィッツ

GRスポーツ“GR”

1NZ-FE
1.5L

2WD

5MT

2,303,640円

10速CVT

2,303,640円

GRスポーツ

5MT

2,087,640円

7速CVT

2,087,640円

1NZ-FXE
1.5L

THS 2

2,329,560円

プリウスPHV

S ”GRスポーツ”

2ZR-FXE
1.8L

2WD

THS 2

3,711,960円

Sナビパッケージ ”GRスポーツ”

4,116,960円

ハリアー

ELEGANCE “GRスポーツ”

3ZR-FAE
2.0L

2WD

CVT

3,398,760円

4WD

3,593,160円

8AR-FTS
2.0L ターボ

4WD

6速AT

3,996,000円

マークX

350RDS “GRスポーツ”

2GR-FSE
3.5L

2WD

6速AT

4,428,000円

250S “GRスポーツ”

4GR-FSE
2.5L

3,809,160円

ヴォクシー

ZS “GRスポーツ”

3ZR-FAE
2.0L

2WD

6速AT

3,257,280円

ノア

Si “GRスポーツ”

3ZR-FAE
2.0L

2WD

6速AT

3,257,280円

プリウスα

2017年冬発売予定

未発表

未発表

未発表

未発表

アクア

2017年冬発売予定

未発表

未発表

未発表

未発表

「GR」は駆動系までチューニングの手が入る本格派[3つのGRシリーズ その2]

中級の「GR」は、量産型のスポーツモデルとされる。

2017年9月19日にヴィッツを発売して、2017年の冬には86を加える予定だ。GRはチューニングの水準が高まるので、型式指定を受けた車種はなく、全車が持込登録になる。

GRの特徴は、GRスポーツと違って、ドライブトレーン(駆動系)までチューニングされることだ。

ヴィッツのGRは、現時点ではカタロググレードに用意されない1.5リッターの自然吸気エンジンを搭載する。CVTにはスポーツCVT制御を採用して、10速のシーケンシャルシフトとして使える(CVTは無段変速式のATだから、10速といっても疑似的な有段変速モードだ)。5速MTにはLSD(リミテッドスリップデフ)も備わる。サスペンションのショックアブソーバーはザックス製を装着して、車高は10mmほどローダウンされた。

内装も変更され、GRスポーツには装着されないサイズの小さなスポーツSTGホイールを採用した。

86のGRもザックス製のショックアブソーバーを使い、ローダウンスプリングと組み合わせた。ブレーキは前輪が対向6ポッド、後輪が4ポッドとなり、トルセン式LSDも装着する。

”GR”の車種ラインナップと発売日
車種名グレード名発売日

ヴィッツ

GR

2017年9月

86

GR

2017年12月(予定)

最上級の「GRMN」はトータルチューンの贅沢な限定版[3つのGRシリーズ その3]

そしてGRシリーズの最上級に位置するGRMNは、販売台数を限定したスペシャルティモデルで、ボディとシャシー、ドライブトレーンに加えて、エンジンまでチューニングされる。

以前のGRMNは86、マークX、ヴィッツ、iQに設定されたが、新世代のGRMNは2018年春頃にヴィッツに用意される予定だ。つまりヴィッツは、型式指定を受けたGRスポーツ、ドライブトレーンまでチューニングされたGR、さらに最高峰のGRMNという3段階で選択できる。

ヴィッツGRMNのエンジンは1.8リッター(2ZR-FE型)にスーパーチャージャーを装着。最高出力は212馬力(6800回転)、最大トルクは25.3kg-m(5000回転)を発生させる。

取材当日の試乗車は海外仕様の3ドアボディをベースにしていたから、ボディの補強は施されていなかったが、5ドアボディで市販される時はボディとアンダーフロアに補強を施す。市販車のヴィッツとはまったく異なるスポーツモデルに仕立てられる予定だ。

”GRMN”の車種ラインナップと発売日
車種名グレード名発売日

ヴィッツ

GRMN

2018年春ごろ(予定)

GRシリーズの台頭でトヨタ車全体のレベルアップにも期待!

別の観点で見ると、GRシリーズがトヨタ車全体の商品力を底上げすることも期待できるだろう。GRシリーズで高い効果が認められたボディ補強などは、市販車にフィードバックできるからだ。

開発者によると「以前のG'sがボディの溶接箇所を増やすチューニングを行ったところ、その効果が高いために、ヴィッツやアクアの市販車にも応用した」という。

確かにヴィッツとアクアは、発売時点において乗り心地や操舵感に不満があったが、その後、スポット溶接箇所を増やしたり足まわりの設定を変える改善を数回にわたり行った。これによって乗り心地、操舵感、安定性が大幅に向上している。背景には溶接技術の進化や溶接コストの低減(スポット溶接の箇所が増えるほど製造費用も高まる)もあるだろうが、G'sも影響を与えていたようだ。

クルマにとってボディと足まわりは、走行安定性と乗り心地、いい換えれば安全性に大きな影響を与える。走行安定性はもちろん、乗り心地が悪ければドライバーを疲れさせ、安全性を低下させてしまう。だからボディと足まわりで妥協されては困るが、このバランスを高められればユーザーの受けるメリットは大きい。

また”チューニング”を本来の意味、つまり楽器の調律とか、ラジオの周波数を正確に合わせることと解釈すれば、クルマのチューニングは加速性能や旋回速度を高めることではない。市販車に不可避的に生じるバラツキを解消させ、さまざまな走りの機能の質を高めることだ。GRシリーズのコンセプトも、本来のチューニングに置かれている。将来的にその内容が市販車にフィードバックされるなら、エアロパーツを装着したスポーティなクルマに興味のないユーザーにとっても、GRシリーズは価値のあるプロジェクトとなるだろう。

[レポート:渡辺陽一郎/Photo:茂呂幸正・オートックワン編集部・TOYOTA]

トヨタGRシリーズの車両概要・価格・発売日

GRシリーズの車種別の主な概要は以下のとおりだ。外装については全車がエアロパーツを装着するなどの変更を受けている。内装もスポーツシートの装着を含めて、スポーティにアレンジされている。

>>トヨタの新しい純正チューニングカー「GRシリーズ」を画像ギャラリーで詳細にチェックしてみる

ヴィッツ

・ヴィッツ GRスポーツ(2017年9月発売)

1.5リッターモデルと1.5リッター+THS IIのハイブリッドモデルの2種類を設定。ボディの溶接箇所を増やして、ローダウンされていないチューンドサスペンションを装着する。型式指定を受けている。

(2,087,640円~2,329,560円)

・ヴィッツ GR(2017年9月発売)

1.5リッターエンジンを搭載して、ボディのスポット溶接箇所を増やし、ザックス製ローダウンサスペンションを装着する。5速MTモデルのほか、CVTモデルはスポーツCVT制御(10速のステップ変速を行うシーケンシャルシフト)を持ち、LSDなどを備える。

(2,303,640円)

・ヴィッツ GRMN(2018年春頃に発売予定)

1.8リッターのスーパーチャージャーを備えたエンジンを搭載。足まわりなども大幅にチューニングされる。

(価格未定)

アクア

・アクア GRスポーツ(型式指定/2017年冬頃発売予定)

ボディのスポット溶接箇所を増やして、ローダウンされていないチューンドサスペンションを装着する。型式指定を受けている。

(価格未定)

・アクア GRスポーツ(持込登録/2017年冬頃発売予定)

ボディのスポット溶接箇所を増やして、アンダーフロアに補強のブレースを加えた。ローダウンサスペンションも装着する。

(価格未定)

プリウスPHV

・プリウスPHV GRスポーツ(2017年9月発売)

ローダウンサスペンションを装着。アンダーフロアに補強のブレースを加えたが、スポット溶接箇所は増やしていない。

(3,711,960円~4,116,960円)

プリウスα

・プリウスα GRスポーツ(2017年冬頃発売予定)

ローダウンサスペンションを装着。アンダーフロアに補強のブレースを加えたが、スポット溶接箇所は増やしていない。

(価格未定)

ヴォクシー&ノア

・ヴォクシー ZS/ノア Si GRスポーツ(2017年9月発売)

ローダウンサスペンションを装着。アンダーフロアに補強のブレースを加えたが、スポット溶接箇所は増やしていない。2リッターFFモデルのみ設定。

(3,257,280円)

ハリアー

・ハリアー ELEGANCE GRスポーツ(2017年9月発売)

ボディのスポット溶接箇所を増やして、アンダーフロアに補強のブレースを加えた。ローダウンサスペンションも装着する。2.0リッターターボ(4WD)と2.0リッター(FF/4WD)を設定。

(3,398,760円~3,996,000円)

マークX

・マークX GRスポーツ(2017年9月発売)

ボディのスポット溶接箇所を増やして、アンダーフロアに補強のブレースを加えた。ローダウンサスペンションも装着する。350RDS(3.5リッター)と250S(2.5リッター)の2タイプを設定。

(3,809,160円~4,428,000円)

86

・86 GR(2017年冬頃発売)

ボディのリヤサスペンションのメンバーにブレースを装着。ザックス製のショックアブソーバーとローダウンスプリングを組み合わせる。ブレーキは前輪が対向6ポッド、後輪が4ポッドとなり、トルセン式LSDも装着する。なお86にGRスポーツは設定されていない。

(価格未定)

トヨタ/ヴィッツ
トヨタ ヴィッツカタログを見る
新車価格:
120.3万円236.2万円
中古価格:
15万円384.8万円
トヨタ/86
トヨタ 86カタログを見る
新車価格:
267.2万円506万円
中古価格:
79.2万円879万円
トヨタ/ハリアー
トヨタ ハリアーカタログを見る
新車価格:
312.8万円620万円
中古価格:
57.8万円702.1万円

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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