新型V60のデザイナーが語る、新生ボルボデザイン躍進の鍵とは

  • 筆者: 内田 俊一
  • カメラマン:オートックワン編集部/島村栄二/茂呂幸正/ボルボ・カー・ジャパン

美しくも温かみのあるボルボデザインの真髄を探る

ボルボというメーカー名を聞いてステーションワゴンを思い浮かべる方も多いだろう。その主力となるボルボ V60がフルモデルチェンジし、2018年9月より日本での導入が開始された。

発表に際し、現デザイン部門シニアディレクターで、当時、エクステリアを担当したT.ジョン・メイヤー氏が来日。一部報道陣に対しセミナーが行われた。その詳細をレポートしよう。

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クルマの絵、美術、そして数学も好きだった

アメリカ出身のT.ジョン・メイヤー氏は、カーネギーメロン大学・アートセンターカレッジオブデザインを卒業後、2006年にフォードに入社。

デトロイトにほど近いディアボーンのアドバンスドデザインやプロダクションデザイン部署でデザイナーとしての経験を積み、2011年のフォードフュージョン・モンデオのエクステリアデザインを担当した後、2011年ボルボ・カーズに入社し、2014年よりエクステリアデザイン部門のマネージャーを務める。

近年のボルボのデザインを象徴したコンセプトカーのうちの2台、コンセプトクーペとコンセプトエステートのエクステリアデザインを担当。その後、新型V60、S60、V60クロスカントリー、ポールスター1のリードデザイナーを務めたのち、2017年よりカリフォルニアにあるボルボデザイン・コンセプトセンターでデザイン部門のシニアディレクターを務め、現在に至っている。

メイヤー氏は子供のころからクルマの絵を描くのが大好きで、同時に美術も大好きだったという。当時は建築家になるのかなと思っていたそうだ。しかし後にインダストリアルデザインに巡り会い、その学校に入学。プロダクトデザインやインダストリアルデザインの勉強をした。

その時に、「子供のころ、クルマの絵と美術以外に、実は数学も得意でした。その全部を組み合わせることができる、クルマのデザインをしたいと強く思ったのです」と楽しそうに語る。なお、当時好きなクルマはポルシェ911だったそう。その塊感やシンプルなシルエットに魅力を感じ、また、アイコニックさも重要だと述べていた。

国際的視野を持ちデザインする

さて、ボルボのデザインセンターはグローバルで3つの拠点を持っている。まずは本社のあるスウェーデンのヨーデポリ、次にメイヤー氏が属するアメリカのカリフォルニア、そして中国の上海だ。

本社の“デザイン・デパートメント”には総勢270から300名が働いている。そこにはエンジニアリングやモデラーも含まれており、“純然たる”エクステリア、インテリア、カラーデザイナーなど直接デザインに携わるのは60から70名ほどと、決して多くは無い。

また、ここではおよそ26カ国もの国々の人(そこに残念ながら日本人はいない)が働いており、「国際的な視野からどのようにデザインを取り組んでいくかを、多岐に渡った視点で生かされているのです」とメイヤー氏は説明した。

プロポーションが最も重要

2013年にデビューしたコンセプトクーペは、スカンジナビアにおける北欧の洗練された美をこのクルマのデザインに持ち込むことがそのコンセプトだ。その後、エステート、XCクーペという3つのモデルが揃った。その位置づけは、コンセプトクーペはセダン、XCクーペはクロスオーバー、そしてエステートはワゴンとなる。V60のデザインはこのコンセプトエステートからスタートした。

メイヤー氏は、「どのようなモデルデザインであっても重要なのはプロポーションです。これはスプーンやフォーク、椅子、そしてクルマに至るまでデザインにまつわるものすべてにおいて共通しています」という。

その視点で旧V60を見ると、典型的な前輪駆動のプロポーションだ。具体的には長いフロントオーバーハングとダッシュtoアクスル(フロントホイールの中心点からフロントドアの前端開口部までの距離)の短さ、そしてキャビンが前寄りになっていることだ。またリアのオーバーハングが短いというのもその特徴である。

左)先代ボルボ V60/右)新型V60

新型V60は美しくバランスの取れたプロポーションを実現

一方、SPAを手に入れた新型V60は、そのプロポーションが大きく改善。前輪はより前に出てダッシュtoアクスルは長くとられた。これにより、「プレミアムモデルが持つプロポーションを表現しているのです」とメイヤー氏。

またフロントオーバーハングが短く、ホイールベースは長く(先代比約100mm)なったことから、リアシートは少し後ろ寄りにレイアウト。リアオーバーハングは長くなっている。この結果、リアのレッグスペースを大きく確保できている。その結果、「バランスのとれた美しいフォルムが浮かび上がってくるでしょう」とその完成度に自信を見せる。

ここで面白い演出があった。カラーやホイールの大きさを揃えた新旧V60を写真で比較するのだ。そうすることでどれだけプロポーションが変わったのかが明確にわかる。メイヤー氏は、「旧型は少し前のめりなプロポーションであることに気づくでしょう。それに対して新型は車高が低く、少し重心が後ろ寄りで、リラックスできるようなフォルムに代わっているのです」と説明した。

光と影を取り入れて

「サイトデザインを形作るにあたっては2つの線が重要な意味合いを持っています」とメイヤー氏。これはすべての60シリーズ、S、V、XCに共通する重要なテーマとなっている。そのラインはヘッドライトからBピラーまでのもの。そしてリアホイールから始まる筋肉の盛り上がりのように描かれているラインだ。

この“筋肉の盛り上がり”をリアクォーターから見ると、「男性的なこのクルマの魅力が感じられるでしょう。そこには光と影の陰影により水溜りのような大きな楕円が描かれ、その美しさが強調されています。実際にクルマのボディは光を反射しますので、その反射したときの美しさまでこだわってデザインしているのです。これは私が特に大事にしている、またこだわったエクステリアデザインなのです」とした。この陰影に大きく影響を及ぼしているのがリアのキャラクターラインだ。

左)新型V60/右)新型V90

サイドビューについてV90と比較をすると、「V90はとても品格のあるデザインで、ほぼ水平な2本の長いキャラクターラインを持たせ、まるでヨットやボートのようなイメージです。一方V60は、上下のラインがテールランプ付近で交差するポイントを持たせています。これはP1800や1800ESにインスピレーションを得たもので、そこからエステートコンセプト、V60へと続いています。V60が目指したものはダイナミックでドライバーオリエンテッドなクルマなのです」と、それぞれの特徴とクルマに与えられた性格を語る。

デザイン実現のため機能部品も見直す

このサイドのデザインを実現するにあたり、もうひとつ、ドアヒンジ部分を見直したことも重要なポイントといえる。

「デザイナーとエンジニアリングチームとの共同で、より低い位置に配することにより、ボディ断面がより抑揚を持たせることができたのです。これによりとてもクリーンなボディサイドが完成しました」と、V60のデザインがデザイナーのみで完成したものでは無いことも語っていた。

またメイヤー氏は、「全体のゴテゴテ感をすべて削ぎ落とし、“素材の美”を生かしたデザインです。シンプルなフォルムながら男性的な力強さを表現しているのです。まさにこのV60がボルボの中で最も鮮鋭度の高いデザインといっていいでしょう」述べる。

それは、「とても細かいところにまで拘って緻密にデザインを行っているからです」とし、その一例として、リアバンパーにあるリフレクターにパーキングアシストシステムのセンサーを埋め込んだことを挙げ、「従来であればバンパーに組み込まれるものですが、できるだけ余分なものは排除して綺麗に見せたいのでこの位置にしました」と説明する。

トールハンマーはアレンジしながら

フロントに目を向けてみよう。近年のボルボのデザインを、新型V60もまとっている。特に目を引くのがTシェイプのヘッドランプで、これは北欧神話に出てくるトールハンマーをイメージしたもの。現在のボルボのアイコンでもある。そのうえで、「将来のボルボにおいてもこれは生かしていきたいと考えていますが、もちろん若干の修正を加えながら進化させていきます」という。

違いを明確に表現した顔つき

V60の場合にはトールハンマーの尾の部分がフロントグリル側に突き出している形状になっていることが特徴だ。「ちょうど人間の目をなぞらえたようなイメージで、目頭を意識したようなものです」とメイヤー氏。これはコンセプトエステートから受け継いだ特徴でもある。

そしてV90の場合はヘッドライトの中にトールハンマーが収まる形になっており、「これによって成熟度のある大人というイメージを表現」。しかし“弟分”のV60は、「若向きで機能性が感じられるような顔が必要ですから、このように変更をしています。もちろん両方ともDNAは同じですが、若干要素が違っているということです」。人間の兄弟と同じということだ。

それはバンパー周りの表現の差にも表れている。V60は、「どちらかというとダイナミックで車高の低いイメージを演出し、ドライバーオリエンテッドなクルマであることを強調しています」。その形状はウイングタイプでアグレッシブさを感じさせ、それはエアインテーク周りも同様だ。これによって路面に対してのスタンスの良さが強調されているのだ。対してV90は水平基調で、安定感と低重心を強調している。

実用性をも加味したリア周り

V90との比較で最も特徴的なのはテールゲートの角度だ。V90がかなり角度を持たせているのに対し、V60は起きている。その理由をメイヤー氏は新型V60の立ち位置にあるという。「新型V60は現行車の後継というだけではなく、V70の買い替えモデルとしてもポジショニングされているのです。そこで、機能的なリアの部分と、なおかつダイナミックな、そして動きのある見た目にしているのです」と述べる。そして、この両立が最も苦労したところだともいう。

「リアのテールゲートの折り返し部分を横から見ると、まさしく弓矢の弓が放たれたようなイメージを与えています。そこでテールゲートの角度とスポーティさという、ともすると相反するようなふたつの考え方を、弓矢が放たれる瞬間の緊張感、テンションで両立させているのです」。

そして、「その周りのリアフェンダーの何気ないカーブや切り込みのすべてで、光がどう反射するかを綿密に計算して実現しています。流れを感じさせ、なおかつ、五感を刺激するようなきれいな流れを表現しました」と、この部分に最も力を入れたことを示唆した。

ドライバーを包み込むようなインテリア

インテリアについても語ってもらおう。インパネ周りはまるで羽のような形でドリフトウッド(海辺などに流れ着いた流木をイメージした木目素材)、あるいは木目パネルを使用。そこにクロームの縁取りが施され、近代的なイメージを付加する。この枠組みにそれぞれのピース、メーター周りやモニター、エアアウトレットを組み込んでいったのだ。

その結果、「それぞれのピースごとに調和が取れた形に仕上がっています。これがV60においてのインテリアで、北欧調のクリーンなデザインを実現しているのです」とした。

エクステリアではプロポーションが非常に重要と前述したが、これはインテリアでも同様だ。V60はドライバーオリエンテッドなクルマなので、「全体が引き締まり、かつ車体が低いというイメージのインテリアを実現したいと考えました。そこで水平基調のインストルメントパネルが、ドライバーを囲むように両側のドアのところまで伸びています」とメイヤー氏。

そのほかドリフトウッドをはじめ様々な加飾を施すことにより、「内装も北欧調の大変ラグジュアリスで高級感あふれるインテリアが実現できました。先代V60に比べると大きなアップグレードとなっているでしょう」と話す。

また、メイヤー氏が特に強調したのは光だった。「北欧は日照時間が短いので、ふんだんに自然光を取り入れるインテリアデザインが重要です。この国の人たちは、太陽が出ると太陽の光を追って出かけるくらいですから、自然光に大きな憧れ感を持っているのです。そこで、なるべく室内にも太陽光を取り入れる仕組みを導入しました。これにより車内にいても快適で開放感のある空間が実現できたのです」とも話した。パノラマルーフはXC90から引き継いだもので、開放感あふれるものとなっている。

ボルボデザインの主役は「人」にあり

最後にメイヤー氏はボルボのデザインについて次の通りにまとめてくれた。

「我々は実際にデザインを完成させていく過程においては、色々な手法を使っています。もちろんスケッチを描いたり図面を書くのもそのひとつです。それはモデリングも同様で、デジタルのモデリングとともに実際に手でモデルを作っていくこともあります。そこで重要なのはデザインの当初から人間味あふれる、手の温もり感溢れるようなデザインタッチを意識してモデルを作ることなのです。これらはエクステリアからインテリアに至るまで人間を主体としたデザインを表現していくことを目指しているからです。そして最終的にはその全てが具現化されていくと思っています」と語った。

この最後の一言が今のボルボのデザインのすべてを表しているといっていい。クールで精緻でありながら、どこか温かみを感じさせるデザイン。それは全てにおいて人を中心に、人のことを考えてデザインされているからに他ならないからだ。

[レポート:内田 俊一/Photo:オートックワン編集部/島村栄二/茂呂幸正/ボルボ・カー・ジャパン]

写真は新型V60デザインの基となった「コンセプトエステート」

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内田 俊一
筆者内田 俊一

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員記事一覧を見る

監修トクダ トオル (MOTA編集長)

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