VW 新型ティグアンTDI 試乗｜高効率なディーゼルでSUVをもっとお得に楽しもう(2/2)

悪路走行からファミリユースまで使える懐の深さ

4WDの4モーションは、多板クラッチの締結力を電子制御して、前後輪に最適な駆動力を配分する。ステアリングの舵角なども検知して駆動力に反映させるから、例えばカーブを曲がっている時にアクセルペダルを踏み込んでも、駆動力の伝達効率が下がりにくい。最低地上高（路面とボディの最も低い部分との間隔）には180mmの余裕があり、4WDの採用で悪路走破力も優れるが、実用回転域の駆動力が高いディーゼルと組み合わせると舗装路でも相乗効果を発揮する。

適度に引き締まり良好な走行安定性と乗り心地

走行安定性は良好だ。全幅が1840mmとワイドで、ホイールベース（前輪と後輪の間隔）も2675mmと長いから、4輪が路面にしっかりと踏ん張る。操舵感は機敏ではないが、高重心のSUVとしては正確に仕上げた。この適度な反応のさせ方は、VWの持ち味で、なおかつSUVの性格にも合う。

乗り心地も同様にVWの性格を反映させた。SUVらしく足まわりの伸縮性が優れ、欧州車の引き締まり感も伴うが、不快には感じない。

混雑した街中での取りまわし性は、全幅が1840mmに達するから良好とはいえないが、水平基調のボディだから四隅の位置は分かりやすい。最小回転半径も5.4mだから、小回り性能もさほど悪くない。

居住性はミドルサイズのSUVとあって快適だ。インパネなどのデザインはオーソドックスで新鮮味に乏しいが、ATレバーやスイッチ類は操作しやすく視認性も優れる。

居住空間にも余裕があり、身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先には握りコブシが2つ半ほど収まる。ファミリーカーにも適する。

燃料価格が安く高効率なディーゼルはガソリン車よりも経済的

JC08モード燃費は17.2km/Lだから、パサートTDIの20.6km/L、ゴルフトゥーランTDIの19.3km/Lには劣るが、動力性能を考えれば効率は高い。

ちなみにVW ティグアンの1.4リッターガソリンターボエンジン搭載車のJC08モード燃費は16.3km/Lだ。ディーゼルには4WDが搭載され、車両重量がガソリンよりも190kg重いこともあり、燃費数値の差が縮まった。

ただしティグアンはプレミアムガソリンを使うので、燃料の単価を比べると、ディーゼルの軽油が1リッター当たり約30円安い。

車両価格は、試乗したティグアンTDI4モーションハイラインが494万円、ガソリンのTSIハイラインは449万円だ。価格は45万円高いが、ディーゼルが搭載する4WDの単価を差し引くと実質20万円に縮まる。この価格差ならディーゼルが買い得だ。

ゴルフトゥーランはディーゼル、ガソリンともに2WDで、価格差はやはり20万円に収まる。パサートはディーゼルの動力性能が高いこともあり、価格差が35万円に拡大する。

そしてクリーンディーゼルターボはエコカー減税が免税だから、VW ティグアンハイラインの場合、ディーゼルの税額はガソリンに比べて約16万円安い。つまり実質20万円の価格差が4万円に縮まる。

そこで軽油価格が1リットル当たり130円、プレミアムガソリンが160円、実用燃費がJC08モードの85％として計算すると、1km当たりの走行単価はディーゼルが8.9円、ガソリンは11.6円だ。1万5000kmほど走れば、4万円の実質価格差を燃料代の節約で取り戻せる。

動力性能についても、最高出力は150馬力で等しいが、最大トルクはガソリンが25.5kg-mだからディーゼルが9.2kg-m勝っている。

この点も踏まえると、ディーゼルはガソリンに比べて高効率で買い得だ。ディーゼルのイメージが悪い昨今だけに、買い得感を強めた。ディーゼルをガソリンと同程度の出費で購入して、燃費の良さを実感できる。前述の運転感覚も含めて、VW ティグアンのTDIは身近なディーゼル車といえるだろう。

[レポート：渡辺 陽一郎／Photo：和田 清志]

VW 新型ティグアン 主要スペック

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新車価格：

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