トヨタ 新型スープラ 遂に発売! 2シーターに割り切られた“ピュアスポーツ”の凄さとは(1/3)

  • 筆者: 山本 シンヤ
  • カメラマン:和田 清志・佐藤 正巳・トヨタ自動車

トヨタが誇るピュアスポーツ“スープラ” 17年の時を経て復活

1978年に登場した初代スープラ(A40/50系)は北米市場の要望により2代目セリカのフロントノーズを延長し直列6気筒エンジンを搭載したモデルで、日本ではセリカXXとして発売された。当初はスポーツカーと言うよりもラグジュアリーなGTカーと言う立ち位置のモデルだった。

1981年に登場した2代目(A60系)は、セリカの上級モデルと言う立ち位置は不変ながらも、初代のコンセプトはソアラに譲りスポーティ路線へと変更。外装にはリトラクタブルヘッドライトを採用、サスペンション開発はロータスに委託するなど、走りの良さを高くアピールしていた。ちなみに海外向け仕様は、幅広タイヤを収めるために日本向けにはないオーバーフェンダーが特長だった。

1986年に登場した3代目(A70系)はセリカから独立したモデルとなり、日本向けも海外向けと同じくスープラと名乗るように。基本コンポーネントはソアラと共用となりスポーツ色は更にアップ。ツーリングカーレース用のホモロゲモデル「ターボA」も台数限定で用意された。最後期モデルでは上級モデルのパワートレインが、同じ直列6気筒ながらM型(3.0Lターボ)から最新のJZ型(2.5Lターボ)に刷新されている。

1993年に登場した4代目(A80系)はトヨタスポーツカーのフラッグシップとして開発。基本性能に徹底してこだわり、ドイツ・ニュルブルクリンクで鍛えられたモデルとしても有名だ。ハイパワーのFRながらもコントロール性の高さは今でも通用するレベルで、現在もトヨタの社内訓練車として活用中である。モータースポーツの世界でも活躍し、全日本GT選手権/スーパーGTでは4度のチャンピオンに輝いている。

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Gazoo Racing初の“オリジナルモデル”となる5代目A90 GRスープラ

その4代目の生産終了から17年、ついに5代目(A90系)が日本で復活を遂げた。GRカンパニーの友山茂樹プレジデントは2017年9月に行なわれた新スポーツカーブランド「GR」の発表会の席でこう語った。

「現時点ではノーマル車に手を入れたスポーツコンバージョンモデルがメインですが、次の段階ではスポーツカー専用プラットフォームを手に入れる。そして最終的には世界に通用するピュアスポーツカーを世に出しラインアップを完成させたい」。

この「スポーツカー専用プラットフォーム」と言うのが5代目スープラ(A90)である。これまでGRカンパニーが手掛けたモデルはノーマルに手を入れたスポーツコンバージョンモデルだったが、このスープラがGRカンパニー初の“オリジナルモデル”となる。

86とは180度異なった“共同開発”、その意味とは

しかし、100%自社開発ではなく、すでに皆さんもご存じの通りBMWと共同開発されたモデルである。スポーツカー開発は他のクルマより手間やお金もかかる割に絶対的な販売台数も限られるので、景気や社会情勢に左右されやすい。これまでのトヨタはそれを理由に撤退と復活を繰り返してきた。

2007年にMR-Sが生産終了してから2012年に86が登場するまでスポーツカー“ゼロ”を経験している。そこから学んだのは、「スポーツカーをビジネスとして成立させ、継続させる事」。その答えが “共同開発”だったのだ。

共同開発と言うとトヨタとスバルのタッグによって生まれた「86」と同じイメージを持つかもしれないが、実際の開発手法は全く異なる。86は言ってみれば、2社の力で1台のモデルを作り上げたが、スープラはこうだ。

BMWの基本コンポーネントを用いてBMWのエンジニアが開発を行なうが、Z4とGRスープラは完全に二つのチームに分かれ、デザインや走りの味付けなどが行なわれた。トヨタ側のチーフエンジニアは86でも陣頭指揮を取った多田哲哉さんだ。

多田さんは「86は『なるべく同じ部品を使ってビジネスケースを満足させよう』と言うのがテーマで共通部品が多かったので、開発する上で色々と揉めることもありました。今回も『そうなるかな?』と思っていましたが、逆にBMW側から『そんな中途半端なクルマをお互いフラストレーションを溜めて作ってどうする? まずはお互いがどのようなクルマを作りたいのか? が最初で、その中で共通のモノを使う』と言われてビックリ。そういう意味ではフラストレーションはなく自由にやらせてもらいました。BMW側からは『Z4はこうだからスープラはこうしなさい』と言う指示は1回もありませんでした」と語る。

新型スープラが積んだ“経験値量”はトヨタ史上No.1

ちなみに正式発表前から世界各国でスープラのテストカーの目撃情報がネット上にアップされていたが、その理由の一つはリアルワールドで鍛えるためだ。ニュルブルクリンクでのテストはもちろん、欧州のカントリーロードやアウトバーン、北欧の氷雪路、北米のハイウェイ、日本のワインディングロードやサーキットなど、ありとあらゆる道を走行し評価を担当した凄腕技能養成部の矢吹久さんは「ここまで走り込んだクルマはトヨタ史上初めて」と自信を見せる。

さらに昨年10月、デビュー前にニュルブルクリンク耐久選手権(VLN)にも参戦。ちなみに過去を振り返ると、レクサスLFAも86も発売前にニュルでの卒業試験を受けている。GRカンパニーの友山茂樹プレジデントは以前、筆者のインタビューで「スープラはニュルで鍛えて最後に『OK』のスタンプを押すのがモリゾウである必要はあると思います」の言葉通り、モリゾウ選手もステアリングを握った。メディアには多くを語らなかったが、走行後の“笑顔”が全てを物語っていたそうだ。

>>17年ぶりに復活を遂げた新型スープラはどんなクルマ!?[次ページへ続く]

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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