トヨタ 新型スープラ(A90型) プロトタイプ試乗|“ヤバイものに乗っちゃったなぁ・・・” 世界を知る男に言わしめた新型の実力を徹底評価

  • 筆者: 嶋田 智之
  • カメラマン:和田 清志・トヨタ自動車・オートックワン編集部

2019年1月デトロイトで世界初公開予定の新型スープラに乗った!

2019年1月14日より開幕する北米国際自動車ショー(デトロイトモーターショー)で、トヨタのスポーツカー「スープラ」が約17年ぶりに復活を遂げる。正式デビュー前から話題沸騰のスーパースポーツに、ひと足早く試乗する機会を得た!

ボディはディテールが判別しづらいカモフラージュ柄、内装もカバーされたまま、詳細スペックも非公開という新型スープラ プロトタイプ。サーキットという限られた条件下だが、アツい試乗レポートを届けてくれたのは、歴史的価値を持つ希少モデルを含め、内外の新旧スーパーカーの豊富な経験を持つモータージャーナリスト、嶋田 智之氏。世界を知る男が体感した日本のスポーツカー、新型スープラのファーストインプレッションを速報でお届けする。

>>アツ過ぎる新型スープラに今から期待大![フォトギャラリー]

思わずクチに出た「ヤバイものに乗っちゃったなぁ」というセリフ

ああ、ヤバイものに乗っちゃったなぁ……というときどき僕のクチから飛び出てくる言葉に、実際のところ深い意味らしい意味はほとんどないようなものだけど、実はほんのちょっとだけ意味に似たものがあるような気もしてる。というのも、お察しのとおり熟考を重ねたうえでの言葉じゃなく、ほとんど脊髄反射的に出てくる言葉。つまり単語の意味合いとか脈絡とか、そういうのを考えてる余地がない。モノ書きとしての圧倒的な語彙力の弱さが証明されるようで恥ずかしいのだが、その言葉は心で感じた何らかのインパクトとストレートに直結してる、というわけなのである。だから、いつもいつもそうポンポンと飛び出てくるものでもない。

が、その日、僕は何回その言葉をクチにしたことか。エクステリアもインテリアも、そして中身も、正確なところはどうなってるか明らかにされてないそのクルマが、予想を超えて素晴らしかったし、望外に楽しかったからなのだ。

いったい何なのかといえば、お待ちかねの人も少なくないだろう、もうじき正式に発表されることになる、5代目トヨタ スープラである。ボディパネルには“A90”の文字が見え隠れするカモ柄のシートが貼られ、インテリアの各部はドライビングに必要なところ以外は全て黒い布で覆われ、メカニカルな部分についてもほんの僅かな情報だけは教えてくれたけどあとは正式発表までお預け、といった状態ではあったが、最終段階に近いプロトタイプに試乗することが許されたのだ。

舞台は千葉・袖ヶ浦フォレストレースウェイのコース。与えられた時間は20分。ブレーキやタイヤを冷やすためのピットインを定期的に繰り返す決まりごとがあったから、走ることのできた周回数は10周少々。そうした場所的にも時間的にも制約のある走行だったから試せたことには限りもあって、主としてスポーツ性にまつわる話題になっちゃうのだけど、感じたことをお伝えしたいと思う。

独自取材でここまで判った、新型スープラ(A90型)のすべて!

本当ならばこの辺りで新型スープラの構成からディテールまでを紹介していくところなのだけど、さっきもお伝えしたとおり、詳細について知らされていることは少ない。エクステリアデザインは先代であるA80型スープラと同じようなロングノーズのシルエットを見せているけれど、全長も全幅も全高も判らないし、インテリアに至ってはダッシュボードの形状もドアの内張りのデザインも見て取ることができない。エンジンに関しては最高出力も最大トルクも、排気量さえもカッチリした数値は明かされていない。

なので、概要を説明してくださったGR開発統括部の福本啓介さん、それからグループ・インタビューに応えてくださった開発責任者の多田哲哉さんの言葉、そしてそうした公式的な場でのコメントだけでは足りないから、立ち話を装い隙を突いて投げてみた質問のお答えなどを通して、新型スープラに関して判ったことを並べてみよう。ここはひとつ、判りやすく箇条書きにて。

共同開発のパートナーはBMW、では新型Z4との違いとは!?

●直列6気筒+フロントエンジン&後輪駆動というのが歴代スープラ共通の要素であり、それは継承する。

●パワーやサーキットのラップ・タイムのような数値を追うのではなく、いかにドライバーがクルマと一体になって走りを楽しめるかを重視して開発してきた。なので、ニュルブルクリンクなどのサーキットも走ったが、むしろヨーロッパ各地やアメリカ、北欧、そしてもちろん日本のワインディングロード、郊外、都市部など一般道でのテストの方が圧倒的に多かった。

●エンジンとトランスミッションは共同開発のパートナーであるBMWと共用するが、開発のチームも現場も全く別々、それぞれ独自に行った。もちろん先にデビューしているZ4とはチューニングもセッティングも全く異なっている。

●あくまでも直6ターボエンジンがメインだが、直4ターボエンジンも開発はしている。排気量に関して明確なコメントはなかったが、Z4同様、直6ターボは3リッター、直4ターボは2リッターであると思われる。

●直6ターボの最高出力は「300psは越えている」が公式コメント。ただ、Z4が340psであることを考えると、おそらくその前後であろうと思われる。1600rpmで最大トルクに達してしばらくその状態が続く。どこからでも鋭い加速が得られる。

●サウンドも直列6気筒エンジンならではの音を活かしながら、いかに官能的に仕上げていくかにこだわった。

●トランスミッションは8速オートマティック。もちろんパドル付き。当初はMTの設定はなし。

●前後の静的重量配分は50:50。

●旋回性能を高めるため、ホイールベースとトレッドの比率に徹底的にこだわった。ロードカーはトレッドを広げるのに限界があるから、2シーターと割り切って、ホイールベースを可能な限り切り詰めた。結果、86よりも100mm短い2470mmへ。

●同様の理由で、重心高にもこだわり、水平対向エンジンの86よりも低くすることに成功した。

●ボディ剛性はアルミとスティールを効率的に使うことで、86の約2.5倍、カーボン・ボディのレクサスLFAよりさらに高いレベルを確保した。

●アダプティブ バリアブル サスペンションで減衰力を絶え間なく効率的に制御する。非装着車もあり。

●アクティブ ディファレンシャルを装備する。これは0~100%まで無段階にロック率を制御、ベクタリングの機能も果たす。ニュートラルなハンドリングとトラクション性能に徹底的にこだわった。ハードウェアはBMWのMで使っているものと同じだが、それを利用してGRが目指す方向に全く独自のセッティングへと変更した。基本、電子制御がクルマの操縦性やハンドリングに作用するのはここだけで、基本はディメンションで勝負。

……とまぁ、こんなところだろうか。ハッキリ知りたいところが今ひとつモヤモヤしていて「思われる」だったり触れられなかったり。何とも気持ちの座りが悪いのだけど、詳細に関して正式発表を待つしかない。

「いかにドライバーがクルマと一体になって走りを楽しめるか」という開発目標を瞬時に体感

危うさがまるでないノーマルモード

ただ、スペックは判らないものの、“いかにドライバーがクルマと一体になって走りを楽しめるかを重視した”という開発の意図は、コースに滑り込んだ最初の周回で理解できた。気持ちよく曲がってくれるのだ。アンダーステアというものがない。なので、コーナーに侵入する速度域がどんどん高くなっていく。それでも、コーナーの入り口でも出口でも、アンダーステアに悩まされるということがない。むしろアンダーステアを出す方が難しい。操作に神経質にならなくても、ニュートラルのままスパーッと行きたい方向に曲がってくれるのだ。適切ではないラインを行って最後にもう少し曲げないと……という走り方をしても、あっさり舵がついてくる。走行モードを“ノーマル”にした状態では、オーバースピード気味に入っていってもアクセルペダルをわざと踏み過ぎてみても、まず何事も起こらない。危うさというものが全く感じられないのだ。

スポーツモード、スポーツプラスモードも「とても楽しくとても気持ちいい」

“スポーツ”モードに切り替えてみても、全体的に鋭さは増した印象こそ受けるものの、基本的には同じベクトルの上にある感じ。無茶を演じてみるとリアタイヤが一瞬だけツツッと来て“今この瞬間にリアタイヤはグリップを失ったからね”と教えてくれるけど、姿勢が乱れるところまではいかず、前へ前へと進んでいく。もちろんアンダーステアは顔を出さない。

もう少しリアタイヤの自由を許してくれる“スポーツプラス”に入れてみると、確かに限界を超えるとリアタイヤはスライドしはじめるが、その動きはキッチリとドライバーに伝わってくるし、横に向かってズルッと崩れていくのではなく滑りながらもやっぱり前へ前へと突き進んでいくような印象で、そういう状況にあってもステアリングは始終しっかりと効き、行きたい方向にドライバーをちゃんと誘ってくれる。自分のドライビングが3段階ぐらい上手くなったような気すらしてくる。

そうなると試してみたくなるのがスタビリティ&トラクション系の電子デバイスOFF。基本ドリフト禁止と言い渡されていたのでドキドキしながら、さらには市販前の貴重なプロトタイプをやっつけちゃったらどうしようともっとドキドキしながら、最後の1周だけOFFにしてみることにした。ONの状態で試したのと同じようにコーナーに入っていくと、そのときより滑る量は増えるものの滑りながらトラクションがしっかり掛かっている印象で、ステアリングはやっぱり正確に行きたい方向へと誘ってくれて、派手なアクションに陥ることもなく、僕のような凡百のドライバーにも難しくなくコントロールさせてくれる懐の深さを垣間見せてくれた。

とにかくあらゆる場面で自分がクルマの一部になったというかクルマが自分の手足になったというか、そんな感覚があって、走るのがとても楽しいし、とても気持ちいい。

ストレート6の滑らかで爽快な加速を満喫!

もちろんその楽しさや気持ちよさには、反応のいいシャシーだけじゃなくて、ストレート6ならではのサウンドを次第に研ぎ澄ませながらシャープに吹け上がっていくエンジンの恩恵もある。どの領域からアクセルペダルを踏み込んでも力強いトルクを湧き出させてくれて、それが希薄になる高回転域に達する前にパワーが直線的に立ち上がってきてるような性格だから、強力なパンチのようなものはないのだが、その加速は素早く滑らかで爽快だ。得られるスピードにも、全く不満はない。

開発者曰く、本当に試してほしいのは「ワインディングの走り」だとか

「ああ、ヤバイものに乗っちゃったなぁ……」なのである。しかも多田さんによれば、「今回はサーキットで試乗していただくしかなかったんですけど、実はワインディングロードの方が楽しいんですよ」なのだとか。

新型スープラは、2019年1月の北米デトロイトショーで正式にお披露目される。日本においては2019年の前半に販売が開始される見込みだ。が、そうなる前に、もうひと磨き、ふた磨きが加えられることになってるという。今のままでもスポーツカーとして充分な魅力を持っていると思うのだが、次にステアリングを握ることになる市販版のスープラでは、いったいどこがどんなふうに光を増しているのか──。楽しみである。

[筆者:嶋田 智之/撮影:和田 清志・トヨタ自動車・オートックワン編集部]

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嶋田 智之
筆者嶋田 智之

本人いわく「ヤミ鍋系」のエンスー自動車雑誌、『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー専門誌『ROSSO』の総編集長を担当した後、フリーランスとして独立。2011年からクルマとヒトに照準を絞った「モノ書き兼エディター」として活動中。自動車イベントではトークのゲストとして声が掛かることも多い。世界各国のスポーツカーやヒストリックカー、新旧スーパーカー、世界に数台の歴史的な名車や1000PSオーバーのチューニングカーなどを筆頭に、ステアリングを握ったクルマの種類は業界でもトップクラス。過去の経歴から速いクルマばかりを好むと見られがちだが、その実はステアリングと4つのタイヤさえあるならどんなクルマでも楽しめてしまう自動車博愛主義者でもある。1964年生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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