トヨタ 新型スープラ 遂に発売! 2シーターに割り切られた“ピュアスポーツ”の凄さとは(3/3)
- 筆者: 山本 シンヤ
- カメラマン:和田 清志・佐藤 正巳・トヨタ自動車
ガチのスポーツカーに難しい考えは不要! 新型スープラが注力したポイントとは
ちなみにエンジンの特性はラリーカーが参考になったそうだ。気難しさはないのに速い……いかにアクセルを踏んだ瞬間からフルブーストになってトルクが立ち上がるかに注力したそうだ。ATはシフトショックは評価せず、シフトスピードとダイレクト感に徹底してこだわっている。ドライビングモードはノーマル/スポーツのシンプルだが、「スポーツ」がスープラ本来のセットだと言う。
プラットフォームは最新BMWが水平展開している「CLAR」をベースにするが、スープラ/Z4に合わせて最適化されたスペックを採用。車体はミドルクラスと言うことで高価なアイテムは使わずアルミニウム/スチールの骨格構造を採用。しかし、異なる素材同士の接合強度を追及した結果、ボディ剛性は86の約2.5倍、カーボンモノコックを採用するレクサスLFAも上回る強靭なボディを実現した。
体幹を鍛えた車体に組み合わされるサスペンションは、フロント:ダブルジョイントストラット/リア:マルチリンク式を採用。ちなみにフロントはよりハイパワーエンジンを搭載するBMW M4用を水平展開している。
一部モデルにはドライブモード(ノーマル/スポーツ)や路面状況に応じて減衰力を最適制御する「アダプティブバリアブルサスペンションシステム」を設定。注目はVSCと連動しながら電子制御多板クラッチにより後輪左右間のロック率を0-100%の範囲で無段階に最適制御可能な「アクティブディファレンシャル」の採用だろう。タイヤはRZがFt:255/35R19、Rr:275/35R19、SZ-RがFt:255/40R18、Rr:275/40R18、SZがFt:225/50R17、Rr:255/45R17を履く。
肝心な走りはスポーツカーとしての“気持ちよさ”を重視
走りのセットアップはトヨタのマスタードライバーだった成瀬弘さん(故人)の最後の愛弟子の一人であるヘルヴィッヒ・ダーネンスさんが、BMWに駐在して実施。トヨタFR伝統の「速さやラップタイムよりも気持ち良さを重視」、「限界域でもドライバーを裏切らない」、「基本は安定だがドライバーの意志で自由自在にコントロール可能」と言う部分は継承されている。ちなみに昨年のプロトタイプ試乗会ではリアのナーバスな動きが多くの同業者から指摘されていたが、その後大きなアップデートにより改善されているとの事なので心配は無用だろう。
また、次世代スポーツと言うことで予防安全技術はプリクラッシュセーフティシステム(ミリ波レーダー+単眼カメラ式)、ブラインドスポットモニター、レーダークルーズコントロール、レーンディパーチャーアラートなどは全車標準装備と抜かりはなし。
また、クラウン/カローラスポーツからスタートした繋がる技術(コネクテッドサービス)も車載通信機(DCM)を全車に標準装備。スープラ専用のコネクテッドサービス「Toyota Supra connect」も提供される。
さらにスポーツカーならではの新アイテムとして、「TOYOTA GAZOO Racing Recorder」を用意。これはドライバーの捜査情報や各種センサーの値、車両の位置と方位情報を記憶するデータロガーで、その情報は専用アプリ(GAZOO Racing Data Viewer)で表示可能な上に、アクションカメラ(別売り)で撮影した動画とデータを自動で時間同期させて再生する事も可能となっている。
トヨタ最後の“純粋”スポーツモデルとなる!? ライバルはポルシェ ケイマン!
「スポーツカーは育てる事が大事」と言うことで、車両側にカスタマイズの際の工夫もいくつか行なわれている。例えば、ノーマルのダクトに蓋がしてあるが、穴を空けるとクーリング用としてシッカリと機能。また、レーシングカーやチューニングを行なう時には“冷却”が重要となるが、エンジン/オイルクーラー/デフ/ミッションなどにはドレンが開けてある上にクーラーが装着可能なスペースも用意されている。この辺りは86でカスタマイズの世界を知る多田さんらしい発想だ。
ベンチマークはズバリ「ポルシェ・ケイマン」だと言う。ピュアスポーツに生まれ変わったトヨタスポーツのフラッグシップだが、すでにトヨタは2025年までエンジン専用車種廃止を明らかにしており、恐らくコイツが最後の純粋な内燃機関を搭載したスポーツモデルになる可能性が高い。つまり、トヨタの「ラストサムライ」と言っていい。
価格はSZが490万円、SZ-Rが590万円、RZが690万円と頑張れば手に入れることができる価格に抑えられている。生産はオーストリアにあるマグナ・シュタイヤー社グラーツ工場で、海路にて運ばれた後、トヨタ自動車元町工場を経由して販売される。
[筆者:山本シンヤ/撮影:和田清志・トヨタ自動車]
【動画】「Supra is Back」篇(TOYOTA)
【動画】新型スープラ(米国仕様)プロモーション映像(TOYOTA)
新型スープラ(日本仕様)主要諸元
「RZ」グレード
排気量:2,998cc/エンジンレイアウト:直列6気筒/過給:ツインスクロールターボ/トランスミッション:8速スポーツAT/駆動レイアウト:FR(後輪駆動)/乗車定員:2人/最高出力:250kW(340ps)/5,000-6,500rpm/最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/1,600-4,500rpm/0-100km/h加速:4.3秒/車両重量(社内測定値):1,520kg/全長×全幅×全高(社内測定値):4,380×1,865×1,295mm/ホイールベース:2,470mm/タイヤサイズ:(前)255/35R19(後)275/35R19/トレッド:(前)1,594mm(後)1,589mm
「SZ-R」グレード
排気量:1,998cc/エンジンレイアウト:直列4気筒/過給:ツインスクロールターボ/トランスミッション:8速スポーツAT/駆動レイアウト:FR(後輪駆動)/乗車定員:2人/最高出力:190kW(258ps)/5,000-6,500rpm/最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1,550-4,400rpm/0-100km/h加速:5.2秒/車両重量(社内測定値):1,450kg/全長×全幅×全高(社内測定値):4,380×1,865×1,290mm/ホイールベース:2,470mm/タイヤサイズ:(前)255/40R18(後)275/40R18/トレッド:(前)1,594mm(後)1,589mm
「SZ」グレード
排気量:1,998cc/エンジンレイアウト:直列4気筒/過給:ツインスクロールターボ/トランスミッション:8速スポーツAT/駆動レイアウト:FR(後輪駆動)/乗車定員:2人/最高出力:145kW(197ps)/4,500-6,500rpm/最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1,450-4,200rpm/0-100km/h加速:6.5秒/車両重量(社内測定値):1,410kg/全長×全幅×全高(社内測定値):4,380×1,865×1,290mm/ホイールベース:2,470mm/タイヤサイズ:(前)225/50R17(後)255/45R17/トレッド:(前)1,609mm(後)1,616mm
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