トヨタ 新型カローラ/カローラツーリング試乗|世界の大衆車“カローラ”は本当に生まれ変わったのか(2/2)

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新型カローラの1.8Lガソリンとハイブリッドを徹底比較

筆者のオススメは1.8Lガソリン

というわけで走りについては、ガソリンモデルとハイブリッドの違いを中心に説明しよう。

一般的なユーザーに売れ筋モデルとなるのはハイブリッドだと思われるが、筆者的はガソリンモデルのバランスの良さに、好印象を抱いた。試乗したのはセダンのグレード「S」で、205/50R16インチのタイヤを履く標準的なモデルだ。

まず1.8リッターの自然吸気ユニットは、その軽やかな吹け上がりが若々しい。出力はたったの98PSしかないが、CVTとの連携が非常にこなれていて、街中でもハイブリッドに見劣りしない実用トルクが確保できている。7段の有段フィールを持つシーケンシャルモードもあるが、そのまま走っていても常に適正なトルクバンドが維持されており、アクセルを踏み込んだときの反応もいい。だから沢山踏み込まずとも、スムーズに加速することができた。

そしてシャシーも、このエンジンフィールに相応しいスッキリ感を持っていた。サスペンション剛性はスポーツに比べてかなりソフトな印象だが、タイヤとのマッチングが良いため剛性不足は感じない。路面からの入力を上手に吸収しつつ、ロールが少なめなのもいい。ハンドルを切ったときの応答性はリニアに過ぎず、良く曲がってくれる印象。そして肝心な直進安定性も、そつなく保たれていた。このスッキリ感こそが、新世代カローラのテイストなのだと思えた。

ハイブリッドとの価格差は、同じ「S」グレードで43万4500円。燃費は確かに14.6km/Lとハイブリッドの29km/Lに対して大きく見劣りするが、その価格差を燃費で埋めるよりはイニシャルコストの安さと、走りの良さを購入動機にしたい。ベーシックモデルで税込み200万円を切るガソリンモデルの安さは、その出来映えを考えればバリューである。

ハイブリッドも盤石の安定感が魅力

対してハイブリッドは、盤石の安定感だった。モータートルクがアシストする走りは適度に力強く、ガソリンエンジンよりも上級ユニットであることがうっすらと感じられる。

ただし若干の重さが影響しているようで、もう少しだけダンパーの初期減衰力が欲しいと感じた。操舵初期におけるロールスピードが僅かに早いため切れ込み感が強く、個人的には曲がり過ぎてしまう印象を持った。

試乗したのはツーリングのハイブリッド W×B。ハイブリッドな上にセダンよりも若干重たいボディと、17インチタイヤのシッカリ感に対して、ダンパーがほんの少しだけ負けている。またEPSの軽さや制御の緩さも、そこに拍車を掛けてしまう。ちなみにガソリンモデルとハイブリッドでは、EPS(電動パワーステアリング)の制御が少し違うとのことだ。

そのままコンバートするのは無理だとわかっているが、感覚的にはカローラスポーツの足回りを付けてしまえばいいのにと思えた。

トヨタ/カローラツーリング
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新車価格:
210.9万円338.8万円
中古価格:
127.2万円461.9万円

これを開発陣に話すと、彼らとしては「カローラとして守らなければならない味」があると語った。わかりやすく言うと垂直方向の突き上げ感のなさ。若干ふわりとした乗り心地には、18代続いたカローラの伝統があるという。

確かにカローラには歴代、そうした乗り味の印象がある。そう考えるとこのソフトな足回りで操舵応答性を引き出したことは見事だ。ただ操舵応答性が良くなると同時に直進安定性はトレードオフされるから、長距離移動ではどうなのか? だからこそ歴代カローラは、敢えて少しだけステアリングセンター付近の応答性を鈍らせていたのではないのだろうか?

ちなみにこのあと試乗したセダン ハイブリッド(グレードは同様にW×B)では、こうした切れ込み過ぎも少し抑えられていたから、ここにこそボディの差が少し現れたのかもしれない。

過去の呪縛に決別を告げながらも、いっぽうで頑固に守り続ける味がある

カローラは、かつて“国民車”と言ってよいほど街に溢れるクルマだった。本当に、我々庶民にとってカローラは誰もが買えるクルマであり、だからこそコンサバなデザインや乗り味が必要だった。だからこそ、スポーティカーとして「カローラレビン」や「スプリンタートレノ」、そして「カローラFX」といった数々の派性モデルが生み出された。

しかしいまやその存在は、同じトヨタが生み出したプリウスと、軽自動車に取って変わられた。そんないまキーンルックのセダンを見ていると、カローラは新しい転換を迫られたのだなと感じる。良い意味でこんな奇抜なセダン、昔のトヨタだったら絶対に許されなかったはずだ。

ジャパンサイズにこだわりながらも、スタイリッシュなリアビューを持つカローラツーリングにも、従来型カローラフィールダーの、敢えて少し控えめにしていたデザインからの完全脱却を感じる。

その一方で、彼らには伝統の味を守らねばならないという使命感もあった。その両輪があるからこそカローラなのだと、今回の試乗で深く学んだ気がした。

[筆者:山田 弘樹/撮影:和田 清志]

トヨタ カローラ 1.8 WxB / トヨタ カローラツーリング ハイブリッド WxB 主要スペック比較

車種名

カローラ

カローラツーリング

グレード名

1.8 WxB(ガソリンモデル)

HYBIRD WxB(ハイブリッドモデル)

価格(消費税込み)

232万円

280万円

全長×全幅×全高

4495mm×1745mm×1435mm

4495mm×1745mm×1460mm

ホイールベース

2640mm

2640mm

駆動方式

FF

FF

車両重量

1320kg

1390kg

乗車定員

5名

5名

エンジン種類

直列 4気筒 DOHC

直列 4気筒 DOHC

総排気量

1797cc

1797cc

エンジン最高出力

103kW(140PS)/6200rpm

72kW(98PS)/5200rpm

エンジン最大トルク

170Nm(17.3kg・m)/3900rpm

142Nm(14.5kg・m)/3600rpm

トランスミッション

CVT

CVT

使用燃料

レギュラー

レギュラー

燃料消費率(JC08モード燃費)

--km/L

30.8km/L

燃料消費率(WLTCモード燃費)

14.6km/L

25.6km/L

燃料消費率
(WLTC:市街地/郊外/高速道路モード)

9.6km/L/15.9km/L/17.6km/L

24.8km/L/27.6km/L/24.8km/L

電動機(モーター)種類

ーー

交流同期電動機

動力用主電池

ーー

リチウムイオン電池

モーター最高出力

ーー

53kW(72PS)

モーター最大トルク

ーー

163Nm(16.6kg・m)

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山田 弘樹
筆者山田 弘樹

自動車雑誌編集者としてキャリアをスタート。輸入車雑誌 副編集長、アルファ・ロメオ専門誌編集長等を経て、フリーランスのモータージャーナリストに。レース参戦なども積極的に行い、走りに対する評価に定評がある。AJAJ会員。カーオブザイヤー選考委員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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