日産 高速道での“手放し運転技術” 成功なるか!? 次期スカイラインから採用される“プロパイロット2.0”の性能とは

今、注目されている運転支援技術は今後どれほど進化するのか

新車を買う楽しさのひとつに、先進技術を得られることがある。技術の内容は時代によって異なるが、今は運転支援機能が注目されている。

運転支援の中で最も普及しているのは、追従走行の可能なクルーズコントロールだ。作動中にはアクセルとブレーキが自動制御され、設定速度の範囲内で、先行車両と一定の間隔を保ちながら追従走行を行う。クルーズコントロールは、ドライバーのペダル操作を軽減できることがメリットだ。また車線の中央を走れるように、パワーステアリングの操舵を支援する機能もある。

これらは衝突被害軽減ブレーキ(緊急自動ブレーキ)を作動できる安全システムを活用している。衝突被害軽減ブレーキには、歩行者、車両、路上に引かれた白線などを検知するセンサーが備わり、エンジン出力を制御したりブレーキを作動させることも可能だ。歩行者と衝突しそうになったり、車線を逸脱した時、パワーステアリングを制御して歩行者を避けたり元の車線に戻す機能もある。

これらを有効活用すれば、アクセルとブレーキを自動制御する追従走行、車線の中央を走るための操舵支援などが行える。そこで運転支援機能は、衝突被害軽減ブレーキとセットにして普及が進んだ。

2019年秋には、より進化した日産の運転支援技術 プロパイロット2.0が登場

今では軽自動車にも採用され、2017年には、ホンダ N-BOXがパワーステアリングの操舵支援も行うホンダセンシングを装着した。2019年に入ると日産 デイズと三菱 eKシリーズが、全車速追従型クルーズコントロールと操舵支援を採用している。2019年7月に発売されるダイハツ 次期タントも、同様の機能を搭載する予定だ。まさにこれらの運転支援技術は、時代を象徴する先進技術となった。

そして2019年秋には、日産 スカイラインがマイナーチェンジを行い、さらに進化したプロパイロット2.0を採用することになった。

※画像は現行型のスカイライン

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プロパイロット2.0 最大の特長は“手放し運転”を継続的に行えること

プロパイロット2.0の一番の特長は、運転支援機能を作動している時に、手離し運転を継続的に行えることだ。従来の運転支援機能では、パワーステアリングの操舵支援を行う場合、ステアリングホイール(ハンドル)を保持することが条件になる。ドライバーがステアリングを保持しない時は、警報を発して、国土交通省の基準に基づき65秒を経過すると操舵支援機能がキャンセルされる。

そこがプロパイロット2.0では、高速道路上において、手離し走行が可能だ。アクセルとブレーキも制御されて先行車に追従走行するから、ドライバーはすべての操作系統に手を触れず、運転支援を受けられる。

ステアリングホイールを保持するか否かの違いはきわめて大きい。保持していれば、操舵支援を受けていても、ドライバーにはステアリングホイールを操って運転している自覚が生じる。

ステアリングから手を離すことで“同乗者気分”になってしまうリスクも

しかしステアリングホイールから手を離すと、ドライバーの意識は一変する。両手を膝の上に置いて足も床に着けていたら、助手席に座っているのと同じ状態になるからだ。運転支援機能に過ぎないことを理屈では理解していても、ドライバーの気持ちは人任せ(クルマ任せ)になってしまう。

そうなるとドライバーとしての緊張状態を保つのは難しく、助手席に座って高速道路を走っている時と同様、眠気に襲われることは容易に想像される。

プロパイロット2.0ではドライバーがよそ見・まぶたを閉じたりすると警告が出る

そこでプロパイロット2.0では、ドライバーモニターカメラが運転席を常に監視する。運転支援中にドライバーがまぶたを閉じたり、よそ見をすると警報を発する。それでも前方を見ない時は、ドライバーに異常が発生したと判断して、緩やかな減速を行い車両を緊急停止させる。

高速道路の走行車線(第1/第2走行車線)を走っていて遅い先行車に追い付いた時は、モニター画面で車両側がドライバーに対して車線変更を提案する。ドライバーがステアリングホイールを保持してスイッチを押すと、承認したことになり、保持した状態で車線を変えられる。その後は再び手離し走行に戻ることも可能だ。

ナビ・センサー機能も大幅に進化

ナビ連動ルート走行機能も新たに採用する。目的地を設定してこの機能が作動を開始すると、インターチェンジで高速道路を乗り替える時も含めて、綿密な道案内のサポートを受けられる。手離しによる運転支援が行われるのは、単一車線を走る時のみだが、カーナビの機能も大幅に進化する。

プロパイロット2.0では、メカニズムやソフトウェアも最先端だ。セレナやデイズが装着するプロパイロットのセンサーは、単眼カメラのみだが、プロパイロット2.0にはカメラが7個、レーダーが5個、音波ソナーが12個備わり、周囲の車両、標識、路上の白線を詳細に検知する。さらに3D高精度地図データも採用され、車両の位置を前後方向で1m、左右方向ではわずか5cmの精度で検知できる。

運転支援はあくまでも“支援” 常に自分がドライバーであるという意識が重要

開発者によると「プロパイロット2.0はここまで緻密に造り込んでも、常に運転支援を続けられるわけではない」と言う。状況に応じて、運転操作をドライバーに戻す場面が生じるそうだ。

そうなると課題になるのがドライバーの感覚だろう。運転支援が中断されて自分で運転しなければならなくなった時、手を膝の上に置いている「助手席モード」から、「運転モード」へ素早く切り替われるのだろうか。しかも運転支援が中断されるのは、運転が難しい状況なのだ。

この時には車両が交通環境の先読みを行い、運転支援を維持しながら、ドライバーに操作を徐々に戻していく過渡的なプロセスも必要になるだろう。そしてこの状態で運転ミスが生じた時には、車両側の安全機能がカバーする。

今もっとも求められているのは運転支援による事故防止性能の大幅な進化

先般のプロパイロット2.0の報道発表では、安全機能に関する詳細な説明はなかったが、先に述べた充実したセンサーと解析能力を駆使すると、安全性も相当に進化するだろう。

プロパイロット2.0の運転支援機能も大いに期待されるが、今本当に求められているのは、同じシステムを使って得られる事故防止性能の大幅な向上だと思う。

[筆者:渡辺 陽一郎]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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