日産、緊急回避性能を飛躍的に向上させる運転支援技術「グラウンド・トゥルース・パーセプション」を発表┃車載AIなどを使用し的確な緊急回避を即座に行う

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日産は2022年4月25日(月)、現在開発中のクルマの緊急回避性能の飛躍的な向上につながる運転支援技術「グラウンド・トゥルース・パーセプション(Ground truth perception)技術」を発表した。カーライフ・ジャーナリストの渡辺 陽一郎氏が早速体験してきたので、その内容を解説する!

目次[開く][閉じる]
  1. 日産が最新の緊急回避性能を飛躍的に向上させる運転支援技術を搭載した試作車を公開
  2. ライダー、レーダー、カメラといった異なる複数のセンサーからなる「グラウンド・トゥルース・パーセプション技術」
  3. 「かも知れない運転」でその後の明暗が分かれる
  4. 2020年代中盤から市販車に搭載、2030年代には全車両に普及させる計画

日産が最新の緊急回避性能を飛躍的に向上させる運転支援技術を搭載した試作車を公開

古いクルマから新車に乗り替えるメリットはいろいろあるが、特に注目されるのが安全性の向上だ。事故の危険を検知して衝突被害軽減ブレーキを作動させる機能は、過去10年ほどの間に急速に進歩した。今では軽自動車まで含めて、幅広い車種に普及している。ブレーキに加えてステアリングの制御も行い、危険を避ける能力を高めたタイプも増えた。

また衝突被害軽減ブレーキと併せて、運転支援機能も進歩している。運転支援機能を使うと、ドライバーがアクセルとブレーキの操作をしなくても、一定の車間距離を保ちながら追従走行を行える。車線の中央を走行できるように、ステアリングを制御するタイプもある。

そして衝突被害軽減ブレーキと運転支援機能は、対象物を把握するセンサー、アクセル/ブレーキ/ステアリングの制御機能など、基本的に共通のメカニズムを使う。そのために機能が進化すれば、両方ともに向上させられる。各社とも自動運転まで視野に入れ、研究開発を重ねている。

そこで日産は2022年4月に、最新技術の試作車を公開した。助手席に同乗して、作動を確認できた。

ライダー、レーダー、カメラといった異なる複数のセンサーからなる「グラウンド・トゥルース・パーセプション技術」

テスト1

まず行ったのは、車両と歩行者を対象にした危険回避テストだ。走行中に遮蔽物の左側から、ダミーの車両が飛び出してくる。最新のシステムを搭載したスカイラインの試作車は、即座に自動的に右側へ車線変更を行い、障害物を回避した。

その次の瞬間には、子供(ダミー人形)が回避した右側から飛び出してくる。この時ドライバーはステアリング制御は行わず、衝突被害軽減ブレーキを作動させて停車した。相次ぐ飛び出しに、的確に対応している。

テスト2

先行車に追従しながら走行していると、前方を走っている車両が、進路を突然左側へ変えた。そこに突如現われたのは、ダミーの大きなタイヤだ。事故によってはずれたタイヤが、スカイラインの試作車に向けて転がってくる。これを右側に避けると、次は事故車両が右側の中央分離帯から飛び出してきた。この一連の危険にも、ステアリングとブレーキが自動的に操作され、障害物となるタイヤと車両を回避できた。

テスト3

このほか路上に落ちている障害物を避けたり、渋滞を回避するために車線変更を行うデモンストレーションも行われた。また運転支援については、ホテルのエントランスのような地図情報が整備されていない敷地内の道でも、映像によって自車が道路構造を把握して、アクセル/ブレーキ/ステアリングを自動制御するデモンストレーションが行われた。

これらの安全装備や運転支援機能を成立させているのは、グラウンド・トゥルース・パーセプション(Ground truth perception)と呼ばれる新技術だ。車両周囲の対象物を捉えるのは、ライダー、レーダー、カメラになる。異なる複数のセンサーを使うことで、さまざまな天候などの走行条件において、周囲の状況を的確かつ迅速に把握して分析する。

「かも知れない運転」でその後の明暗が分かれる

上記のセンサーの中で新しいのはライダーの技術だ。対象物の位置や形を3Dプリンターのように正確に再現できる。開発者は「小さな鳥などは難しいが、それよりも大きな物体であればすべて正確に見分けられる」という。

実際の事故で多いのは、ドライバーの見落としだ。例えば遠方の駐車場内で、車両が道路側に向かってゆっくりと走り始めたとする。この時に自車のドライバーが漫然と直進するのか、それとも「駐車場の車両が一時停止をせずに、道路へ進入してくる可能性がある」と判断してブレーキペダルを踏む準備をするのか。いわゆる「かも知れない運転」をするか否かで、その後の明暗が分かれる。

2020年代中盤から市販車に搭載、2030年代には全車両に普及させる計画

今回公開された技術で注目されるのは、車載AIを使った「かも知れない運転」だ。例えば「テスト2」で行ったタイヤが自車に向かって転がってくる状況だが、実際には直線的に近付いてくるわけではない。転がりながら左右に進路を変えることも考えられる。

あるいは前方を走るトラックが荷物を落とした時など、落下物が路上を不規則に左右に飛び跳ねながら、自車に近付いてくることもある。この時にドライバーは、急ブレーキを踏みながら、これから落下物がどこへ向かうのかを自分で予測してステアリング操作を行う必要がある。

これをグラウンド・トゥルース・パーセプションが的確に行うには、落下物の動きと今後の進路を正確に予測して、さらに自車の計画進路と干渉する場合では、的確な回避操作を即座に行わねばならない。そのためには、空間の構造を直接的に読み取るライダーが不可欠だ。

検知距離も300mと長い。開発者は「この検知距離があれば、海外の高速道路に匹敵する時速130kmまでは対応できる」という。また開発者は「この技術を2020年代の中盤から市販車に搭載して、2030年代には、すべての車両に普及させたい」と述べた。

それでも試乗したスカイラインのトランクフードを開くと、その中には、各種の機器がギッシリと詰まっている。天井の上にも、大きなライダーが搭載されている。これを今後は小型化して、居住性や積載性との両立を図るという。

世間では自動運転に対する関心が高いが、まず大切なことは、クルマにとって一番の欠点となる交通事故をなくすことだ。その技術進歩が自動運転も促進させる。この優先順位を間違えてはいけない。

[筆者:渡辺 陽一郎]

日産/スカイライン
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筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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