AUTECHデザイナーがこだわり抜く"プレミアムスポーツ"の世界観【DESIGNER’S ROOM 特別編】

クラフトマンシップを感じさせるオーテックのこだわりとは?

日産は「AUTECH」(オーテック)と「NISMO」(ニスモ)という2つのサブブランドを持つ。同じスポーツのキャラクターながら、モータースポーツ直系で直接的なパフォーマンスをアピールする「NISMO」に対し、「AUTECH」はクラフトマンシップを感じさせるプレミアムなキャラクターが掲げられている。その実現のためにどのようなこだわりがあるのか?今回はデザイン面からその秘密に迫ってみようと思う。

AUTECHブルーに込められた「ヘリテージ・湘南・希少性」

まずAUTECHのイメージカラーで「ブルー」はどのような経緯で設定されたのか?インテリア/カラーデザインを担当した青山雄未さんはこのように語る。

青山氏:「AUTECHブルーには、2つの意味を込めました。1つ目の意味は伝統です。私たちが創業当時から本社を構える湘南の地域には、四季折々、様々な日時にその瞬間だけの魅力的なブルーを感じる風景の美しさがあふれています。創業時のエンブレムには、海と空のブルーが表現されていました。創業した時からのスピリットが込められています。

2つめの意味は革新です。ブルーというのは、日本古来は希少性の高い色でした。今ではプロダクトにおいては先進性を表現する色に進化したという流れがあります。私たちは青色がもつ、希少性がありつつ革新性を想起させるイメージ、それがAUTECHの商品と繋がると考えました。」

実はよく見るとAUTECHブルーはモデルによって異なる。セレナAUTECHには先日追加されたばかりの「カスピアンブルー」、ノートAUTECHには「オーロラブルーパール」が採用されるが、なぜ共通ではないのか?

青山氏:「AUTECHブランドでは、季節や日時を問わずどんなシーンでもほかには真似できないクオリティーを表現することを追及しました。その結果、ボディカラーはあえて車種ごとにAUTECHブルーのニュアンスを変えて仕立てることにしました。」

ちなみに自動車業界では「ブルーはメインカラーになりにくい」と言うジンクスがあるが、AUTECHはその常識を覆しており全体の4割を超える。これはオーテック自身もビックリしたと言う。

青山氏:「お勧めはAUTECHブルーです。特にメタル調フィニッシュやAUTECHドットグリルが際立つコンビネーションなので、オリジナルを感じていただけると思います。」

細部にまでわたるエクステリアデザインのこだわりとは?

続いてエクステリアだが、AUTECHを特長付けるドット柄のグリルに金属調の加飾、そしてアルミホイール(セレナのみ)が大きな特徴となっているが、この辺りのこだわりは?エクステリアデザインを担当した日暮明紘さんはこのように語る。

日暮氏:「AUTECHドットグリルは小さな五角形で、更に立体感のある表現に拘っています。職人がそのクルマのグリルに、いちばん映えるように1粒1粒はめ込んでいったようなイメージを目指しました。そういった作り込みの丁寧さから、クラフトマンシップを感じ取っていただけると思います。

フロントとリアのバンパーに採用しているメタル調フィニッシュは、車体のいちばん低い位置にレイアウトする事に拘っています。AUTECHブランドの目指す低重心、且つワイドスタンスであることに加え、車体と一体感のある洗練されたデザインを実現しています。さらにメタル調フィニッシュは、ボディカラーとクルマの背景にある景色とを結ぶ額緑のような役割も持たせています。AUTECHブルーとのコンビネーションで更にシルバーが引き立つよう、塗装色はAUTECHブランド専用に開発しました。車種ごとにその特別な質感が一番美しく魅力的に映えるよう、色と断面形状を緻密に何度も玉成して作り込んでいます。

AUTECH専用に採用しているアルミホイールは、基準車よりも1インチ大径化することに拘っています。スポーティーさと安定感のある走りを実感していただけると思います。」

パンバーはセレナがハイウェイスター用、ノートが専用品なのですね。

日暮氏:「セレナのユーザークリニックをすると「AUTECHの違いは分かるがセレナに見えない・・・」という意見も。セレナでは、ハイウェイスターのバンパーの佇まいでも十分訴求できると考え、基準車の魅力を一段引き上げる仕立てを選びました。一方でノートでは基準車よりも更に個性を引き立てる方向で、バンパーを専用品に変更しています。

AUTECHブランドは車種毎にそれぞれのキャラクターや魅力を深化させるように、吟味して仕立てています。」

セレナがハイウェイスター用バンパーを採用しながらも、しっかりとAUTECHスタイルに完成されているのですね。

日暮氏:「車種毎に最適な「仕立て」を施すことによって、AUTECHブランドの魅力を最大限に表現できたらと思っています。」

車種ごとに違いを持たせノーマルを引き立てるインテリアコーディネイト

続いてインテリアはどうだろうか?

青山氏:「インテリアカラーは、夜の湘南の海が月光に照らされるイメージをモチーフにデザインしたブルーアクセントのAUTECHブルーコーディネーションです。精巧に仕立てたブラックインテリアの目や手に触れるところに、AUTECHブルーアクセントを主役に据えて特別を追及しました。

それぞれの車種が持つキャラクターを進化させた表現をするために、アクセントの入る量を車種ごとに玉成しました。例えば、ノートにはコンパクトスポーツの元気の良さの演出のために、エアコン吹き出し口にもAUTECHブルーをデザインするなどしています。

また素材選びや、車種によっては天井の色に至るまで吟味をしました。本革は所有者のドライビングスタイルに馴染んでその人だけの特別になります。光沢感とホールド性に拘って開発したスエードはしっとりと吸い付くような風合いで、赤ちゃんの産毛のように輝きます。通常のスエードに対して熱加工のひと手間を加えることでたどり着いたAUTECHブランドの特別です。

全て車種ごとのキャラクターをより進化させ、AUTECHブランドに仕立てるためのコーディネーションです。」

その結果、インテリアもエクステリア同様に最小限の変更で最大限の効果を生んでいる。不思議なのはノーマルから変更ない部分まで質感がアップしているように感じるところ。ズバリ、ノーマルの魅力をより際立たせるコーディネイトと言ってもいいだろう。

全体の調和を考えたクラフトマンシップはAUTECHの知見とノウハウの積み重ね

このように、AUTECHとしての共通性をベース車のデザインや空間に合わせて最適化、コピー&ペーストではなくひと手間加える事が、AUTECHが目指す「クラフトマンシップ」の一つと言えるだろう。

個々のパーツの変更だけでなく全体の調和を考えながらのトータルコーディネイトは、これまで数多くのカスタムカーを手掛けてきたオーテックの知見とノウハウも間違いなく活きているはず。

ちなみにAUTECHブランド発足時に、インテリアパーソナライゼーションプログラムの採用も検討中とあったが?

青山氏:「まさに計画している最中です。インテリアカラーや素材を複数から選択できるオプションですが、何でもOKではなくAUTECHブルーを表現する世界観の中でやりたいと思っています」

昨今、ベース車にプラスαを付加させたモデルが他社からも数多く発売されているが、その多くはモータースポーツ直系のスポーツ性能を持たせたモデルばかり。そういう意味では、AUTECHブランドのような、スポーティでありながら洗練された上質さを表現するモデルは孤高の存在でもある。

日暮氏:「日産はカスタムカーのサブブランドを、「NISMO」と「AUTECH」の二枚看板で展開しています。AUTECHはAUTECHらしく、カロッツェリアとして、プレミアムスポーティとしての作り込みの良さ/上質さをユーザーに訴求していきたいと思っています。今後のAUTECHブランドにもご期待ください。」

2018年の東京オートサロンではAUTECH第3弾になるであろう(!?)エクストレイルが参考出品されていたが?

日暮氏:「はい。約1年を経て、このたび「エクストレイルAUTECH」として2019年1月の発売が決定しました。さらに同月の次の東京オートサロンでも、AUTECHブランドの新たなニュースを発信する予定です。」

[著者:山本 シンヤ / 撮影:佐藤 正勝]

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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