マツダ 新型CX-8 2.5リッター ターボ試乗レポート|CX-8の世界観にマッチする力強く滑らかなガソリンターボエンジン

2018年11月に改良された本革シート7人乗りCX-8を公道試乗

ここ最近のマツダ車は、改良を頻繁に行う。車種によっては半年に1度のペースだ。マツダの最上級車種に位置付けられるCX-8も、2017年12月に発売され、2018年6月には本革シート備えるLパッケージに7人乗りを加えた。

さらに2018年11月にも改良を行い、新たに直列4気筒2.5リッターのガソリンと、2.5リッターのガソリンターボを設定している。

Gベクタリングコントロールも改良を受けた。以前はハンドル操作に合わせてエンジン出力を微妙に抑え、前輪の荷重を増やすことで滑らかに曲がる制御だったが、新たなGベクタリングコントロールプラスでは、ハンドルを戻す時にも制御が入る。従来の出力制御に加えて、ブレーキも積極的に活用するようになった。

この制御により、カーブを曲がったり車線変更を行う大半のプロセスにおいて、Gベクタリングコントロールの効果が発揮されている。

改良を受けたCX-8は、すでにテストコースで試乗しており、この内容は2018年10月25日に掲載した。今回は一般公道で試乗を行った。

試乗したグレードは、2.5リッターのターボを搭載する25T・Lパッケージの4WD(25Tで前輪駆動の2WDは選べない)だ。

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実用回転域で扱いさすさを重視しCX-8との相性が良い

まず新たにCX-8に搭載された2.5リッターガソリンターボの動力性能の実力をテストしてみよう。街中ではテストコースと違って、時速30~50kmの加減速を繰り返す。この状況では扱いやすい。低回転域の駆動力に余裕があるためだ。動力性能の数値は最高出力が230馬力(4250回転)、最大トルクは42.8kg-m(2000回転)で、実際に運転すると1300回転付近から過給効果を感じる。ターボを装着したエンジンは、ディーゼルを含めて1500回転以下で駆動力が落ち込む車種も多いが、2.5リッターターボには十分なゆとりがある。1500~4000回転が動力性能を最も有効に使える回転域だ。

ガソリンエンジンとしては、かなり低い回転域に重点を置き、その性格が最高出力4250回転、最大トルクは2000回転という数値にも表現されている。CX-8の2.2リッタークリーンディーゼルターボは、190馬力(4500回転)・45.9kg-m(2000回転)だから、ガソリンの最高出力を発生させる回転数は、ディーゼルよりも低いのだ。

このような性格のガソリンエンジンだから、ターボの装着をほとんど意識させない。実用回転域の駆動力を高めたV型6気筒4リッターエンジンを運転している感覚で、前述のディーゼルにも近い。

粘り強く滑らかな回転感覚

実用回転域の駆動力が高い代わりに、ガソリンエンジンとしては高回転域の吹き上がりは鈍い。Dレンジでフル加速した時のシフトアップは、スポーツモードを含めて5000~5300回転前後で行われ、回しても5600回転くらいだ。

最高出力が4250回転だから、5000回転付近まで回してもほとんど意味はなく、ガソリンらしい機敏な吹き上がりは味わえない。動力性能は下がるものの、ターボを装着しない2.5リッターガソリンエンジンを搭載する25Sの方が吹き上がりは活発だ。

しかし峠道で行うようなスポーティな運転を想定せず、低めの回転域を多用する市街地と高速道路に限れば、粘り強さがあってCX-8の性格に合っている。出力特性はディーゼルに近いが、ガソリンだから回転感覚は滑らかだ。

アクセルペダルを踏んだ時の駆動力の立ち上がり方も角が丸く穏やかで、ディーゼルに比べると運転感覚が優しい(易しいではなく)印象を受ける。

もともとこの2.5リッターガソリンターボは、北米で売られるCX-9(日本未発売)に搭載することを考えたパワーユニットだ。北米での使われ方と、CX-9の重いボディに合わせてセッティングを施した。そしてCX-8はCX-9の幅を狭めた仕様でボディも重いから(試乗した25T・Lパッケージは1890kg)、2.5リッターターボと相性が良いのは当然だろう。北米的な比較的低い回転域で延々と走り続ける使い方で本領を発揮する。

高い安定性で常に落ち着いた気分で運転できる

CX-8 2.5ターボ(4WD)の走行安定性は、LサイズSUVの中では優れた部類に入る。小さな舵角から比較的正確に反応して、カーブに入った後でも旋回軌跡を拡大させにくい。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)が2930mmに達するから、小気味良く曲がる印象はないが、峠道などでコースアウトする不安な手応えも感じない。操舵角に応じて内側にしっかり曲がり込む懐の深いタイプだ。

この適度な曲がりやすさを発揮させながら、なおかつ安定性も高い。下り坂のカーブで危険を避けるため、ハンドルを内側へ切り込みながらブレーキを踏むような操作を強いられても、後輪の接地性が保たれる。

この安心感の高さは、改良を受けたCX-5と比べても、CX-8の方がさらに上まわる。ハンドルを握る掌にも安定性が伝わるため、常に落ち着いた気分で運転できる。この特性もCX-8の性格に合っている。

CX-8がこのような安定性を得られた理由は、CX-9をベースにしたことでプラットフォームの剛性がCX-5よりも高く、ホイールベースも長いからだ。先に述べたGベクタリングコントロールプラスなど、2018年11月に実施された改良も安定性を向上させている。

市街地では小さなでこぼこを感じるも粗さがなく重厚感のある快適性

新型CX-8 2.5ターボの乗り心地は、キレイに舗装された前回のテストコースでの試乗とは印象が少し違った。ホイールベースが長いために前後方向の揺れは抑えられ、大きめの段差もしっかりと吸収するが、市街地を走ると路上の細かなデコボコを伝えてくる。粗さはなくて重厚感も伴うから、CX-5やCX-3を含めたSUV全体の中では快適な部類に入るが、もう少し路上の細かなデコボコを抑えられると良い。

ちなみに装着されていたタイヤはTOYOプロクセスR46で、サイズは19インチ(225/55R19)。指定空気圧は前後輪ともに250kPaであった。

このほか改良では遮音性も向上させて、車内での会話もしやすくしている。

最新の安全運転支援システムを備える

CX-8の緊急自動ブレーキは、アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポートの歩行者検知機能に、夜間検知も加えた。車両の周囲を確認しやすい360度ビューモニターは、25T/XDのLパッケージ、XDプロアクティブに標準装着され、そのほかのグレードでもメーカーオプションとして選べようになった。

居住空間はクラストップレベル

CX-8の居住性は従来と変わりはない。本革の運転席は、もう少しホールド性を高めて欲しい。少し滑りやすく、カーブを曲がる時には、腰まわりをさらに安定させたいと感じた。

居住空間の広さは、SUVの中でトップ水準だ。1列目の下側に十分な空間を設けたから、2列目に座る乗員の足が収まりやすい。そのために身長170cmの大人が乗車しても、2列目の膝先空間を握りコブシ2つ分くらいまで詰められる。そうなると3列目の足元が広がり、大人が多人数で乗車することが可能だ。

ただしミニバンではないから、3列目は床と座面の間隔が不足しており、膝が持ち上がって腰が落ち込む。長時間の乗車には適さないが、片道1時間程度であれば、さほど不満は生じないだろう。使う時には、2列目のスライド位置を上手に調節して、3列目にも相応の足元空間を割り振ると快適だ。

大人4名乗車なら後席の足元もゆったり

CX-8は通常は3~4名の乗車で長距離を移動して、稀に短距離を多人数で乗車する用途に適する。3列目に乗員が座らない時は、2列目を後端までスライドさせると、足元空間が大幅に広がる。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ半だから、高めの着座位置と相まって足元がゆったりとしている。

6人乗りのLパッケージであれば、2列目の中央にアームレスト付きのコンソールボックスが装着され、リラックス感覚を一層盛り上げる。この雰囲気はアルファード&ヴェルファイアにも似ている。

買い得感はディーゼル・静粛性と馴染みやすさはガソリンターボ

新型CX-8 2.5ターボの価格は試乗した25T・Lパッケージの4WDが424万4400円だ。ディーゼルのXD・Lパッケージの4WDは446万400円になる。後者は21万6000円高いが、25T・Lパッケージと違ってBoseサウンドシステム(8万1000円)とCD/DVDプレーヤー+地上デジタルチューナー(3万2400円)が標準装着され、実質価格は10万2600円に縮まる。

そしてXD・Lパッケージは、クリーンディーゼルだからエコカー減税によって購入時に納める自動車取得税と同重量税が免税になるが、25T・Lパッケージは2018年度で13万6100円が徴収される。そうなると実質価格差が10万2600円ならば、減税を含めた支払い額ではXD・Lパッケージが3万3500円安い。

さらにWLTCモード燃費は25T・Lパッケージが11.6km/L、XD・Lパッケージの4WDは15.4km/Lになり、軽油の価格も安い。動力性能は同等だから、損得勘定ではXD・Lパッケージが勝る。開発者によると「エンジンの製造コストは、クリーンディーゼルのXDが明らかに高く、価格が同等ならばXDが買い得になる」という。

従ってCX-8の本流は従来と同じくクリーンディーゼルターボのXDだが、馴染みやすい運転感覚とか静粛性にこだわるのであれば、25T・Lパッケージを選びたい。そしてCX-8の世界観にも、25T・Lパッケージが適している。

どちらを選ぶにしても、両方を楽しみながら試乗して判断したい。

[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:和田 清志]

マツダ 新型CX-8 2.5リッターターボの主要スペック

グレード25T L Package [4WD]

価格

424万4400円

全長

4,900mm

全幅(車幅)

1,840mm

全高(車高)

1,730mm

ホイールベース

2,930mm

車両重量(車重)

1,880kg

乗車定員

7人

排気量

2,488cc

エンジン種類

水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ

最高出力

169kW(230PS)/4,250rpm

最大トルク

420N・m(42.8kgf・m)/2,000rpm

駆動方式

4WD

トランスミッション

6EC-AT

燃料

無鉛レギュラーガソリン

燃料タンク容量

74L

JC08モード燃費

--

WLTCモード燃費

11.6km/L

市街地モード燃費

8.4km/L

郊外モード燃費

11.7km/L

高速モード燃費

13.8km/L

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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