売れ筋国産コンパクトカー 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
ボディカラーは全17色
3885mm×1695mm×1500mm(2WD)のボディサイズ、2510mmのホイールベースは、いずれも今回の中で最大となる。
精悍なフロントビューや横長のヘッドランプは、先代とはだいぶ印象が変わって見える。
張り出したフェンダー、前進感の強いショルダーライン、ボディパネルの造形などにより、躍動感を表現しながらも、2ボックス車で0.285というCD値を達成したのはたいしたものだ。
ボディカラーが実に17色という豊富な中から選べるのも特筆できる。
新設定の「ジュエラ」には、専用加飾のハロゲンヘッドランプ、メッキ加飾フロントグリル、ステンレス製ドアベルトモールディングなどが与えられる。
さらに、ドアミラーとドアハンドルをシルバーとしたシルバーデコレーションも一部選べる。
エンジンは、1リッターの3気筒(51kW[69ps])と、4気筒の1.3リッター(70kW[95ps])と1.5リッター(80kW[109ps])の計3機種が選べるのはヴィッツならでは。このうち1.3リッターエンジンは新開発で、その一部にアイドリングストップ機構装着車が設定され、26.5km/Lの10・15モード燃費を達成した。独自の常時かみ合い式スターターを採用した同機構は、より早く静かな始動を可能としているのが特徴。
1リッター車は、3気筒らしい音や振動を感じるものの、実用域でのトルク特性は十分。1.5リッター車は、力感は高いが、ややノイジー。1.3リッター車はスムーズかつ動力性能も十分で、ベストバランスといえる。
乗り心地にはやや固さを感じるものの、姿勢変化は小さく抑えられており、操縦安定性はまずまずである。
クラスを超えたドライブフィール
ボディサイズは3850mm×1695mm×1510mm(2WD)でヴィッツとほぼ同等。ホイールベースは2430mmとやや短い。ひと目でスイフトとわかるエクステリアデザインは、2代目と似ているが、新旧を並べると明らかに新しく見える。
大型ヘッドランプや、勢いのあるショルダーライン、立ったAピラー、太いCピラーなどが特徴。新鮮味のあるリアビューは、テールゲート下端の分割線が高くなっているのも特徴だ。
無国籍な印象は相変わらず。ヴィッツやマーチが、ボディカラーの選択肢が豊富であることをアピールする一方で、スイフトは全6色と標準的な数にとどめている。
パワートレインは、最高出力67kW[91ps]/6000rpm、最大トルク118Nm[12.0kgm]/4800rpmを発生する、吸排気VVTを採用するなど改良された新1.2リッター4気筒エンジンと、副変速機付きのCVTの組み合わせのみ。
CVTはマーチと同じもので、フラットなトルク特性のエンジンと大きな変速比幅を持つCVTのおかげで、発進加速もよく、とても1.2リッターとは思えないほどの動力性能を実現している。4気筒らしく、3気筒に比べるとやはりスムーズなフィーリングとなる。
XSにはパドルシフトが付く。フットワーク面では、巡航時には落ち着いた印象ながら、可変ギアレシオステアリングの採用によるクイックなハンドリングが印象的。限界域でのリアの安定感も高く、クラスを超えたドライブフィールを身に着けている。
万人向けとなったマーチにボレロの個性を
ボディサイズは3805mm×1665mm×1515mm(2WD)と、今回の中ではわずかな差で最小となる。ホイールベースは2450mm。丸いヘッドランプとアーチを描くサイドウインドウが特徴。
先代ではパイクカー的なユニークさにより、乗り手を選ぶ印象があったところだが、現行モデルでは、より万人向けのデザインとなった。
ボレロでは、光輝モール付フロントバンパー、メッシュデザインのフロントグリル、アルミホイールなどが異なる。やや個性が薄れたマーチに対し、個性を求めるユーザーのニーズに応えている。なお、ベース車のボディカラーは全9色のところ、ボレロでは4色となる。
パワートレインは1種類のみの設定で、最高出力58kW[79ps]/6000rpm、最大トルク106Nm[10.8kgm]/4400rpmを発生する、新開発の1.2リッター3気筒エンジンを搭載し、モノとしてはスイフトと同じ副変速機付きのエクストロニックCVTが組み合わされる。
低~中回転域でのトルクの感じさせ方は、今回の中でももっとも上ではないかと思う。全体的にノイズのレベルが大きめとなっているものの、むしろ上手く打ち消しあって、何か突出して気になる部分が出ていない。
走りのフィーリングは、一般走行では乗り心地にはやや固さを感じるものの、速度を上げるにつれてフラット感が増していく印象。
ただし、電動パワステのしっかり感や、足まわりのしなやかさには、もう一歩欲しいところではある。
デザイン・スペックの総評
10・15モード燃費(2WD車)について、ヴィッツの1.3リッターのアイドリングストップ機構装着車では26.5km/L、マーチの1.2リッターのアイドリングストップ機構装着車では26.0km/Lを達成。ただし、アイドリングストップ機構非装着車で比べると、ヴィッツは1リッターが23.0km/L、1.3リッターが24.0km/L、1.5リッターが20.0km/Lで、マーチは24.0km/Lとなっている。アイドリングストップ車の設定のないスイフトも23.0km/Lを達成しており、実は大差ない。副変速機付きCVTは、変速比幅が大きく、発進加速はレスポンスよく、高速巡航時は回転を抑えて燃費よく走ることができるなど、多くのメリットがある。反面、フィーリング面ではリニアでない部分も見受けられ、その点では、よりシンプルな機構であるヴィッツのほうが気になる部分は小さい。アイドリングストップ機構について、マーチのものも悪くないが、ヴィッツのものは、より停止も再始動もスムーズな印象となっている。
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