HVのトヨタからEVのトヨタへ? 本格的なEV戦略を発表した理由とは(2/2)
- 筆者: 桃田 健史
ジャーマン3の「EVシフト」への牽制
もう1点が、ジャーマン3が今年に入って加速させている「EVシフト」というマーケティング戦略に対する牽制球だ。
フォルクスワーゲングループは2016年9月に発表した中期経営計画に基づく、EVシフトを鮮明化させている。同社にとって中国は最重要国であり、NEV法への対応を含めてEVシフトを一気に進めるのは当然だ。そうした中国での動きを原動力として、世界各地でEVシフトという名のマーケティング活動を活発化させている。
こうしたフォルクスワーゲングループの企業戦略に、同胞であるダイムラーとBMWが乗っかる形で、ジャーマン3によるEVシフト・マーケティング活動が繰り広げられている。この活動は、リチウムイオン電池やモーター・インバーターなどEV関連コンポーネンツの量産効果による大幅なコスト低減につながる。
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トヨタとしても、マツダとデンソーが共同で設立したEV開発企業「EV C.A. スピリット」に加えて、スズキとインド向けEV開発を共同で進めることにより、ジャーマン3に対抗しうるEVのコストダウンを進めようとしている。
日本では当面、ハイブリッド車が主役
以上のような、トヨタの中国とインドでのEVシフト戦略が日本市場に直接的な影響を及ぼす可能性は低いと考えられる。
なぜならば、いまのところ日本にはEV販売台数を規制する政府の施策は具体化されず、またトヨタの次世代車の主力は当面、ハイブリッド車であるからだ。
トヨタとしては、日本ではまず、プリウスPHVの普及を進め、母数の多いハイブリッド車からプラグインハイブリッド車へとユーザーをしっかりと引き上げることが第一だと考えている。今後、日本市場ではEVではなく、トヨタから多彩なPHVモデルが導入されると考えるのが自然だ。
[Text:桃田健史]
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