スバル 新型フォレスター 新型車解説(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
280psの「DIT(直噴ターボ)」モデルもラインナップされている新型フォレスター
新型フォレスターのエンジンは2リッター水平対向4気筒で、ターボとノンターボが用意されている。ノーマルエンジンは、先代型が2010年のマイナーチェンジで新世代のFB20型を搭載したから、基本的には同じタイプだ。それでも摩擦損失を抑えて燃費性能の向上を図るなど改善が施された。
ノンターボモデルの最高出力は148馬力(6,200回転)、最大トルクは20kg-m(4,200回転)になり、2リッターエンジンとしては十分な性能を発揮する。
そしてターボモデルは、直噴式のFA20型を用いる。この直噴ターボには「DIT」(Direct Injection Turbo)の名称が与えられ、レガシィの2.0GT・DITに先行搭載された。フォレスターの数値は、最高出力が280馬力(5,700回転)、最大トルクは35.7kg-m(2,000~5,600回転)。幅広い回転域で3.5リッターエンジンに匹敵する高いトルクを生み出す。
先代フォレスターの2リッターエンジンは4速ATだったが、新型フォレスターではCVT(無段変速AT)のリニアトロニックが採用された。駆動力の伝達効率を高め、燃費性能の向上も図られている。
駆動方式は先代フォレスターと同様に全車が4WD(AWD)。
基本的な仕組みは、今やスバルの伝統となった多板クラッチを用いるMP-T(マルチプレート・トランスファ)式に準じるが、制御は「新アクティブトルクスプリット」式として大幅に進化している。横滑り防止装置のVDCからの信号を用いて、前後輪のトルク配分精度を高めた。
具体的には、挙動が不安定になりやすいアクセルを閉じた時の走行安定性、路面の摩擦が低い場所における発進性やスタックからの脱出性、ハンドルを切った状態で発生するブレーキング現象の抑制などを高度化し、先代フォレスター以上に滑らかで安定した走りが行える。
新たに設けられた「Xモード」スイッチ
そして新型フォレスターでは、悪路の走破力まで踏み込んで改善したことも注目される。
新たに「Xモード」スイッチを設け、エンジン、CVT、4WD、横滑り防止装置などを統合制御して、オフロードSUV並みの走破力をめざした。また、「ヒルディセント・コントロール」も採用。滑りやすい下り坂などを時速20km以下でゆっくりと走る時、アクセルやブレーキが自動的に制御され、ドライバーがハンドル操作に集中できる。これもオフロードSUVに多く用いられる機能だ。国産シティ派SUVでこれを採用する車種は、エクストレイルなど少数にとどまる。
サスペンションはフロント側がストラット式、リア側はダブルウイッシュボーン式の4輪独立懸架。基本的なメカニズムは先代フォレスターと同じだが、フロント側のショックアブソーバーにはリバウンドスプリングを採用した。
コーナリング時に、内側に位置するサスペンションの伸び方を抑制し、ボディの浮き上がりを抑えて走行安定性を向上させる。ボディの傾き方を抑えるスタビライザーの径なども含め、足まわりは全面的に見直された。
安全装備では、ほかのスバル車と同様に「アイサイト・バージョン2」を設定。車載カメラが常に前方をチェックしていて、衝突の危険が生じるとドライバーに注意を促し、衝突不可避の状態では自動的にブレーキを働かせる。対象物との速度差が時速30km以下の時は、衝突の回避も可能だ。車間距離を自動制御しながら先行車両に追従するクルーズコントロールの機能も備わる。
お買い得グレードは「2.0i-Lアイサイト」
グレード構成は、ノーマルエンジン仕様が4タイプ、ターボは2タイプを用意。
グレード | エンジン | 駆動 | 変速機 | 価格 |
---|---|---|---|---|
2.0i | 2.0リッター水平対向 4気筒 DOHC | AWD | 6MT/リニアトロニック | 2,089,500円 |
2.0i-L | 6MT/リニアトロニック | 2,404,500円 | ||
2.0i-L EyeSight | リニアトロニック | 2,509,500円 | ||
2.0i-S EyeSight | リニアトロニック | 2,772,000円 | ||
2.0XT | 2.0リッター 水平対向 4気筒 DOHC直噴ターボ“DIT” | リニアトロニック | 2,831,850円 | |
2.0XT EyeSight | リニアトロニック | 2,936,850円 |
10.5万円の価格アップで高い安全性と高機能なクルーズコントロールが得られることから、購入するならアイサイト装着車を推奨したい。
となれば、最も安いグレードはノーマルエンジンを搭載した「2.0i-Lアイサイト」(250万9,500円)、スポーティな内外装が好みなら「2.0i-Sアイサイト」(277万2,000円)、ターボであれば「2.0XTアイサイト」(293万6,850円)になる。
この3グレードは、いずれもエコカー減税の対象。購入時に支払う自動車取得税と同重量税が50%、購入の翌年度に支払う自動車税が25%軽減される。使用目的や好み、予算に応じて選べば良いが、2.0i-Lアイサイトの割安感は魅力だ。
同じ価格帯に属するSUVのライバル車としては、エクストレイル4WD20Xtt(249万6,900円)、CR-V2WD20G(250万円)、RAV4・4WD2.4スポーツ(259万円)などが用意され、アイサイトやアイドリングストップの装着を踏まえると、フォレスターの割安感が際立つ。ちなみに同じスバル車のインプレッサXV2.0i-Lアイサイト(246万7,500円)も同じ価格帯に入る。
今のところ機能や価格競争が激しいのは、国内市場を重視して開発されたミニバン/コンパクトカー/軽自動車だが、今後はSUVでも同様の関係が強まりそうだ。優れたSUVが求めやすい価格で手に入れば、SUV市場も活性化するだろう。
2013年には、メルセデスベンツAクラスにもクロスオーバーモデルが設定される模様。国内、海外ともにSUVがトレンドになりそうだ。
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