MINI ジョン・クーパー・ワークス 試乗レポート|史上最強の231馬力、JCW直系のピュア・レーシング・スピリッツを体感!(1/2)
- 筆者: まるも 亜希子
- カメラマン:小林 岳夫
ラリー・モンテカルロを3度優勝したJCWの血脈
ジョン・クーパーという名前を見て思い出すのは、4年前にフランスのニースからイタリア方面へ走り、途中でワインディングを駆け上って寄り道したチュリニ峠。ここは、1960年代にジョン・クーパーの手によってチューニングされたクラシックMINIが、3度も優勝したというラリー・モンテカルロのSS(スペシャルステージ)が行われた場所だ。
山肌に沿って頂上まで、まるで螺旋階段のように続く坂道は道幅が狭く、崖側にはわずか30cmほどの縁石が積まれているだけ。高所恐怖症でもないのに、運転席から下をのぞいただけでもゾッとする光景だ。
走ってみると、ちょっとハンドルを切り損ねたり、ブレーキングが遅れたりしたら、崖下まで真っ逆さまに落ちてしまいそうで震えがきた。こんなところをどうやったらミスもせず、誰より速く走れるのか、ちょっと凡人には真似する勇気も出ない。しかもラリー・モンテカルロの時期は雪が積もり、路面が凍っていることが多いというから、そこを小さなボディでカッ飛んでいくMINIの姿は、どんなにカッコ良く、衝撃的だったことだろう。
もし気になる人は、検索すれば当時の写真や動画などが見られるはずなので、その衝撃を味わってみてほしい。そうすれば、このジョン・クーパーの偉業に由来するジョン・クーパー・ワークス(JCW)のエンブレムを掲げたMINIが、カッコだけの生半可なスポーツモデルではないことが、より強くイメージしてもらえると思う。
スピリッツばかりか流れる血も本物
今回試乗したMINI ジョン・クーパー・ワークス・3ドアは、コンバーチブル、クロスオーバー、クラブマンと揃うJCWの中でも、よりピュアなレーシング・スピリッツを受け継ぐ直系モデル。現在、BMWグループはこのJCWブランドのコンサルタントとして、ジョン・クーパー氏の息子であるマイク・クーパー氏を招聘しているというから、スピリッツばかりか流れる血も本物だ。
その外観は、MINI 3ドアのONE、COOPER、COOPER Sとは明らかに違いがわかる専用エアロキットでバリバリに武装されている。
フロントバンパーの大型エアインテークや、張り出したリアウイングはもちろん、JCW専用のアロイホイールからチラリと覗く真っ赤なブレンボ製キャリパー、リアセンターから突き出るツイン・エグゾースト・パイプなど、どれもが見た目だけでなく性能アップのために備わっているものだ。タイヤはオプションで装着できる18インチを履いており、全体がよりドッシリとした迫力で満ちている。
MINI史上最強のパワートレーン
パワートレーンは、COOPER Sをベースとしてさらに高性能に仕立てるというJCWの伝統にのっとり、2.0リッター直4直噴ツインパワーターボに6MTと6ATを用意。最高出力は231ps/5200-6000rpm、最大トルクは320Nm/1250-4800rpmと、COOPER Sの192ps/5000rpm、280Nm/4600rpmをはるかに上回り、MINI史上最強となっている。
試乗車はそうした最強MINIにふさわしいと思われる、6MTモデル。走り好きにとっては、自分のテクニックを駆使してその実力をどこまで引き出すことができるのか、一種の「試合」みたいな気持ちにさせるのがMTだ。
ただ、実はMINI ジョン・クーパー・ワークス・3ドアのリリースには意外な事実が記されている。ヨーロッパ仕様車のデータではあるが、6.1秒という時速0-100キロ加速を達成したのは、ATだというのだ。
新設計されたアイシンAW製の6ATは、シフトプログラムが改良されてシフトスピードが鋭くなり、MTより車両重量が30kgほど重いにも関わらず、MTを上回る加速性能を発揮するという。出すからには、速さにこだわる人にも「ATなんて」と言わせない。そんな徹底した走りへの追求を感じるところだ。
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