MINI ジョン・クーパー・ワークス 試乗レポート|史上最強の231馬力、JCW直系のピュア・レーシング・スピリッツを体感!(2/2)

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6MTの意義

さて、それではMINI ジョン・クーパー・ワークス・3ドアを6MTで乗る意義は、どんなところにあるのだろう。そんなことを頭に浮かべながら、さっそくウォンッと元気よく吠えるエンジンを始動した。その響きだけでもテンションが急上昇してくるが、コクピットの雰囲気もまた、それを見事に盛り立ててくれるものだ。

女性には少々ゴツいと感じるほどの太さがあり、外観やインテリアに挿し色として使われる赤のステッチがあしらわれるステアリングホイール。普通のクルマは、握った時に親指をかける凹みが、時計に見立てると9時15分の位置にしかない場合が多いが、このステアリングには10時10分の位置にもある。シフトレバーもガッチリと大きめで、手のひらにクロームの金属的な感触が伝わるもの。

シートはたっぷりとしたサイズながら、太ももや膝裏、上半身に張り出した部分がピタリと添う、ホールド性の高さを感じさせるスポーツシートだ。ヘッドレストは一体形状だが、首の後ろあたりに空気穴があるから、熱気ムンムンで走っていても不快になることはなさそう。腰を支えるランバーサポート機能もあり、激しい揺れや長時間のドライブ時も身体への負担を減らしてくれることだろう。

そしてインパネを見れば、MINIを象徴する丸いモチーフのデザインを崩すことなく、センターのマルチインフォメーションディスプレイの縁がチェッカーフラッグ模様になっていて、思わず微笑んでしまう演出。ヘッドアップディスプレイも標準装備だ。

シフトレバーの根元にあるリングを左右に回すことで、スポーツ/ミッド/グリーンと3つの走行モードが選べる「MINIドライビングモード」も標準装備。

まずはデフォルトのミッドのまま、足裏にステンレス仕上げのカッチリとした感触を味わいながら、クラッチを繋いで走り出した。重すぎず、神経質なところもさほど感じないクラッチ操作だが、最大トルクがわずか1250回転と、走り出してすぐからグイグイくるせいか、1-2-3速と順にアップしていく流れをスムーズに操るには、アクセルとクラッチのコントロール加減をあれこれ試しながら、いちばんのミートポイントを探る必要があった。今回は市街地のみの試乗ということもあって、周囲のクルマの流れに合わせつつ、あり余るパワーをドウドウと鎮めながら操る感覚だ。

でもこれまで、スピードを出したりコーナーを攻めるイメージばかりが先行していたジョン・クーパー・ワークス・3ドアは、慣れてくればこんなにもなめらかに市街地を走ってくれるのか、と感心。

加えて驚いたのが、乗り心地の良さだ。タイヤはピレリP7を履いていたが、ガッシリとした重厚感や硬さはあるものの、路面からの突き上げや不快な微振動などはうまく収めてくれている印象で、これなら同乗者がいても嫌がられることはなさそう。

こうしたハイパフォーマンスモデルでは、高速域は乗り心地がいいけど市街地では不快、という例も多いだけに、快適性を犠牲にしないJCWのチューニングは魅力の一つだ。

3ドアとはいえ、乗り込んでしまえば大人でもしっかり座れる後席を持ち、床下収納のあるラゲッジも十分な広さを確保しているから、走りを楽しむだけでなく、1台で日常生活も難なくこなしてくれるモデルであることを実感した。

MINI本来の持ち味であるオンザレール感覚

そんなわけで、時速60キロ制限の一般道でも気持ちよく走れはしたが、やっぱり高速域を味わってみたいと、ICを目指すことに。

ETCゲートをくぐってから本線へ合流するまでのタイトコーナーで、MINI本来の持ち味であるオンザレール感覚が、よりビターッと路面を這うような低重心感に満ちていて、さっそくワクワクする。そのままジワリと落ち着きのある荷重移動で直線に入ると、ドカーンッと爆発的な加速フィールで一気に時速100キロへ到達。まだまだ余裕たっぷりで、思わずどこまで伸びるのか試したくなるほどだが、それを思い留めて悠々とクルージングするのもまた、楽しい。

今度は走行モードをスポーツに切り替えてみると、マルチインフォメーションのライトが真っ赤に点灯し、まさに“戦闘モード突入!”という気分。通常でも反応の鋭いアクセルペダルだが、スポーツでは少し踏むだけでさらに俊敏な反応が得られ、背中を蹴飛ばされるようなロケット加速だ。ステアリングは筋トレかと思うほど重厚な手応えを伝えてくるし、直線でもコーナーでも、さらに重心が下がったようにガッシリと路面を捉えて離さない。JCWにはスポーツサスペンションが標準で備わるが、やはりその持ち味をより濃く堪能するには、こうした高速道路やワインディングを走ってみるに限る。

今回は法定速度の範囲内に甘んじたが、最後にややオーバースピードでジャンクションのコーナーに入ってしまった時には、フロントが軽く外側に逃げてリアが少しドタバタするような挙動が見られ、ジャジャ馬な一面も隠されている気配を感じた。これはもっと高い速度域や、タイトコーナーが続く道、サーキットなどに解き放てば、もっともっと別の顔を見せてくれそうだ。

なんたって、並みいる強敵を置き去りにして、あのチュリニ峠を果敢に攻めた血統が受け継がれているのが、MINI ジョン・クーパー・ワークス・3ドアだ。それをこんな短時間の試乗で味わい尽くせるはずがない。ATではなく6MTで乗る意義も、そうした未知の顔を自分の腕で引き出し、制するためにその腕を磨き、思いのままに操った時の喜びを何倍も味わう。そんなところにあるのかもしれない。乗れば誰でも、どんな道でも心にレーシングドライバーが舞い降りる。「もっと乗りたい、もっと踏みたい」と、久々に思わせてくれる1台だった。

[レポート:まるも亜希子/Photo:小林岳夫]

MINI 3ドア ジョン・クーパー・ワークス(MINI F56 JCW)主要諸元

販売価格(消費税込み)

AT:429万円 MT:412万円

全長

3,875mm

全幅(車幅)

1,727mm

全高(車高)

1414mm

ホイールベース

2,495mm

車両重量

AT:1295kg/MT:1280kg ※欧州値

駆動方式

FF(前輪駆動)

エンジン種類

直列4気筒MINIツインパワー・ターボ

最高出力

231ps(170kW)/5200~6000rpm

最大トルク

320Nm(350※)/1250~4800rpm※オーバーブースト時

トランスミッション

6速AT/6速MT

燃費JC08モード

AT:16.6km/L MT:14.8km/L

使用燃料

無鉛プレミアムガソリン

ミニ/ミニ
ミニ ミニカタログを見る
新車価格:
315万円516万円
中古価格:
19.8万円818.2万円
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まるも 亜希子
筆者まるも 亜希子

大学卒業後、編集プロダクション株式会社エディトリアル・クリッパーに就職、自動車雑誌「ティーポ(Tipo )」の編集者として6年間勤務。2003年にフリーランスとして独立。現在は雑誌やウェブサイトの自動車関連記事に出演・寄稿している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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