注目の最新軽自動車 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
従来のイメージと一線を画す
先代モデルでは、円と直線を組み合わせたオシャレなスタイリングを採用し、女性ユーザーから大いに支持されたが、現行モデルではスズキの世界戦略車「Aスター」に由来するデザインとされ、上質で表情豊かなエクステリアを手に入れた。
2009年度のグッドデザイン賞を受賞したほどで、国内外での評価も高いようだ。
エンジンは、自然吸気の直列3気筒12バルブDOHCのみの設定で、VVT(可変バルブタイミング機構)を採用し、低速トルクの補強を図っている。
2WDで760kgという比較的軽量な車体を引っぱるには十分な動力性能を確保している。トランスミッションはグレードによって、5速MT、4速ATのほか、パレットの一部改良より導入された副変速機付きCVTが組み合わされる。
Xグレードには同CVTが与えられ、10・15モード燃費は2WD車で24.5km/Lという好数値を実現している。同CVTは幅広い変速比幅を持つのが特徴で、発進時はよりギア比を低く、高速走行時はよりギア比を高くすることで、加速性能面でも燃費面でも有利となる。
また、停車時には一時的にニュートラルとして燃費を向上させるという制御も行なう。ドライブした印象は、一般走行ではあまり気になる部分はないが、ゼロ発進や再加速時などに素早く大きくスロットルを開けると、反応がワンテンポ遅れがちで、その間に変速比の調整を図っているようだ。
ただし、ある程度車速が乗ってしまえば、副変速機の存在が気になることもなくなる。
また、同機構はもともと、もっと車体の重い車種に向けて開発されたものでもあり、動力性能面ではそれが余裕となっているようで好ましい。
フットワーク面も、スズキの最新プラットフォームの実力は侮れず、高い剛性感、サスペンションの動きの正確さ、適度に重い操舵力を持つステアリングのしっかり感など、従来のアルトのイメージと一線を画す。
13インチの大径タイヤを履き、スタビライザーも付かない足まわりながら、いたって素直で軽快に、かつしっかりと安定して走らせることができる。最小回転半径も4.2mと小さい。
背高で重いハンデを感じさせない
タントエグゼと同カスタムでは、特徴的デザインの4灯式ヘッドライトや、前後のメッキガーニッシュ、リアスポイラー、クリアレンズのリアコンビランプなどにより差別化されている。
直列3気筒DOHCエンジンは、自然吸気仕様とターボが選べ、最上級のRSグレードには、最高出力47kW[64ps]/6,000rpm、最大トルク103Nm[10.5kgm]/3,000rpmという軽自動車最強のスペックを誇るターボエンジンが搭載され、ダイハツ独自のインプットリダクション方式CVTが組み合わされる。
車重はカスタムRSで920kgと、900kgを超えている。今回の組み合わせの中では、単純に横比較はできないところだが、同CVTはエンジン回転が先行する感覚はあるものの、踏み込んだときのタイムラグは小さめ。
レスポンスがよく低速トルク特性に優れるエンジンの恩恵もあって、力強い加速感を得ることができる。ゼロ発進でスッと前に進むときの感覚も、今回の中でもっともスムーズだ。
車体は重く、背も高いため走りの面では不利であるのは否めないところだが、ベースのタントに比べると約60kg軽いためか加速もよく、比較的ロールも小さく抑えられていて、ミニバン系のパッケージングの軽自動車らしからぬスポーティな走り味を身につけている。
乗り心地はやや固めながら、安定感は高く、長時間ドライブしても疲労感の小さそうな乗り味を身につけている。パワートレイン系の静粛性は高いが、165/55R15サイズの高性能タイヤを履くためか、むしろ相対的にロードノイズが耳に入りやすいことと、最小回転半径が軽自動車としては大きめの4.7mとなっている点はやや気になる。
一部改良で若干改善された走り
スタンダードの「G」、上級の「パステル」、スポーティな「ディーバ」と、3つの個性がラインアップされたライフの中で、ディーバは大開口のフロントマスクやエアロパーツの設定、14インチの太いスポークタイプのホイールなど、明快にスポーティ色をアピールしている。
2009年秋の一部改良で、パステルとディーバにハーフシェイド・フロントウィンドウが、さらにディーバには、テールゲートスポイラー、マイクロアンテナが標準装備された。
パワートレインは、ライフ全モデルに4速ATが組み合わされ、ディーバとパステルでは、エンジンは自然吸気とターボが選べる。
直列3気筒SOHCのi-DSIターボエンジンは、最高出力47kW[64ps]/6,000rpm、最大トルク93Nm[9.5kgm]/4,000rpmというスペック。車重はディーバターボで860~870kgとなる。
4速ATというと、まるでATは時代遅れのような言われ方をしているところだが、ドライブしてみると、ATのほうが人間の感覚に合っていることをあらためて思い知る。期待値に対してのトルクの出方がリニアなのだ。
ライフディーバターボでは、常用域でのトルクアップが図られたエンジンに、1~2速がローレシオ化されたATにより、市街地での機動性も高く、ターボらしい盛り上がり感のある加速フィールを楽しむことができる。10・15モード燃費は、いずれもFF車で、自然吸気で21km/L、ターボで19.6km/Lと、カタログ値の燃費では、同クラスのCVT搭載車に比べるとやや見劣りするが、実用燃費は悪くない。
2009年秋の一部改良で、電動パワステの中高速領域の特性が見直された。これにより、これまでやや安定感に欠けたステアリングフィールが改善され、いくぶん乗りやすくなった。
反面、ストロークよりも踏力でコントロールするブレーキは、踏み始めの食いつき感が薄く、あるとこから急に利き始める印象で、スポーティではあるが、かえってカックンブレーキとなりやすいところが惜しまれる。
総評
キャラクターが異なる3台だからこそ、それぞれがどうであるかをお伝えしたいところだが、つまるところアルトがもっとも気になる部分が小さかった。シンプル・イズ・ベストといえるだろう。
タントエグゼカスタムは、重心の高さと車重の大きさが走りに影響していて、それを努力して抑えているとはいえ、クルマとしての素性の部分は拭えないものはある。
ライフは、一部改良前よりも改善されていることが確認できた。4速ATであることがマイナスイメージに捉えられがちかもしれないが、実際にはCVTよりも良い点もたくさんある。
この記事にコメントする