トヨタ クラウン新旧比較/日本が誇る高級セダン15回目の進化とは?

保守的で革新派「トヨタ クラウン」の軌跡

トヨタ クラウンが大きく変わった。クルマに興味がある人の多くが、通算15代目となる新型にそんな思いを抱いているのではないだろうか。でもその考えの根本にあるのは、クラウンは保守本流の和製高級車というイメージではないかとも考えている。

実はクラウンには革新派という側面もある。1955年に誕生した初代は、当時多くの自動車メーカーが欧米車のノックダウン生産を行っていた中、純国産の高級乗用車として送り出されたからだ。

次の2代目は日本車で初めてV型8気筒エンジンを搭載。3代目では2ドアハードトップや白いボディカラーを加え、パーソナルユースにいち早く応えた。車体前後を思い切り絞り込んだ4代目は「クジラ」という愛称で話題になった。

最近では2003年に発表された12代目が「ゼロクラウン」というキャッチコピーとともに、プラットフォームやエンジンを一新して走りのレベルを大きく引き上げ、先代幅にアップ。そして先代の14代目ではバンパーの下まで達する大型グリルを採用するとともに、ピンクのボディカラーを投入して注目された。

それでもロングセラーの宿命で、ユーザーの平均年齢は少しずつ上昇し、今では約65歳になったという。さらにミニバンやSUV、輸入車の人気に影響されて、保有台数は「ゼロクラウン」の半分ぐらいになっている。

【画像】生まれ変わったクラウンのデザインの違いをチェック!

クラウン新旧比較/刷新されたグレード構成

▲写真左より先代クラウンロイヤル、クラウンアスリート、クラウンマジェスタ

新型が革新を目指したのは、このままではいけないというトヨタの危機感の表れだろう。何よりも驚いたのは、ロイヤルサルーン/アスリート/マジェスタという3つのシリーズをひとつにまとめたことだ。このうちロイヤルサルーンは、1974年発表の5代目から使われていた由緒ある名前なのだから、大胆な決断である。

一方でアスリートに相当するスポーティモデルとしてRSを設定した。といってもレーシングスポーツの略ではない。クラウンは伝統的に形式名にSを使っており、初代はR型エンジンを積んでいたのでRS系と呼ばれた。意味は違えどその名を現在に蘇らせたわけだ。

このRS仕様には上級グレードとしてRSアドバンスが用意される。一方の標準仕様は上からG、S、ビジネスユース向けのBの3車種を基本に、快適装備をプラスしたS・Cパッケージ、ショーファードリブンとしても使えそうなGエグゼクティブがある。

ちなみに先代型は、ロイヤルシリーズがロイヤルサルーンG、ロイヤルサルーン、ロイヤルの3本立てで、アスリートは上からG、S、ベースモデルが用意されていた。こうしてみると新型のラインナップは先代型のアスリートに近い。

クラウン新旧比較/次世代へと進化したエンジン

3種類用意されたパワーユニットも思い切っている。2代目の途中から半世紀以上にわたり受け継がれてきた6気筒ガソリンエンジンが消えたのだ。レクサス LCやLSに積まれているものと基本的に同じ3.5リッター のV型6気筒ハイブリッド、カムリにも積まれる2.5リッター直列4気筒ハイブリッド、先代の途中で追加した2リッター ガソリンターボエンジンとなる。

先代型は3.5リッターV6ハイブリッドがマジェスタ専用で、それ以外に2.5リッターがV6ガソリンと4気筒ハイブリッド、そして途中でアスリートに加わった2リッター4気筒ターボがあった。ガソリンV6が消えただけでなく、2つのハイブリッドシステムは新世代にスイッチしていることになる。

燃費は2.5リッターハイブリッドのJC08モード最高値で比較すると、先代の23.2km/Lから24km/Lにやや良くなっている。先代ロイヤルサルーンGでは1680kgだった車両重量が新型Gでは1750kgになっていることを考えると優秀だ。

クラウン新旧比較/伸びやかでエレガントな外観

▲左:新型クラウン / 右:先代クラウンアスリート

発表前にテストコースで開催された試乗会では、新旧比較もできた。新型のスタイリングは、昨年秋の東京モーターショー2017で「クラウンコンセプト」としてお披露目されているものと基本的に同じで、なによりもクラウンの歴史上初めて6ライトウィンドウを採用したことが目立つ。

真横から見ると、リアまでほぼ水平にすっと伸びたキャラクターラインの上に、ゆったりした弧を描くルーフラインが重なって、典型的な3ボックスだった先代型と比べると、かなりエレガントになった。

先代型で話題になった大きなフロントグリルは上下に薄くなり、シャープになったヘッドランプとの一体感が増した印象。リアコンビランプがこのヘッドランプと同じモチーフになっていることも目を引く。欧州車ではおなじみのデザインテクニックで、クルマ全体としての統一感が高まった。

日本のユーザーのことを考えたボディサイズ

ボディサイズは全長が先代型アスリートの4895mmから4910mmに、ホイールベースは2850mmから2920mmになって、後者についてはマジェスタの2925mmに近い。マジェスタの全長は4970mmだったから、前後のオーバーハングを短縮したことが分かる。全高はアスリートとマジェスタの中間となる1455mmだ。

注目したいのは全幅は従来どおり1800mmとしていること。小回り性能を示す最小回転半径は5.3mで先代型と同等だ。この点では日本の道と日本のユーザーのことを大事に考えている。

クラウン新旧比較/人にやさしく繋がるクルマへ

▲左:新型クラウン / 右:先代クラウンアスリート

新型のインテリアでまず気付くのは、インパネが低く、クラウンとしてはかなり開放的であること。ドアトリムへのつながりも従来はなかった造形で、包まれ感もアップしている。スイッチが整理され、センターの上下2段のディスプレイが見やすくなったことにも好感を抱いた。

ところでこのディスプレイは、トヨタ自身がこの新型クラウンを「初代コネクティッドカー」と呼んでいることでお分かりのとおり、情報通信技術を駆使した便利機能を扱うこともできる。新型クラウン全車がDCMと呼ばれる車載通信機を標準装備しており、全車で「T-Connect」と呼ばれるテレマティクスサービスを享受できるのだ。

まずドライバー向けでは「ヘルプネット」「eケア」といった安全・安心をサポートするサービスに加え、「オペレーターサービス」 「エージェント」などカーライフを快適にするためのサービスも提供。ドアロックをスマートフォンで操作できることに加え、現時点での航続可能距離やクルマの健康状態などが確認でき、安全運転やエコな運転を診断する機能もある。

社会・街とも繋がるクルマへ

社会とつながる機能もある。2011年の東日本大震災で初めて提供し、2018年6月に発生した大阪北部地震でも展開した「通れた道マップ」がそれで、DCM搭載車両などから収集した情報に基づく通行実績をウェブサイトで無料公開し、災害地域での移動に役立てることができる。

「LINEマイカーアカウント」というサービスもある。自分のクルマを「友だち」として追加し、ナビの目的地登録やガソリンの残量、天気予報の確認などが可能になるというものだ。本格的なSNS対応の第一歩になるかもしれない。

さらに新型クラウンでは「街とつながる」機能も重視しているが、こちらは先代型の途中で設定したITS Connectの継承となっている。ITS専用周波数を活用して、車載センサーでは捉えきれない見通しの悪い交差点などでの情報を通信でドライバーに知らせ、安全運転を支援するというものだ。

クラウンらしさを残した車内空間

センターのエアコンルーバーの首振り機能のような、いかにもクラウンらしい仕掛けとしてはカップホルダーがある。センターコンソールの2つの丸い枠がそれで、1.9秒という上下動の時間は実験を繰り返して決めたという。リッドに滑り止め加工を施し、片手でキャップを開け閉めできることなど、日本ならではのおもてなし文化が息づいていると思った。

後席は身長170cmの筆者であればゆったり過ごせる。頭上空間はスロープしたルーフラインのために余裕は少なくなっているけれど問題なく、リアドアの開口部も十分だと感じた。

縦置きエンジンのトヨタ車としては初のTNGAプラットフォームは、ひと足先にモデルチェンジしたレクサス LS用をベースに幅を狭めたものだ。

クラウン新旧比較/正常進化した安全性と乗り心地

▲左:新型クラウン / 右:先代クラウンマジェスタ

新旧を乗り比べると、まず感じるのは正確でシャープなステアリング。先代型のおっとり感に驚くほどだった。乗り心地はRS仕様はややゴツゴツ感があったものの、標準型はクラウンらしいまろやかさと2018年のセダンらしい安定感が同居している。

安全装備ではトヨタセーフティセンスの第2世代を標準装備し、駐車場では壁だけでなく歩行者や他車も感知して自動ブレーキなどが作動するパーキングブレーキサポートも搭載した。先代型がデビューしたときはトヨタセーフティセンス自体が存在していなかったのだから、時代の流れの速さを痛感する。

クラウン新旧比較/1番人気は2.5ハイブリッド

ウェブサイトに掲載されている2018年6月28日時点での工場出荷時期目処は、ガソリンターボが1〜2か月、3.5ハイブリッドが2〜3か月、2.5ハイブリッドが3〜4か月程度となっている。

どのスペックが人気か理解しやすいが、最初に受注を入れたユーザーの多くは既存ユーザーではないかという気もする。今回の革新の評価は、今後の推移が教えてくれるだろう。

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森口 将之
筆者森口 将之

1962年東京都生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。自動車専門誌の編集部を経て1993年フリーに。各種雑誌、インターネット、ラジオなどのメディアで活動。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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