VW ゴルフ、BMW 3シリーズ……。巨大化・肥大化するクルマたち

  • 筆者: 永田 トモオ

昔の名前で出ています?!

2019年7月、ビッグマイナーチェンジでインフィニティからGT-R顔にお色直ししたV37型スカイラインを見て、カッコイイと思った。スポーツセダンとして大き過ぎないクルマだということが分かって「これなら往年のスカイラインファンもまた乗りに来るかな」と思ったのだ。

>>■代替わりして大きくなってしまったクルマたち[フォトギャラリー]

同じクルマをずっと乗り継ぐことの難しい時代だ。

何のことかというと、世界的な乗用車の巨大化のハナシ。

ちょっと前までは、何世代も同じ車種を乗り継ぐオーナーは珍しくなかったし、ボクの身のまわりにも何人かいた。ところが最近のクルマは、2~3世代で上位車種に迫るほど大きくなってしまうから、オーナーの方も乗り継ぐのを考えてしまう。

VW ゴルフもBMW 3シリーズも大きくなった

具体的に例を挙げると、VW ゴルフとBMW 3シリーズといった、往年の大ヒット輸入車などは典型的だ。

1997年発売、3代前のゴルフ4の全長×全幅は4,155mm×1,735mmに対して、現行型ゴルフ7の全長×全幅は4,265mm×1,800mm。

そして1998年発売、3代前の3シリーズE46型320iは全長×全幅が4,470mm×1,740mmで、現行G20型320iは全長×全幅が4,715mm×1,825mmと、どちらもひとまわり以上大きくなっている。

ちなみに、ゴルフ4のボディサイズは、現行の6代目VW ポロとほぼ同じなのだから、20年近くの間があるとはいえポロも育ったものだ。

1990年代の末に巨大化が始まった

巨大化の始まりは、異論もあると思うが、1990年代の末としておこう。クルマの設計・生産の合理化のため、プラットホームの共用化が世界的に加速し始めたころから、乗用車は着実に巨大化し続けている。フォルクスワーゲンなどは、現在のMQBプラットホームで、ポロから最上級セダンのアルテオンまで作っているのだから凄い。プラットホームが共通なのだから、共用車種が揃って巨大化するのも当たり前のハナシといえる。

とはいえ、ボクは巨大化はダメといっているワケではない。ハンドリングや安全性を追求するにも、サイズアップは必要なことだと思うし、なによりゴルフも3シリーズも、文句ナシに素晴らしいクルマだ。現在でもハッチバックやセダンのベンチマークであることに変わりはないのだ。

ただ、そこでさらに差別化のために、豪華さを求めていく傾向には、ちょっと考えさせられてしまう。もっともそれは、設計よりも販売戦略に負うところが大きいのだろうけど。

車種整理で再編成を行った国産車勢

では国産車はどうか?

ゴルフや3シリーズに近いクラスは、消滅したモデルがけっこう多い。象徴的なのは、トヨタ コロナと日産 ブルーバードの伝統のライバルだ。コロナは、1996年にコロナプレミオと改名して、その世代限りで消滅。ブルーバードも、2000年にブルーバード・シルフィと改名すると、2012年にブルーバードの名前が消えて、ただのシルフィになってしまう。

コロナもブルーバードも、巨大化はせずに車種整理の流れに呑まれたカタチだ。そして、ハッチバックの代表選手だったシビックは、セダンがメインになり、2015年までの数年間、日本仕様のシビック自体が消えていた。シビックも、ゴルフと同じ方向には向かわなかったのだ。

一方、名前の残っているセダンといえば、トヨタ クラウンやスカイラインなど、もともとスペシャリティ性の強いクルマだ。特にこの2台は、日本流の緩やかな巨大化で、限りなくブランドに近い車名として残ったのだった。

その代わりに国産メーカーが行ったのは、サイズ別のニーズに合わせた新車の開発だ。既成の車種を巨大化して名前をつなぐよりも、新型車を増やした方が世界戦略の面からも合理的。国産メーカーは、共通プラットホームを車種の再編成にも利用したわけだ。

この流れは、クルマの名前にこだわるクルマ好きにとっては、なかなか悩ましいことだと思う。しかし、逆に考えれば、名前の呪縛がない柔軟なクルマ作りができることになったともいえる。今やクルマは、車名よりもサイズや内容で選ぶ時代なのだ。

[筆者:永田 トモオ]

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樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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