日産 新型スカイライン新型車解説|往年の400Rも復活! プロパイロットを大幅アップデートで抗戦

一部道路では手放し運転が可能

現在、国内で好調な売れ行きの日産車はコンパクトカーのノートや軽自動車のデイズだが、なんといっても伝統的な主力車種はやっぱりスカイラインなのだ。60年以上の伝統があり、今でもスポーツセダンの代表に位置付けられている。

そんなスカイラインが2019年7月16日に、ビッグマイナーチェンジを実施した。注目なのは、運転支援技術の“プロパイロット2.0”を搭載したことだ。プロパイロット2.0の詳細はコチラに掲載したが、セレナやノートなどに採用されるプロパイロットを進化させたモノだ。

従来のプロパイロットでは操舵の支援を行う場合、ドライバーがステアリングホイールを保持することが条件であった。保持しないと警報が発せられ、それでも反応しないと操舵支援を打ち切ってしまっていた。

最新モデルでは高速道路の本線を走行中であれば、“手離し走行”が可能になった。アクセルとブレーキ操作は従来型と同じく、全車速追従型クルーズコントロールによって操作される。

従ってプロパイロット2.0が正常に作動する状態であれば、ドライバーはステアリングホイールを保持せず、なおかつアクセル/ブレーキペダルの操作もクルマに任せられるのだ。

ナビと連動で自動運転? SF映画で出てくるような未来に一歩近づいた

出発する時にカーナビで目的地を設定すれば、高速道路の本線に乗り入れた段階で、ナビ連動ルート走行を開始する。ルート走行中に分岐が近づいたり、先行車に追い付いた時は、クルマがドライバーに車線変更などを提案する。ドライバーがステアリングホイールを保持してスイッチを操作することで承認すれば、車線変更を開始するのだ。この時には手離しはできないが、クルマが業況を判断して提案してくれるからドライバーは快適そのもの。車線変更などを終了すれば、再び手離し運転に戻れる。

メルセデス・ベンツから脱却? ターボエンジンも日産製に

プロパイロット2.0に次ぐ新型スカイラインの注目点として、ターボエンジンの変更が挙げられる。従来はメルセデス・ベンツ製の直列4気筒2リッターターボだったが、これを廃止して、V型6気筒3リッターツインターボを新たに採用する。このエンジンは北米などで販売されるインフィニティQ50(スカイラインの海外仕様)に、先行搭載されているモノだ。

ツインターボの動力性能は、最高出力が304ps/6400rpm、最大トルクは40.8kg-m/1600~5200rpmになる。ターボを装着しないノーマルエンジンに当てはめると、4リッターに相当する性能だ。

ちなみに従来の2リッターターボは、211ps/5500回転rpm・35.7kg-m/1250~3500rpmだったから、最高出力は100ps近く向上した。

そして3リッターターボには、400Rというスポーティグレードも用意され、この性能は405ps/4800rpm・48.4kg-m/1600~5200rpmまで高められている。

伝統と最新のコラボ! 往年の丸テールも復活

新型スカイラインは、ビッグマイナーチェンジとあって外観も変更された。今の日産車に共通するVモーショングリルが備わり、エンブレムは従来のインフィニティから日産に変更されている。

内装では質感を高め、ハイブリッドには日産車として国内初採用となるカラーヘッドアップディスプレイ、7インチアドバンスドドライブアシストディスプレイなどが装着される。

走行安定性と操舵感も改善された。ステアリングホイールの動きを電気信号に変換して操舵システムに伝えるダイレクトアダプティブステアリングは、切り始めた時の反応を向上させ、ドライバーが狙った走行ラインを走りやすくした。以前の神経質な操舵感覚も改めている。以前はこのシステムはハイブリッド以外ではオプション扱いだったが、新型スカイラインからは全車に標準装着となった。ショックアブソーバーの減衰力を制御するインテリジェントダイナミックサスペンションも、ターボモデルの上級グレードに採用されている。

急病でも安心! クルマがSOSコールしてくれる

ステアリングホイールとペダルの操作が支援されると、自動運転のように受け取られるが、あくまでもコレは運転支援機能だ。開発者によると「運転支援を続けられるとは限らず、交通環境の変化に応じて、操作をドライバーに戻す場面がある」という。

そうなるとドライバーは、常に通常の運転が行える準備をしておかなければならない。そこでプロパイロット2.0を搭載したハイブリッドモデルは、ドライバーを常時モニタリング。脇見をしたり、居眠りなどをすると警報を発するのだ。数回警報しても反応がない時は、ハザードランプを点滅させて、車両を自動的に停止させる。そして新たに採用されたコクティッド(通信機能)を使ったSOSコール機能が作動して、オペレーターがドライバーに呼びかけを行う。

従来のプロパイロットでは、ステアリングホイールが保持されない場合、警報を発してもドライバーが反応にしないと制御を終了していたが、プロパイロット2.0ではドライバーに緊急事態が発生したと判断して、車両の停止とドライバーの救護措置を取る。これは大きな違いだ。

以上のように運転支援は大幅に進化したが、安全性を高める機能には目立った違いがなく、基本性能はプロパイロットに準じるという。

要改善! ターボモデルの衝突被害軽減ブレーキは人を検知できない

ターボモデルは、衝突被害軽減ブレーキが装着される歩行者検知機能を搭載していない。従って新型スカイラインのターボエンジン搭載車の安全性能は、デイズやノートに劣るというワケ。運転支援機能をプロパイロット2.0に進化させる開発力があるなら、それ以前にターボエンジン搭載車の歩行者検知を先に行うべきだと筆者は考える。最近、多く報道される事故の状況など考えると、誰にでも分かる当たり前のことなのにもかかわらずだ。

ベストバイはGT タイプPだ

新型スカイラインのグレード構成は、ターボに400Rを加えたことを除くと、基本的には従来と同じだ。駆動方式は後輪駆動とこれをベースにしたハイブリッドで、後者には4WDも設定される。

エンジンは前述のように2種類で、2WDの価格帯はハイブリッドが547万4520円~604万8000円、3リッターターボは481万8960円~552万3120円になる。

新型スカイラインの機能と価格のバランスが優れた推奨グレードはハイブリッド、ターボともにGTタイプPだ。ハイブリッドのGT タイプPは571万1040円で従来型が522万3960円だから、約49万円値上げされた。この金額がプロパイロット2.0、ドライバーモニター、カラーヘッドアップディスプレイなどの対価と考えられる。49万円は少ない金額ではないが、プロパイロット2.0に魅力を感じるユーザーであれば納得できると範囲だと思う。

3リッターターボのGTタイプPは割安で、455万4360円だ。従来型が443万3400円だから、約13万円の値上げに収まる。

従来のダイレクトアダプティブステアリングも、一部グレードでは32万4000円のオプションだったが、新型スカイラインのハイブリッドでは標準装着となった。約13万円の値上げと差し引きしても、実質的に40万円くらい値下げされていると考えて良い。GTタイプP同士で比較して、ターボの価格はハイブリッドよりも116万円ほど安いから、ターボを選ぶユーザーも多いだろう。

世間のニーズに答えるべき!

そうなると、先に触れた歩行者を検知できない衝突被害軽減ブレーキが問題になる。日本では歩行者が犠牲になる交通事故が頻発しているから、早急に歩行者検知を可能にしなければならない。

今回のマイナーチェンジで、前述のようにフロントグリルなどのエンブレムをインフィニティから日産に変更した。現行型が登場した時は、世界に通用する先進技術を搭載するという理由でインフィニティのエンブレムを装着したが、新型では改めてスカイラインが日産の技術の象徴であることに着目して日産に戻したという。今後は緊急自動ブレーキの歩行者検知などを改善して、もっと日本のユーザーと交通環境に歩み寄って欲しい。そうなれば現行型スカイラインの売れ行きが、最盛期の1.6%(1973年:15万7598台/2018年:2576台)という不名誉な状況も、好転し始めるに違いない。

[筆者:渡辺 陽一郎/撮影:MOTA編集部]

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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