日産 新型ノートe-POWER試乗レポート|e-POWERが巻き起こす、大きなパラダイムシフトとは(3/4)
- 筆者: 五味 康隆
- カメラマン:小林岳夫
エンジンのいちばん美味しい領域に狙いを定めたe-POWER
電動ドライブの気持ち良さに加えて、効率の良さ、燃費の良さ、優れた経済性と環境性能・・・これらも求めて、日産はこのe-POWERをノートに導入した。
ノート e-POWERの燃費は、横浜市内など都市部を中心とした試乗で確認した限りで1リッターあたり19km前後。状況によっては20km/Lも十分に超えてくるはずだ。
これだけの好燃費を叩き出すのも当然で、発電機として機能するエンジンを、基本は効率に優れる得意な回転域でしか使わないからだ。
そもそもエンジンは、アイドル回転からレッドゾーンまで壊れずに使えるが、下から上まで全域が得意な訳ではない。最も得意な領域は、一般的に2000~2500回転辺りにある。この領域で定常的に使用すると燃費は極上になっていくのだが、まさにノート e-POWERのシリーズハイブリッドではそれを積極的に行える。
1.5kWhという、ハイブリッドとしてはほんの少しだけ大きいバッテリーを使い、積極的に走る。その蓄電量が減ると、エンジンを回して積極的にバッテリーの健康状態を戻そうとする。
発電用エンジンが回ってもドライバーに違和感を与えにくい工夫も
試乗した限り、その発電のエンジン稼働を走行振動や走行音が小さい低速時には極力避けて、走行振動などがある程度生じエンジンが回っても気にならない時速40km以上の状態で積極的に充電させる。しかも発電が行われる2500回転付近のエンジン回転数で発生する振動や音対策を重点的に行ったのだろう。エンジンが回っている感覚が少なく、だからこそ電気モーターの滑らかで静かな、気持ちよい滑走感とも言える爽快さまでが得られるというカラクリだ。
ちなみにエンジンを稼働させる目的は、発電の他にもある。それが暖房のため。
発電のための最高効率は2500回転付近だが、エンジンが最も熱を発生する発熱効率は、回転振動が発生しやすい2000回転を大きく下回る領域にある。だからこそ、寒い日の走り出しや信号待ちなどでは、若干エンジンの回転振動があることも伝えておこう。逆を言えば街中で走行している限り、それ以外はとても上質で快適であり、高級な乗り味が得られるというわけだ。
優等生のe-POWERにも弱点はある
しかし優等生のe-POWERにだって弱点はある。
高速道路を積極的に使う方や飛ばす方など、走行ペースが早い方は一つ心得ておくとよい。ガソリンのノートと比べると静かだが、街中で感じていたほどの静かさはなくなる。
背景としては、走行抵抗が増す高速走行では電気モーターを力強く動かすため、相応の電力が必要になる。するとバッテリーからだけでは足らず、その場でエンジンが積極的に回し発電した電力も追加されながら力強く高速走行する。だからこそ、強く加速しようとするほどに大量の電気を直接駆動モーターへ供給するため、エンジンはうなり出す。
さらに言えばモーターは高回転領域では発生トルクが落ち、加速の伸び感も鈍くなり、エネルギー効率も悪化する。滑らかに加速自体は続くが、エンジンがうなり頑張っている感が強くなる。そんな電動モーターの長所と短所を踏まえたうえで、日産では多くの台数を売り普及させたい狙いで、統計上で街中走行率が7割を占めるコンパクトカーのノートに、e-POWERをまず搭載してきたわけだ。
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