マツダ ロードスター(2018年改良モデル)試乗│日々の感謝や笑顔…そんな優しさや愛の積み重ねのような改良

  • 筆者: 伊藤 梓
  • カメラマン:茂呂 幸正

よりロードスターの魅力を幅広く知ってもらいたいというマツダの意思が伝わってくる

「マツダって、小さい改良をちょこちょこしているけど、何が変わったのかよくわからない」。そう思う方は多いのではないだろうか?他メーカーのマイナーチェンジといえば、デザイン変更などで顔つきが変わることで、いかにも「変わりました」というのが目に見えるので、マツダのマイナーチェンジは余計に分かりにくく感じるのかもしれない。

実はマツダでは「マイナーチェンジ」という言葉を使わず「商品改良」と呼んでいて、そこには大きな節目を待つのではなく、良い技術ができたらすぐ反映させてつねに最善のものを提供し続けようという意図があるという。

今回2018年6月に実施されたロードスターの商品改良も同じように、目先の分かりやすさでユーザーを取り込もうとするのではなく、しっかりとした技術を搭載することで、よりロードスターの魅力を幅広く知ってもらいたいというマツダの意思が伝わってくるものだった。

2リッターのRFはパワーを誇示するものではなく、「大人が嗜むスポーツカー」

今回の商品改良の情報を見たときに、多くの人がまずパッと目を惹かれるのは、日本ではハードトップモデルのRFに搭載される2リッターエンジンのパワーアップだろう。商品改良後は、従来モデルと比較して、158ps/200Nm→184ps/205Nmとなり、最高回転数は6800rpm→7500rpmに向上した。

私はソフトトップのロードスター(1.5リッター)を愛車にしているので、まずRFに乗り込んで改めて感じたのは、エンジンの変化よりもソフトトップとハードトップモデルの性格の違いだった。乗り味がしっとりとしていて、クルマ全体に重厚感がある。

試乗した当日は運悪く台風が上陸していて雨風が強く打ちつけていたが、音も静かで風に振られることもなくRFの車内はいたって平穏だった。ソフトトップに比べると、やっぱりRFは「大人が嗜むスポーツカー」。

試乗車のグレードがVSのATモデルなので余計にそう感じたのかもしれないが、スピードを上げてワインディングを楽しむよりも、ゆったりとしたグランドツーリングがその性格に合っている気がする。

2リッターエンジンも、そもそもパワーを誇示するものではなく、ゆとりある走りを演出するものであるはずなので、私は改良前のRFに乗ったとき「このエンジンでも充分だ」と思ったのが記憶に残っている。

もしロードスターにスポーティさを求めるなら、RFではなく、車体が軽くて誰でもくるくると走り回れるソフトトップの方がその期待に応えてくれると思うので、私は断然そちらをオススメしたい。

今回の2リッターエンジンの改良は、これまでのRFの基本的な性格を大切にしているように思えた。もっと分かりやすく「すごくパワーアップしてるでしょ!」というチューニングもできたはずだけれど、あえてそうしていない。日常でよく使うような4000〜5000rpm以下の低回転域では大きなパワーアップを感じず、とはいえ過不足なくスイスイ運転できるのはこれまでと同じ。なので、RFに毎日乗るワクワクやグランドツーリングを望むなら、改良前でも後でも大きな差はなく楽しめるはずだ。

それでもこのスペックに萌えるのもわかる

ただ、RFでも峠を走り回りたい!とか、エンジンをいっぱい回したい!と考える人にとっては、改良後のRFはさらに魅力的に映るだろう。アクセルペダルを踏み込んでエンジンを高回転まで回すと、どんどん伸びていく加速感があって、「ああ、好きな人にはたまらないだろうなぁ」と思った。サイレンサーも改良されているので、回すほどに良い音が奏でられるのも心をくすぐられるポイントだろう。

ただ、レースにも出られるモータースポーツベースグレードのNR-Aに乗っている私でも、サーキット以外は5000回転以上回すことはないので、一体どういう人が何のために使うのかなと一瞬冷静に思うものの、やはり男性なら「馬力/トルクアップ」や「最高回転数の引き上げ」というスペックには萌えるのだろう……。その要望に対して、RFの本来の性格を曲げることなく上手く実現しているのが、新型RFだと思った。

ソフトトップモデルは、小さい違いの積み重ねでクルマを一段階上に引き上げた

いっぽうで、RF同様の安全装備やテレスコピックの採用がメインだと思っていたソフトトップモデルが、中身もしっかりと進化を遂げていたことに驚いた。乗ってすぐ「え?!なにこれ!」と思わず声に出してしまったほど。

おそらくオーナーでなければ分からないような小さい違いなのかもしれないが、その小さい違いの積み重ねがクルマを一段階上に引き上げているように感じた。これまでより軽やかで滑らかに回るエンジン、そして端々に見え隠れしていたやんちゃだった部分が収まって、ちょっといい子になっているような……。

よくよく観察してみると、発進やシフトアップ/ダウンした際に、いつもよりほんの少しフッと後押しされているような感覚があって、引っかかりなくスムーズに加速するし、MT操作がさらに小気味よく楽しくなっていた。

1速から2速へのシフト操作では車体がガクッとならなくなったし、これまでエアコンをつけたときには、とくに回転数やシフト操作に気を使っていたのが、何も考えずスムーズにシフト操作できるようになっている。

いつもロードスターには乗っているけど、やっぱり気持ちいい!楽しい!改めてロードスターの良さを実感したような気がした。私もそこまでシフト操作が下手な方ではないと思うが、きちんとした作法をしないとクルマが嫌がるときがあったので、この小さな変化はさらにクルマとの一体感を生むようで嬉しくなった。

今回の改良は、日々の感謝や笑顔で迎えてもらうような、そんな優しさや愛の積み重ね

後ほどエンジニアさんにお話を聞いてみると、やはり細かいところに改良を加えたのだという。

1.5リッターエンジンに関しては、微量ではあるものの全域でのトルクアップ(+2Nm〜7Nm)、それに加えて新型2リッターエンジンにも採用している燃料の微粒子化と燃料の“三度噴き”を適用。これは燃焼を高効率化するためのもので、フィーリングについて狙っていたわけではないというが、燃料が以前より均一に混ざってきれいに燃えることで、ピストンの摩擦や振動が低減されてまっすぐ押し込まれるため、あの軽やかで滑らかなフィールを生んでいるらしい。

また、コンピューターを細かくキャリブレーションすることで、シフト操作についても前述したような違和感のない操作感につながっているそうだ。

ここまで読んでも結局「地味な改良」と思う人もいるかもしれない。

でもロードスターを好きな私にとっては、とっても嬉しい改良だった。ロードスターはスポーツカーであっても、毎日をともに暮らしたいクルマなのだ。

たとえば「大幅にパワーアップしました!」とか、「装備を豪華にしました!」というのは、日常に置き換えると誕生日プレゼントのようなものだと思う。その一日だけは、美しいお花や綺麗なアクセサリーを贈ってもらえるかもしれない。でも、喜びはその一瞬だけのこと。

毎日暮らすなかで心をあたためるのは、日々「ありがとう」と感謝してもらえたり、家へ帰ってきたら「おかえりなさい、お疲れさま」と笑顔で迎えてもらうような、そんななんでもないことの積み重ねではないだろうか。

今回のロードスターの改良はそんな優しさや愛を感じて、これからもロードスターにはこうであってほしいと思った。

[Text:伊藤 梓/Photo:茂呂 幸正]

マツダ ロードスターRFの主要スペック

車種名マツダ ロードスターRF

全長

3915mm

全幅(車幅)

1735mm

全高(車高)

1245mm

ホイールベース

2310mm

車両重量

AT:1130kg/MT:1100kg

乗車定員

2人

エンジン種類

水冷直列4気筒DOHC16バルブ ガソリン直噴エンジン

排気量

1997cc

最高出力

135kW(184ps)/7000rpm

最大トルク

205N・m(20.9kgf・m)/4000rpm

使用燃料

無鉛プレミアムガソリン

トランスミッション

6EC-AT/SKYACTIV-MT 6MT

駆動方式

2WD(FR)

価格(消費税込)

336万9600円~381万2400円

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伊藤 梓
筆者伊藤 梓

グラフィックデザイナー時代にミニカーの商品を担当するようになってから、どっぷりと車に魅了されるように。「こんなに人を惹きつける車というものをもっとたくさんの方に知ってほしい」と、2014年に自動車雑誌の編集者へと転身。2018年に、活動の幅を広げるために独立した。これまでの経験を活かし、自動車関係のライターのほか、イラストレーターとしても活動中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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