2021年にヒットした新型「ホンダ ヴェゼル」、成功の秘密は洗練さを増した“エレガントなキャラクター”にあり

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2021年にホンダが発売した新型モデルは、わずかに2つ。4月にフルモデルチェンジしたBセグメント・コンパクトSUVの新型「ヴェゼル」と、8月の新型「シビック」(5ドアハッチバック)だ。しかし、残念ながら「シビック」の属するセダン・5ドアハッチバック系ジャンルは、日本市場では、さっぱり売れなくなっている。そのためホンダとして絶対に売れてほしいのが「ヴェゼル」だ。今回は、そんな新型「ヴェゼル」の売れ行きを考察してみたい。

目次[開く][閉じる]
  1. 日本市場を支える重要な役割を果たしてきた初代ヴェゼル
  2. 先代の美点だった室内の広さはそのままに、新型ではハイブリッドシステムも大きく進化
  3. 先代ヴェゼルと較べ、新型はおよそ2倍の売れ行きとなった
  4. 新型ヴェゼルは、先代の美点を伸ばしながらネガをつぶし、洗練度を高めた

日本市場を支える重要な役割を果たしてきた初代ヴェゼル

まず、ホンダにとって「ヴェゼル」は、日本市場を支える非常に重要なモデルだ。ホンダは数多くの乗用車のラインナップを揃えているが、近年のところ実際にヒットしているのは、軽自動車の「N-BOX」と、コンパクトカーの「フィット」、コンパクトミニバンの「フリード」、ミニバンの「ステップワゴン」、そしてヴェゼルの5車種だ。

この5車種のうち、ステップワゴンは2022年春のフルモデルチェンジが予告されており、まさにモデル末期。フリードは2016年9月のフルモデルチェンジで、フレッシュなわけではない。一方、フィットは2020年2月にフルモデルチェンジをしている。つまり、登録車でいえば4車種のうち2つが古いモデルとなり、結果的にフィットとヴェゼルの奮闘が期待される状況だ。

SUVブームの波が売れ行きを後押し

そして2013年12月に登場した先代(初代)ヴェゼルは、2014年の年間販売ランキング7位を獲得するほどのヒット車となり、モデル末期まで安定した売れ行きを示していた。

しかも、数年前からトヨタが「RAV4」「ハリアー」「ライズ」「ヤリスクロス」「カローラクロス」「ランドクルーザー」と新型のSUVを続々と投入。日本市場でのSUVへの注目度が高まっている。ここに、先代がヒットしたホンダの新型SUVが投入されるとなれば、いやがおうにも期待度も高まるというものだ。

先代の美点だった室内の広さはそのままに、新型ではハイブリッドシステムも大きく進化

では、そんな注目と期待の中に登場した第2世代の新型「ヴェゼル」はどのようなクルマであったのだろうか。

クルマの基本となるプラットフォームは、先代と同様に「フィット」と同じセンタータンクレイアウトを踏襲する。ただし、Bセグメントではあるけれど全長は4330mmあって、ライバルとなるトヨタの「ヤリスクロス」の4180mm、日産「キックス」の4290mmよりも、若干大きいのが特徴だ。そのため室内が広いというのが初代からの長所となっている。

販売の9割以上をハイブリッド車が占める

パワートレインには最高出力87kW(118馬力)の1.5リッター ガソリンエンジンと、最高出力78kW(106馬力)のe:HEV(イーエイチイーブイ:ハイブリッド)を用意する。ただし、初期受注ではハイブリッドとガソリン車の比率は93:7と、圧倒的にハイブリッド車が売れている。ハイブリッドはほとんどの走行シーンをモーターが担い、エンジンの力を駆動に使うのは高速域のみ。あとは、エンジンは発電に徹するという、ほぼシリーズ・ハイブリッドと言えるシステムだ。モーター駆動らしい、力強く滑らかな加速感を備えている。

価格はエンジン車が約230~250万円で、ハイブリッドが約266~330万円。売れ筋は300万円前後のハイブリッドのミドルグレードとなっている。Bセグメントと言っても、安さで売れているわけではないようだ。

先代ヴェゼルと較べ、新型はおよそ2倍の売れ行きとなった

そんな新型「ヴェゼル」の販売成績は、どうであったのか? 

2021年の1月から11月までの累計でいえば、「ヴェゼル」の販売台数は4万8193台(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会調べ)で、販売ランキングは14位となる。ホンダ車としては、「フリード」の6万4246台で8位、「フィット」の5万4315台で13位に次ぐ、第3位のポジションだ。12月までの結果は、おそらく5万台を少し超えるといったところだろう。ちなみに、ヤリスクロスの1~11月の販売数は約9万4500台で、2倍近い差になっている。この数字だけでは、あまり売れているようには見えない。

月間平均5400台のペースで売れ続けた新型ヴェゼル

しかし、「ヴェゼル」の発売は4月23日。つまり、実質の販売は5月からで、11月までは7か月しかない。そして5~11月の販売数は3万7842台。1か月約5400台のペースで売れており、12か月と計算すれば年間約6万5000台にもなる。モデル末期となった2020年の「ヴェゼル」の年間販売台数は3万2931台であったから、約2倍近いペースで売れているのだ。

また、ヒットした先代「ヴェゼル」はデビュー翌年の2014年こそ年間約9万6000台を売ったが、2015年以降は年間5.5~7万台で推移している。コロナ禍と半導体不足という逆風の中での、年間6万5000台のペースは、大成功とまではいわないが、まずまずと言えるのではないだろうか。

新型ヴェゼルは、先代の美点を伸ばしながらネガをつぶし、洗練度を高めた

今回の「ヴェゼル」の好調さは、SUV市場への注目度の高さを背景にしつつも、やはり主因としてはクルマの内容の良さにあるのではないだろうか。

ホンダには、「フルモデルチェンジのときに先代を否定する」という他社にない不思議な社風がある。当然、うまくいくこともあれば、失敗することもあるだろう。今回の「ヴェゼル」に関しては、否定がごく一部で、多くの良い部分は新型に引き継がれた。

良いところは、クーペ風のスタイリッシュなルックスと広い室内だ。そして否定されたのは「スポーティ=硬い足」だ。その代りにスムーズなハイブリッドシステムという新しい魅力が追加され、洗練度を増した。

結果として、新型「ヴェゼル」は先代よりもエレガントな大人のSUVとなっていた。この進化がヒットの大きな理由に違いない。

[筆者:鈴木 ケンイチ(モータージャーナリスト/撮影:和田 清志・茂呂 幸正・Honda)]

ホンダ/ヴェゼル
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新車価格:
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鈴木 ケンイチ
筆者鈴木 ケンイチ

1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。最近は新技術や環境関係に注目。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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