売れ筋アッパーミドルセダン 徹底比較(3/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
あくまでドライビングを重視した空間
外見からも想像できるとおり、キャビンそれほど大きくない。センターパネルを運転席側に傾けるとともに、前席は適度にタイトとした、ドライビングのための空間として形成されている印象。スイッチ類のレイアウトも操作感や視認性を重視したものとなっている。内装全体の質感はそれなりに高く、ちゃんとお金をかけてつくられていることを感じさせる空間である。
2006年のマーナーチェンジで、インテリアデザインも一新され、センターコンソールに固定式ドリンクホルダーが備わった。
前席シートは標準的体型の日本人にベストフィットという印象のもので、よく身体になじむし、適度なホールド感をもたらす。リアシートは座面が長く、ヒップポイント自体は高いものの、背もたれにも角度がつけられていて、オシリを落として座るような格好となる。ウエストラインが低めに感じられ、Cピラーの後ろにも小窓があるので、そこそこ開放感は高い。ただし、居住空間はそれほど大きなものではなく、ニースペースの余裕はあまりない。
オプションのマッキントッシュ製オーディオは素晴らしいサウンドを提供する。レガシィ専用設計のオーディオシステムであり、10万円あまりのコストでこの音空間を得られるのであれば、積極的に「買い」といえるだろう。
「SIクルーズコントロール」は、全車速域に対応するもので、スバルらしくあくまでドライバー主体に考えられている印象だ。けっこう強めにブレーキをかけるところも印象的で、動作のレスポンスにも非常に優れ、前走車の動きに的確に追従する。
ただし、やはりこの手のシステムの宿命だが、首都高速のようなRが小さくツイスティなコーナーの連続する道路では、隣りの車線のクルマを前走車と認識することもあるし、急なバイク等の割り込みには対応しないこともあるので、過信は禁物だ。
個性的なデザインと実用性に優れる装備
オーソドックスな構成の中に、頭上には大型イルミネーションを装備し、助手席専用のオーディオスイッチを設置するなど、意図的に個性を強調したデザインセンスと装備を採り入れているように思える。センタークラスターまわりの造形も独特。全体としては、乗員へのもてなしと上質な空間を実現している。
最上級グレードの300Gプレミアムでは、木目パネルやレザーの使い方も上手く、十分に高い高級感を実現している。直感的に豪華な印象を受ける仕上がりだ。
室内空間のつくりは、基本的には前席重視のパッケージングであり、後席はそれほど広々としているわけではない。
後席の座面はそれほど長くなくかつ平板で、ルーフ後端は絞り込まれている。ヘッドレストは伸ばして使うタイプ。また、このクラスのクルマには珍しく、リアシートが6:4分割可倒式である上、7段階のリクライニングも可能となっている点に注目したい。背もたれを最大に寝かせると、頭の真横に太いCピラーがきてしまうのは少々難点かもしれない。
マークXは同じプラットフォームを持つゼロクラウンやレクサス車よりも、実用性を重視したクルマという位置付けなのだろうか。
広く上品な室内空間とソフトな乗り心地
「モダンリビング」をテーマに仕立てられたインテリアは、優れた居住性と落ち着き感のある空間を実現している。 木目パネルを大胆にインパネに横一文字に配し、シート生地だけでなくドアトリムやアームレストにもパールスエードをふんだんに使用。丸みを帯びたソファのようなシートには、ティアナが初導入して大いに話題となった助手席パワーオットマンを装備するなど、非常に個性的なインテリアを構築している。
前席-後席をつなぐ大きなセンターコンソールを設定し、大面積の平板な木目パネルに直接シフトレバーを配しているのも特徴的だ。後席にもフロント同様にクッション感のあるシートが与えられている。座面が非常に広く、背もたれにも十分に角度がつけられている。
また、外見からイメージするよりもずっとサイドウインドウは立たせられているし、ルーフはワンモーション描いているものの頭上空間は十分に広いので、後席の居住性については、3台の中でダントツトップである。また、ソフトライド志向の乗り心地にも好感を抱く。
トランクルームも驚くほど広い。そもそもティアナなどに採用された日産のFF-Lプラットフォームは、スペースユーティリティを稼ぐ上で大きなアドバンテージがある。ティアナもFFのメリットを最大限に打ち出したパッケージとなっている。
内装・装備の総評
スペースユーティリティでいうと、3台中ではFFの利点を活かしたティアナの圧勝となる。レガシィB4とマークXは、外観のイメージどおり室内空間はそれほど広いものではない。インテリアの雰囲気および装備類の設定は3台それぞれ個性的。もっともドライバーズカーであることをアピールするのはレガシィB4。マークXは高級セダンの片鱗をうかがわせ、ティアナは文字通りリビング感覚の空間を構築している。
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