売れ筋アッパーミドルセダン 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
6気筒ボクサーのスムーズな吹け上がり
2003年5月、現行の4代目レガシィにフルモデルチェンジ。2006年5月にビッグマイナーチェンジを行ない現在のエクステリアとなり、より現代的なルックスとなった。
レガシィ初の3ナンバーボディとなったモデルであり、3代目よりもサイズアップしたにもかかわらず徹底して軽量化を行なったのも特徴。06年のマイナーチェンジでは、内外装を大変更するとともに、SIドライブという新機構を採用。さらに同年末にSIクルーズ搭載の特別仕様車が設定されたものが、このほどカタログモデルとなった。
スバル伝統の水平対向エンジンは、2LのSOHC、DOHC、DOHCターボと、3Lの6気筒の合計4機種。3LのMT車がカタログ落ちしたのは惜しまれるが、ほとんどの機種でMTとATが選べるのもレガシィの特徴だ。
今回試乗したのは、最上級の「3.0R SI-Cruise」。ほぼ同価格帯で2Lターボのトップモデルも存在するが、フォーマルなセダンボディのB4では、ターボよりも大排気量&多気筒の走りが似合うように思える。
印象的だったのは、6気筒ボクサーエンジンの際立つスムーズな感触だ。吹け上がりが滑らかで、V6よりも振動感が少なく、それでいてサウンドには上品な重厚感がある。ボクサーエンジンとは本来こういうものであることをあらためて痛感させられた。ただし、燃費はあまりよろしくない。
今回の試乗車は走行1000kmあまりのおろしたての新車だったが、「レガシィはこんなに乗り心地がよかっただろうか?」と感じたほど、18インチタイヤを履きながらも、しっとりとした乗り味を呈した。また、心なしか静粛性についても、現行型の従来モデルよりも洗練されたように思える。
走りについては文句のない仕上がりではあるが、個人的に唯一、惜しいと感じているのはステアリングフィールだ。センター付近の据わり感が少し頼りなく、微妙に走りの一体感をスポイルしているのだ。そのあたりがもう少し洗練されれば文句なしである。
緻密なスタイリングとそつない走り
2004年11月に登場し、2006年11月にマイナーチェンジを実施。
マークXというクルマ自体に、かつての「ツアラーV」的なスポーツセダンのイメージも残るところだが、今回は最上級の「300Gプレミアム」グレードを持ち込んだ。
このクルマのエクステリアデザインについて、かねてから非常に個性的かつ緻密と感じている。丸い3連ヘッドライトが低い位置に構え、ボンネットを大胆に丸くしてノーズを低く見えるように処理。逆にリアセクションはエッジを立てて直線的に構成し、薄くキャラクターライン入れてタイヤを小さく見えないようにしているのである。また、マフラーエンドをディフューザー形状のリアバンパーに埋め込む斬新なアイデアは、その後のレクサスにも受け継がれている。
エンジンは、3Lと2.5LのV6が用意され、FR車には6速ATが組み合わされる。このATの完成度が素晴らしい。不快な変速ショックやスリップをほとんど感じさせず、マニュアル操作時には好レスポンスを示すのだ。また、2.5Lでは4WD車も選択できる。
走りについては、高く評価されているゼロクラウンとプラットフォームを共用しつつ、よりスポーティな方向にチューニングされている。とはいえ、突出した部分はなく、逆に気になる部分もなく、非常に素直な操縦性を示す。
比較的スローレシオの電動パワステは、適度に重い操舵力をほぼ一定して示す。おかげで一般ドライバーにありがちなハンドルの切りすぎによる挙動の乱れも、結果的に起こしにくくなっている。
マークXは全体を通して、いい意味で実にそつなく、よくまとまった仕上がりと思える。
国産セダン随一の快適な乗り心地に感心
2003年に登場し、2005年末にマイナーチェンジを実施して、内外装や装備の設定が変更された。エクステリアは、決して派手ではないが、スタイリッシュな雰囲気がある。新世代のミドルサルーンとして、ひとつのあり方を示唆するモデルである。
今回の3台の中では、もっともボディサイズが大きく、それでいて2.3Lモデルであれば価格的にも非常に値ごろ感があり、内外装にわかりやすい高級感を備えるとあって、比較的ロングセラーとなっている。前回のマーナーチェンジでは、存在感あるグリルを活かしつつ、ややエッジを効かせた顔つきとなり、ホイールも精悍なイメージのものに変更された。効果的にメッキパーツを配することで、より高級感を演出している。
エンジンは、FF向けに3.5Lと2.3LのV6、4WDには2.5Lの直4が用意される。そして、3.5L V6車には、このクラスで初となるマニュアルモード付きのエクストロニックCVTが採用された点もポイント。これにより小排気量グレードとの実用燃費の差は意外と小さくなっている。その他グレードには4速ATが搭載される。廉価版の2.3LエンジンもV6としている点は、日産のティアナへの思い入れを表す部分でもある。
今回、久々にティアナをドライブしたのだが、あらためて乗り心地のよさに感心させられた。同クラスのセダンがスタビリティの追求から軒並み乗り心地が悪化していった中で、ティアナのそれは、セダンは本来こうあるべきだという方向性を見直させるものだと感じている。
一方で、普通に一般道を走るには大きな不満はないのだが、あえて操縦性について触れると、ヤワな印象があるのは否めない。ステアリングフィールに一体感がなく曖昧で、古さが感じられる。ハンドリングは、初期のロールモーメントが大きく、その先で急激に減衰を立ち上げて、ロールを止める制御がなされているようで、全体としてはロールを抑える味付けではあるが、初期はかなりロールする。これは「そういう運転をするクルマではない」という作り手の意思表示のようにも思えるし、あるいはその領域を抑えると、この快適な乗り心地が実現しなくなるのかもしれない。
もはや旧世代となったVQ35DEも、ティアナに搭載されると過剰なまでの動力性能を味わわせてくれる。FFにつき破綻を避けるためか過剰なスロットルの早開き制御を行なっておらず、ジェントルな中でわかりやすい力強さを味わえる。また、たとえティアナのようなクルマであっても、3.5L V6の重厚な響きを乗員に聴かせるよう演出しているあたりも、いかにも日産らしい。
デザイン・スペックの総評
エクステリアの個性の強さでは、マークXが一番だと思うのだが、万人に対してキャラクターが確立しているモデルというと、レガシィB4のほうが上だろう。ティアナのスタイリッシュさも好印象を持つが、キャラクターは薄味といえる。走りについて、駆動方式がFRとFFと4WDとマチマチであり、それが各車のドライブフィールを形成している。動力性能はいずれも十分に満足できるレベル。やはりこのクラスのサルーンには、排気量が大きめの6気筒エンジンが似つかわしい。総合的にもっとも気になる部分が少ないのはマークXだろうか。
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