横転、爆発は当たり前! 激しいカーアクションが魅力だった懐かしの車映画3選

海外の車映画に比べて印象の薄い日本映画だが、実は名作も多い!

クルマが印象に残る映画は洋画に多い。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『トランスポーター』『TAXI』『ワイルドスピード』アニメーション映画では『カーズ』など、どれも大ヒットを記録していて、日本人にも強い印象を与えたものばかり。劇中でのクルマの使われ方はさまざまだが、どれも上手に演出されている。

一方、日本ではクルマの姿が絵になりにくいのか、洋画に比べて存在感がいまひとつ乏しい。たいていはTVドラマの『大都会Part3』~『西部警察』というカーアクションの流れに行き着いてしまう。

私がジジイなのでいずれも懐古趣味的になるが、特にオススメする日本の車映画を3本紹介したい(文中敬称略)。

>>劇中に出てくる懐かしの名車を見る!【画像12枚】

栄光への5000キロ(1969年公開)

栄光への5000キロは、日産がブルーバードで挑んでいたサファリラリーを題材にした映画だ。サファリラリーの監督を務めた日産の実験部長でもある笠原剛三自身が執筆した『栄光の5000キロ(後に映画と同じ栄光への5000キロに改題)』をベースに製作された。映画の監督は蔵原惟繕、製作は石原プロモーションとなっている。主演は石原裕次郎で、そのほかのキャストも三船敏郎、仲代達也、浅丘ルリ子と豪華であった。日本グランプリに参戦していたドライバーがサファリに挑むという設定で、ストーリー自体は単純だが、ロケーションは欧州、アフリカで行われ実際のラリー映像も多く使われている。

この映画の題材は、1966年に2代目の410型ブルーバードがクラス優勝した時のものであったが、実際のラリーにおける映画撮影は1969年に行われ、日産自動車の全面協力のもと、参戦車両も当時の最新モデル、3代目の510型ブルーバード(市販車の国内発売は1967年)になっていた。

映画が公開された1969年には、510型ブルーバードは均整の取れた外観デザイン、4輪独立式サスペンション、SU型ツインキャブレターを備えた直列4気筒1.6リッターを搭載するSSSの設定などで、人気車種になっている。憧れのクルマが登場する映画として、相乗効果も高かった。

そしてまさに映画と同じように、510型ブルーバードのラリーカーは1969年にはサファリラリー総合3位、クラス優勝を達成する。1970年には念願の総合優勝を飾り、2位と4位にも入ったから大きなニュースになった。『栄光への5000キロ』も大いに盛り上がり、それ以外にもサファリラリーの記録映画が公開され、510型ブルーバードは日産の象徴的な存在になった。

ところがこの後、1971年に発売された610型ブルーバードは、ボディを大きく見せる丸みのある形状(コカコーラの瓶に似ていることからコークボトルラインとも呼ばれた)に変わってしまう。グレード展開もスカイラインの二番煎じ的なボンネットの長い2000GTを用意するなど、分かりにくくなっていく。

「技術の日産」といわれた時代を象徴するのが510型ブルーバードで、その優れたポテンシャルを迫力ある映像で表現したのが、『栄光への5000キロ』であった。

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ヘアピン・サーカス(1972年公開)

1970年頃はクルマの性能が急速に進歩した時代で、若年層には憧れの存在でもあったから、モータースポーツに対する関心も相応に高かった。TVの世帯当たり普及率は、1960年代の前半は60%程度だったが、東京オリンピックを経て1970年頃には90%を超えている。それでも映画に勢いがあり、モータースポーツを題材にしたものもいくつか見られる。

『栄光への5000キロ』はラリーをドキュメンタリータッチで描いたが、もっと良い意味で泥臭い映画に『ヘアピン・サーカス』があった。原作はクルマ好きで知られる五木寛之。

元レーシングドライバーだった自動車教習所の指導員が主人公で、ある日、かつて運転を教えた女性を高速道路上で見かける。素質のある優秀な生徒だったから良く覚えていた。しかし彼女は目立つクルマを挑発しては、ヘアピンカーブで事故に追いやる危険な遊びを繰り返していた。それを止めようとした主人公に向けて、彼女が挑発を始めた…。

いわゆるB級映画だが、主演が本物のレーシングドライバー、トヨタワークスの見崎清志であったから話題になった。相手役のヒロインを演じる江夏夕子も、富士グランチャンピオンレースでレースクイーンを務めたりしていた。本人がトヨタ 2000GTを上手に運転するシーンもある。

音楽はジャズピアニストだった菊地雅章でBGMもカッコイイ。ジャズシンガーの笠井紀美子も登場する。クルマはトヨタ 2000GT、初代セリカ、初代マツダ サバンナ(RX-3)などが懐かしい。

モダンジャズが流れる往年の喫茶店のような、ちょっと鬱な空気感が味わい深い映画であった。

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暴走パニック大激突(1976年公開)

タイトルが凄い。『暴走パニック大激突』!製作の背景にあるのは、1970年代の前半に、アメリカのカーチェイス映画が日本で続々と公開されたことだろう。1971年には『バニシング・ポイント/Vanishing Point』、1973年にはスティーブン・スピルバーグ監督を有名にした『激突/Duel』、1975年には『バニシング in 60/Gone in 60 Seconds』という具合だ。

このほか1968年に公開された『ブリット/Bullitt』あたりを皮切りに、アメリカ映画ではカーチェイスシーンも迫力を増しており、クルマ好きには映画がとても楽しい時代だった。

特に1960年代から1970年代の前半までに販売されたアメリカ車は、ボディが大柄でV型8気筒エンジンの駆動力も高く、その一方で足まわりがソフトなためにカーブではボディが大きく傾いた。

高出力エンジンと柔らかい足まわりでは運転が難しいが、巧みなテクニックで迫力満点の映像を造り出していた。今と違ってCGによる演出など行われないから、本物の凄さがあった。

暴走パニック大激突は、こういったアメリカ映画の流行と、日本映画の実験的要素を踏まえて製作されたのだろう。タイトルはB級風だが、製作は東映で監督は何と深作欣二だ。深作欣二といえば「仁義なき戦い」が有名で、1970年代の前半から中盤にかけてシリーズ化された。暴走パニック大激突は、その最終期と重なる。

主演は渡瀬恒彦で、銀行強盗の犯人。逃亡してカーチェイスが始まる分かりやすい展開だ。予告編には「200台の大暴走!」というキャッチが踊った。

3代目クラウン、4代目コロナ、初代カローラ、3代目グロリア、3代目ブルーバードなどなど、当時の日本車が脈絡なくぶつかり合う映像が延々と続き、一種のシュールであった。クルマ好きの多くは、神技的なカーチェイスシーンは好んでも、単純にぶつかり合う映像には嫌悪感を抱く。しかし暴走パニック大激突のそれは、どこか非現実的で滑稽な印象があった。

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[Text:渡辺 陽一郎]

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筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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