スバル フォレスターtS試乗レポート/小沢コージ(4/4)
- 筆者: 小沢 コージ
- カメラマン:オートックワン編集部
謎めくクルマ職人
「でもね。ウチのパーツってほとんどの繋ぎがピロなんですよ」。
試乗後、フォレスターtSの滑らかさの理由を尋ねた時、辰己さんはそう切り出した。「ピロ」とはピロボールの略称で、いわゆるゴムブッシュではなく、金属を使ったロッドエンドのことを指し、よりダイレクトな動きを目指すレーシングカーやラリーカーに多く使われている。
ただし、ダイレクトな分、無駄なショックを伝えてしまうデメリットもあり、レーシングカーの乗り心地が悪い理由はそこにある。ところがtSはピロを使っていながら乗り心地がいい。それはパーツの考え方と、オリジナルパーツそのものに秘密がある。
辰己さんは冒頭のフレキシブルドロースティフナーを、リアのフレーム後端からリアサスのフレーム近くに繋げているのだが、これは剛性アップのためというより、力を伝えるため。「力の流れっていうのは、要は行き場の無くなった力を、在るべき場所に逃がしてやることなんですよ」これによりショックが全体を伝わり、ボディの動きに一体感が出る。
またドロースティフナーもそうだし、フレキシブルタワーバーもそうだが、パーツの真ん中にピロボールによる「関節」が付いている。 「これはダイレクト感を出すためではなく、横方向を固めつつ、上下方向の力は逃がしてやることなんです」とか。ズバリ、正確に把握するのは難しいが、要はボディを固めるべきところは固め、緩めるべきところは緩め、それがtSの操縦性の良さと乗り心地の良さの両立に繋がっているのだ。
「スポーツカーって大抵はドライバーだけが楽しいんです。助手席も後席も硬くて不快。でも僕は乗客全員が楽しく過ごしていただきたいんです」。実はそれこそがフォレスターtSの一番の意義だったりする。
チューニングは愛!それが今回の結論なのかもしれない。
価格は362万2500円。全員が楽しめる、と考えれば安いものなのかもしれない。
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