スバル 新型フォレスター 試乗|本命のハイブリッドモデルは「普通で、とてもイイクルマ」

  • 筆者: 今井 優杏
  • カメラマン:和田 清志・株式会社SUBARU

新型フォレスターは売る気をたぎらせたグローバル戦略モデル

先行して2.5リッターガソリンエンジンモデルが7月に発売されたのち、待つこと2ヶ月。いよいよスバル 新型フォレスターにとっての本丸、ハイブリッドシステム「e-BOXER」を搭載するモデルのフォレスター・アドバンスが発売だ。

同車におけるグローバル、特に圧倒的な顧客数を誇る北米での超好調な販売数は、屋台骨のひとつとなっている。会社の存続さえをも占うのに欠かせない主力車種とあって、今回のフルモデルチェンジは並々ならない気合を感じるものだ。

まず、パワートレーンの選択肢が増えたこと。先代モデルまでは2リッターエンジンと2リッターエンジン+直噴ターボだったのだが、新型では冒頭に述べた通り、2.5リッターの自然吸気ガソリンエンジンと、2リッターガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド「e-BOXER」を搭載する「アドバンス」が用意されて販売される。トランスミッションはどちらもリニアトロニックと呼ばれるCVTだ。

プラットフォームもまた、現行インプレッサと同設計の「SGP(スバルグローバルプラットフォーム)」と呼ばれる新型。ここまでナカミをガラっと変えた=「売る気」をたっぷりと滾(たぎ)らせた、グローバル戦略モデルということに受け取られるのだ。

その「売る気」は意外なところに意外な印象として反映されている。内容は追い追いお話ししていくとしよう。今回、一般公道を対象にして、2つのパワートレーンを同時に試すことができたのでレポートしたい。

>>新型フォレスターの内外装デザインを画像でチェック!

この走破性をこの価格帯で実現している素晴らしさ!

まずは新型フォレスターの外郭からサラっとおさらいをしておこう。

ボディサイズは全長4625mm×全幅1815mm×全高1715mm(ルーフレール装着車は+15mm)。競合はマツダのCX-5や日産 エクストレイル、ボディサイズ的には三菱 アウトランダー/PHEVなんかも入ってくる、ミドルサイズSUVだ。

特にマツダ CX-5あたりはライバルとして非常に強力なだけに、スバルがどこまで強みを出せるか、というところ。

この部分のみ結論から言えば、悪路走破性に於いて、この価格帯の国産SUVで現状、フォレスターを超えられるモデルは他に存在しない、と言い切ってもいいと思う。

実は今年6月末、ガソリンエンジンモデルの発表の際、フォレスターのオフロード試乗会に参加した。

ホントもうスバルったらドMというかなんというか、「それって下手して失敗したら、そりゃあもう大変に叩かれますよ?!」的試乗シチュエーションを用意するのがとにかくお好きなのだけど、その時も2輪が接地しないとか路面が雨と泥でズルズルとか、でんぐり返っちゃうほどの急勾配とか、とんでもないコースだった。

だから、そのコースをフォレスターが涼しい顔してシレっと走破し続けたことはもう、信頼を超えて賞賛に値すると思う。繰り返すが、この走破性をこの価格帯で実現していると言うことの素晴らしさ!しかも、最新世代の安全運転支援技術までもが標準装備なのだから。

世間では登山やキャンプなど、ファミリーでもシングルでも、エクストリームな趣味を持つ人々が増えているから、日常的に悪路を走破したい人にはコレ以外の選択肢はないはずだ。

(余談だが、セールス好調の北米でも、冬になるとマイナス20度を超えるようなカナダ側エリアでは、同社XVやフォレスター人気がべらぼうに高いのも、この走破性を裏付ける事実だと思う)

先代モデルから明確に変わったエクステリアと、とても上質になったインテリア

閑話休題。エクステリアを見てみよう。よく先代フォレスターからのキープコンセプトなんて言われるが、並べて見れば進化は明確だ。

プレスラインが強めに入り、ライト周りもキリッと文字通りのフェイスリフトで、よりイケメンになった印象。ボンネットのラインがフラットになったことでノーズの長さが際立ち、SUVらしいスポーティさを手に入れている。

実際に計測したわけではないのだけど、フロントガラスの傾斜も少し強くなって、Aピラーが寝たような感じでこちらも若々しい印象づくりに貢献している。

続いてインテリア。ここは先代比で相当なる進化を遂げた箇所のひとつ。ズバリ、とても上質になった。値段にふさわしい質感を手に入れたと言ってもいい。それでもちょっと「男っぽいブコツな印象」は拭いきれないけれど、チープさはきれいに払拭されたから、喜ばしい。

個人的にはアドバンスに用意された茶色レザーの内装が、ことお気に入り。明るい色の内装が導入時からちゃんと用意されているのは大歓迎だ。

さらに、SGPを使用したことで室内空間も広がり、後部座席のニースペースがかなり拡がった。これも家族でお出かけするのに嬉しい改良だろう。

>>新型フォレスターの内外装デザインを画像でチェック!

まずアドバンスに試乗!今井さんが感じた率直な感想とは!?

今回、オートックワン編集部モッチーが引いた厳正なるクジの結果、往路に「アドバンス」、復路に「ツーリング」というチョイスになった。

奇しくもモデル内で最も気合の入ったグレードと最も廉価なグレードを乗り比べることになったのだが、そのため、両者の性格がくっきりと際立って感じられたので、「もうちょっとイイグレード引いてこいよな…」と心の中で舌打ちしたことは忘れてあげようと思う。

まずはe-BOXERを搭載するハイブリッドモデル、「アドバンス」だ。恐れずにズバリ言う。

超、普通。

きゃー!スバル、そしてスバリストの皆さん、石投げないで!だって、正直な感想なんだもの!「普通で、とてもイイクルマ」なのだ。素直で従順。持ち余るところのひとつもない、実に堅実ないいクルマ。

しかし、特にフォレスターのようなモデルにおいて、この「普通」にこそ真の価値があると、素直に思った。北米での成功はもとより、日本の顧客に向けても、ファミリー層に支持を得るために必要なこと、それは「普通にイイクルマである」ということ。

例えば・・・

・過敏にクイックなステアリングではなく、ごく普通の手応えで、ごく普通の舵角を叶えてくれる(ルーズさも過敏さも出さない味付けは本当に大変!)

・踏んだらブン!と背中を蹴られるようなトルクが出るんではなく、あくまでも過不足のない程度にそっと車体を、極めてスッキリと押し出してくれる(これってハイブリッド車だと意外に難しい制御だと思う。やはり各社、どうしてもモーター感を出したがる=初期にトルクをつけたがるので、どうしてもガツンと加速するモデルが多くなるから。でもそれって、他の乗員を車酔いさせる原因にもなる)。

・乗っているクルマが何であるのかをあまり気にしないで運転できる(つまり行きずりでも運転しやすいインターフェースを備えている=誰でも使いやすい、運転しやすい)

・会話に花が咲く(圧倒的な静粛性!)

・こんなに日常に寄り添ってくれてるのに、アウトドアでは抜群の信頼性!

我々クルマファンはどうしても自動車に個性とか、メーカーらしい味付けを求めてしまう。しかし、毎日家族を乗せるクルマにソレが果たして必要なのか、ということ。道具としてのクルマの存在意義を、過小評価する傾向にあるような気がする。

私達ほどクルマが大好きではないようなごく普通のオーナーが、フォレスターの安全性とパッケージと走破性に惚れて、家族でのキャンプのために買うのが、ガッチガチのWRC仕様だったりする必要はないということ。

この考え方自体が極めて北米らしいとも言えて、「bread-and-butter」というのは日本人にとっての梅干しと白ごはんにも似て、「生活に必要不可欠なもの」という例えだけれども、こういう存在こそがブランドのラインナップ上、必要不可欠な性格なのだ。

だからアドバンスは、とても上質なパンとバターなんだと感じた。500kmくらい家族を乗せて走るのに、こんな快適で安全な選択肢があるなんて。

>>新型フォレスターの内外装デザインを画像でチェック!

続いてツーリングに試乗!ガソリンエンジンでも静粛性は抜群!

続いて「ツーリング」だ。プラス0.5リッター分パワフルなNAエンジンの威力は絶大。先代NA版はもとより、先代ターボモデルより加速感は上質。ラグのない、NAならではのなめらかな加速が楽しめるようになったのは朗報だ。とはいえ、こちらも大きくなったエンジン分のトルクを、過度に加速方向に活かすような制御はない。特に低回転域では燃費にも貢献させるためか、ともすればもうちょっとズバっとパワーを出してくれてもいいような気もするほど。

普通に発進するときにはさほど気にはならないんだけど、例えば高速道路の合流とか、再加速のときとか、ああ、もうちょい!と思ってしまうのはきっと、e-BOXERに乗った直後だったからだろう(いくらマイルドハイブリッドとて、やっぱり加速の爽快感は内燃機関に勝るもの!)。

そういうときは走行モードをSにすればいいのだけど、これに合わせると予想していたよりも随分元気になっちゃうから、やっぱり通常でもうちょっと2.5リッターらしさを出してくれても良い気がする。

ガソリンエンジンとて、こちらも静粛性は抜群だった。後部座席の乗員とも声を張らずして明確に会話出来るし、嫌なノイズもさほど気にならない。ハンドリング面も素直かつ、適度に手応えを残したコシのあるフィールで、コーナリング・直進安定性ともに文句なし。

試乗車には17インチのサマータイヤが装着されていたのも好印象の要因の一つだと思う。路面とのアタリ優しく、振動・静粛ともにグッドバランスだと感じた。

で、私ならどっちを買うか。試乗車には諸々オプションが付いて(ルーフレールとか)、ツーリングが314万2800円。アドバンスが343万4400円。この価格差であの快適性が手に入るなら、断然アドバンス!

XVにもe-BOXERが登場!

最後に、ちょっとした補足を。

この次には、フォレスターの弟分であるXVにもe-BOXER搭載モデルが設定されると発表された。

あくまでも予想だけど、こちらのe-BOXERのほうがきっとキャラ濃いめでスバルらしさが表現されていると思う。XV e-BOXERの仕上がりにも期待したい!

[Text:今井 優杏/Photo:和田 清志・株式会社SUBARU]

スバル 新型フォレスターの主要スペック

スバル 新型フォレスターの主要スペック

グレード

アドバンス(e-BOXER)

ツーリング

全長×全幅×全高

4625×1815×1715mm

ホイールベース

2670mm

車両重量

1640kg

1550kg

乗車定員

5人

エンジン種類

2L水平対向4気筒 DOHC

16バルブ デュアルAVCS直噴

2.5L水平対向4気筒 DOHC

16バルブ デュアルAVCS直噴

排気量

1995cc

2498cc

エンジン最高出力

107kW(145ps)/6000rpm

136kW(184ps)/5800rpm

エンジン最大トルク

188N・m(19.2kgm)/4000rpm

239N・m(24.4kgm)/4400rpm

モーター最高出力

10kW(13.6ps)

--

モーター最大トルク

65N・m(6.6kgm)

--

駆動方式

AWD(常時全輪駆動)

トランスミッション

リニアトロニックCVT(マニュアルモード付)

JC08モード燃費

18.6km/L

14.4km/L

WLTCモード燃費

14.0km/L

13.2km/L

価格(消費税込)

309万9600円

280万8000円

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今井 優杏
筆者今井 優杏

自動車ジャーナリストとして、新車や乗用車に関する記事を自動車専門誌、WEBメディア、一般ファッション誌などに寄稿しながら、サーキットやイベント会場ではモータースポーツMCとしてマイクを握り、自動車/ モータースポーツの楽しさ・素晴らしさを伝える活動を精力的に行う。近年、大型自動二輪免許を取得後、自動二輪雑誌に寄稿するなど活動の場を自動二輪にも拡げている。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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