ブリヂストン 新型スタッドレスタイヤ「BLIZZAK VRX2」を試走|装着率No.1ブランド“ブリザック”最新モデルの実力を徹底試乗&評価する

1988年からダントツの氷上性能で定評を得たブリヂストン“ブリザック”シリーズ

かつては雪道用タイヤと言えば、トレッドに金属などで作られた滑り止めの鋲が撃ち込まれた「スパイクタイヤ」が主流であった。抜群のグリップを誇る一方で、騒音や道路の摩耗による粉じんは大きな社会問題にもなった。

そこで生まれたのがスタッドレスタイヤだ。日本では1982年から発売されたものの、スパイクタイヤと比べると走らない/曲がらない/止まらない……と、ユーザーからは苦情が続出したそうだ。

そんな中、1988年に登場したブリヂストンのブリザックPM10/20は、氷雪路でのグリップを飛躍的に引き上げる唯一無二の技術を盛り込んだ。それが今に続く「発泡ゴム」である。これはトレッドコンパウンドの中にあらかじめミクロの気泡を分散させることで、スリップの原因となる氷上に存在する水膜を除去。更に多数の気泡がクッションの役割を果たすため、寒い日でもゴムは硬くならずに接地面を大きく確保。この二つの効果によりブリザックはダントツの氷上性能を実現した。

>>装着率No.1“ブリザック”最新モデル「VRX2」を冬の北海道で試す![画像ギャラリー]

従来モデル“ブリザック VRX”からの進化はフルモデルチェンジ級

その後、ブリザックはダントツの氷上性能とユーザーニーズに応えるために進化を遂げるが、それは発泡ゴムの進化の歴史でもあった。「マルチセルコンパウンド(1992)」、「マルチセルコンパウンドZ(1994)」、「連鎖発泡ゴム(1997)」、「メガ発泡ゴム(2000)」、「レボ発泡ゴム(2003)」、「レボ発泡ゴムZ(2006)」、「レボ発泡ゴムGZ(2009)」、「アクティブ発泡ゴム(2013)」と進化。

その実力は自動車メディアだけでなく口コミでも広がり、北海道/北東北主要5都市での装着率が16年連続ナンバーワンで、同地域を走るクルマの約2台に1台がブリザック装着と、「ブリザック神話」は揺るがない。

そんなブリザックの最新スペックが「VRX2」である。VRXからVRX2と言うネーミングを聞くとバージョンアップの小改良のように思えるが、実際はフルモデルチェンジと言ってもいいくらいの進化である。

ブリザック VRX2の開発コンセプトは「効き」「持ち」「静か」

ブリザック VRX2の開発コンセプトは「効き(安心・安全)」と「持ち(性能が落ちない、発揮し続ける)」、「静か(快適)」の3点である。これらを実現させるキーワードは「接地」である。

コンパウンドはアクティブ発泡ゴム2へと進化。トレッドゴムを構成するポリマーに粒径を小さくしたシリカを配合、更に増加した摩擦力向上剤とポリマーが効果的に結合することで、トレッドゴムが氷路面にシッカリ接地しグリップ力がアップしている。

トレッドパターンも変更され、非対称パターンは継承しながらも接地性の考え方を180度転換。具体的にはVRXまではサイプを増やしてブロックを柔軟に作るような考えだったが、VRX2はサイプの間隔を広めにとりトレッドパターンの剛性を高め、ブロックの倒れ込み(=接地面積のロス)を抑えて “実接地面積”をアップさせる考え方を採用。これはコンパウンド性能の向上によりブロック剛性が必要になったからだと言う。

氷上ブレーキ性能の向上とともに摩耗や騒音までも抑えた

接地性の発想の転換により、縦方向(=止まる)はもちろん横方向(=曲がる)性能もアップ。その一方で、横溝を多く取ることで「ひっかく」機能も強化され、トラクション性能も高められている。これらの技術により、VRX比で氷上ブレーキ性能は約10%短縮された。

ちなみにスタッドレスは減りが早いのがデメリットの一つだが、サイプの間隔を広めに取ったことでブロック剛性がアップ。その結果、走行時の変形が抑制されることで路面部ブロックが引きずられにくくなり、摩耗ライフはVRX比で22%向上しているそうだ。

更にサマータイヤと比べるとスタッドレスタイヤは音に厳しいが、溝・サイプを様々な角度で配置し、空気の流れを分散する「マルチアングルグルーブ」とアクティブ発泡ゴム2のミクロの気泡の吸音機能により、VRX比で騒音エネルギーは31%(1.6dBA)低減と静粛性も大きく改善されている。

氷上、雪上、そして公道でブリザック VRX2を試乗

氷上でのブレーキ性能や安心感がグンと向上

実際にブリザックの従来モデルVRXと、新型VRX2を乗り比べてみると、氷盤路ではトラクション/ブレーキ性能は確実にアップしており、明らかにTCSやABSの介入は少なめだ。

実際にプリウス(AWD)でVRXとVRX2の氷上ブレーキングの比較を行なったが、0→25km/h→フル制動で停止を何度かトライしたが、VRX2のほうが1~1.2車身程度短い距離で止まることを確認。

その中でも印象的だったのは、発進から一転がり、停止直前から止まるまで……と、ユーザーが最も気になる「最初」と「最後」の部分の絶対的な安心感だ。

素早く曲がって良く踏ん張る

一方、曲がる性能に関しては、スタッドレス特有のヨレる感覚が少なく、ステアリングの切りはじめの応答性の良さはもちろん、その後の踏ん張りも高い。プリウスなどのハイブリッド車でEV走行中だと「キュルキュル」と路面をつかむ音からして違うのだ。

強いて言えば、速度が高めになった時に縦方向に対してもう少し横方向の踏ん張りが欲しいと思ったが、滑り出しても挙動変化は穏やかなのでコントロールはしやすい。ESP(横滑り防止装置)がONであれば、何事も起きないだろう。

軽から高級セダン、ミニバンまでカテゴリを問わず良好なマッチング

試乗車は軽自動車(ハイト系)からハッチバック、セダン、ミニバンなどが用意されていたが、クラウンはトラクションの高さ、軽自動車/ミニバン系はいきなりグラッと来ない安心感、輸入車系はサマータイヤと大きく変わらない操縦性が印象的だった。

ブリザック VRX2は、車種やカテゴリーを問わないマッチングの良さもポイントの一つだろう。

一般道に出てリアルな冬の路面状況も試してみた

更に今回はテストコース内だけでなく、一般道をクラウン・アスリート(AWD)でブリザック VRX2の試乗を行なった。

テストコースと違って圧雪路や融雪路、更に舗装路面と様々だが、路面変化に対する適合性も非常に高く、グリップの高さはもちろん、滑り出した際のリカバリーなども含めて、リアルワールドでの性能も高いことを確認。また、舗装路面ではブロック剛性の高さが解りやすく、スタッドレス特有のステアリングを切り込んだ際のヨレや1テンポ遅れるリア追従性なども極力抑えられており、素直にクルマが向きを変えてくれた。

発想の転換による進化度はかなり大きい

一般論では国産スタッドレスは氷上性能重視、輸入スタッドレスはオンロード性能重視と言われているが、その考えはそろそろ改める必要があるだろう。史上最高の氷上性能を実現させるために「接地」にこだわったブリヂストンの新型ブリザック VRX2だが、結果的にトータル性能もアップしている。

新作が出る度に性能アップを果たしてきたブリザックだが、今回、技術はもちろん発想の転換による進化度はかなり大きいと思う。

ブリザック VRX2に用意されるのは、135/80R12~245/40R20までの全109サイズ。現時点ではVRXと併売されプレミアムバージョンとして位置づけられているが、そう遠くないタイミングでVRX2がスタンダードになるに違いない。

[レポート:山本シンヤ/Photo:ブリヂストン]

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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