マツダ 新型MAZDA3 セダン試乗│全ての基本となる2リッターガソリンモデルを試す

マツダらしい正確な走りは健在

クルマ好きの読者諸兄にとって、マツダ3(旧アクセラ)は、ちょっと気になる存在だと思う。今のマツダは運転の楽しさと外観のカッコ良さを大切に開発を行っており、その中核に位置するのがマツダ3になるからだ。ボディタイプは、5ドアのファストバックと4ドアセダンを用意する。

全長はファストバックが4460mm、セダンは4660mmとされ、全幅は1795mmだ。3ナンバー車だが、さほど大柄ではない。最小回転半径も5.3mに収まる。

発表から納車までの期間がエンジンタイプによりまちまちなのは困る

エンジンはガソリンが直列4気筒1.5リッターと2リッター、2リッターで圧縮着火方式を使うスカイアクティブXも選べる。これに1.8リッターのクリーンディーゼルターボを加えた。

注意したいのはスカイアクティブXで、納車を伴う発売が2019年12月に延期された(発売当初は10月の予定だった)。2019年8月下旬時点でも、メーカーのホームページに掲載されるスカイアクティブXの主要諸元は空欄だ。マツダ3は2019年5月に発売されたのに、半年以上もグレードを選びにくい状態が続いてしまう。

売り方がいまひとつ分かりにくいマツダ3だが、ガソリンの2リッターエンジンを搭載する4ドアセダン20S・Lパッケージを試乗した。

>>バツグンの安定感! 新型MAZDA3 セダンの内外装を見る [フォトギャラリー]

パワフルではないものの、扱いやすいエンジン

有段式の6速ATで、メリハリのある運転感覚

2リッターエンジンの動力性能は、ミドルサイズハッチバックの平均水準だ。車両重量が1350kgと少し重いので、パワフルな印象は受けない。

トランスミッションが有段式の6速ATになることも影響した。無段変速のCVTであれば、アクセルペダルを軽く踏み増した時など、CVTが適度な無段変速を行って相応に加速させる。しかし有段式の場合は、高いギアに入っていると走行状態によっては加速が緩慢になる。有段式には、実用回転域の高い駆動力が求められるわけだ。

その代わり有段ATは、CVTのような走行状態に合わせた無段階の微妙な変速をしないから、運転感覚がダイレクトになる。メリハリがあり、アクセル操作による細かな速度調節もしやすい。

6速MTがあればなお良い

2リッターエンジンの性格は、パワフルではないものの素直で扱いやすい。1600回転付近から駆動力が立ち上がり、2500~4000回転の常用域では粘りがある。4000回転を超えると速度上昇が活発になり、フル加速を試すと、ATがDレンジに入った状態で6400回転まで引っ張ってシフトアップした。

このエンジン特性なら、6速MTがあると良いだろう。マツダCX-3の2リッターガソリンエンジンと同様、マツダ3にも6速MTを設定して欲しい。

正確で安定した走りから得られる、車両との一体感

挙動は緩やか、マツダらしい運転の楽しさを味わえる

操舵感は、今のマツダ車らしく正確に仕上げた。車両が機敏に向きを変える感覚はないが、操舵に対する正確性は高く、カーブをドライバーの意思通りに回り込んでいく。車線変更なども含めて、車両の動きの唐突感を抑え、挙動の変化が穏やかに進むから運転しやすい。

走行安定性は、輸入車を含めたライバル車と同様、後輪の接地性を優先させている。それでも峠道などでは旋回軌跡が拡大しにくく、確実に車両を内側へ向ける。

また後輪の安定性を高めながら、カーブを曲がっている時にアクセルペダルを故意に戻すと、車両を緩やかに内側へ向けるコントロール性も併せ持つ。このあたりのセッティングは絶妙で、車両との一体感を得やすく、マツダらしい運転の楽しさに結び付けた。

乗り心地は硬いが、それでも不快感はない

乗り心地は硬い。時速50キロ以下で街中を走ると、路上の細かなデコボコを乗員に伝える。上下動も気になる。

それでも不快な印象はない。いわゆる角の丸い乗り心地で、バタバタした粗っぽさとか、痛みに似た突き上げ感、ユサユサと揺すられる印象は抑えた。

このように感じさせるのは、デコボコを乗り越える時にホイールが垂直方向に伸縮するからだ。余分な動きが絡まないから、不快な伝わり方もしない。硬いことは確かだから購入時には注意すべきだが、クルマ好きなら許容範囲に収まる人も多いと思う。

ちなみに試乗車に装着されていたタイヤは、18インチ(215/45R18)で、銘柄はトーヨー・プロクセスR51Aであった。指定空気圧は前後輪とも250kPaで、少し高めの設定だ。18インチのタイヤサイズも含めて、乗り心地の硬さにはタイヤも影響しているだろう。

内装と室内空間

ホールド感のあるシートは良好、ただし後席は狭い

内装は、インパネ周辺の質感は十分に満足できる。運転席は背もたれの下側、体重の加わる座面の後方、大腿部の近辺をしっかりと造り込み、下半身の支え方が良い。その半面、肩まわりのサポート性は少し弱く感じるが、長距離を快適に移動できる。

後席は足元空間が狭い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ1つ半だ。コンパクトカーのホンダフィットが握りコブシ2つ半だから、マツダ3は空間効率が下がる。後席に座る乗員の足が前席の下に収まりやすく、大人4名の乗車は可能だが、購入時には後席を確認したい。

後席の足元空間が狭い代わりに、トランクスペースの奥行寸法には余裕を持たせた。後席の背もたれを前側へ倒すと、ファストバックのように荷室の床面積が広がり、長い荷物も積載できる。

側方視界に注意

視界にも触れておこう。前方はおおむね良好だ。右斜め前も、フロントピラー(柱)とドアミラーの間に適度な間隔があって見通しが利く。ボンネットは手前の部分が見えて車幅の目安になる。

側方視界はあまり良くない。サイドウインドーの下端が高く、ウインドーの上下寸法は乏しく感じる。サイドウインドーの下端を後ろに向けて持ち上げたから、斜め後方も見にくい。5ドアのファストバックほど悪くないが、セダンも視界に不満を感じる。購入する時は、縦列駐車や車庫入れなどを試したい。

まとめ

運転好きにはオススメだが、実用性には難あり

マツダ3のファストバックは外観のデザインに特徴があるが、これに対しセダンは普通のクルマという印象だ。しかし、運転感覚が体に馴染みやすいという持ち味がある。ドライバーが予想した通りの挙動を示すから、裏切られることがなく安心できるのだ。グイグイと良く曲がるとか、ビンビンと鋭く吹き上がるといったアミューズメント的な要素は希薄だが、長く使っても飽きのこないクルマになっている。

この持ち味を、車内がもう少し広く、明るい雰囲気のクルマで再現して欲しい。マツダ3は、運転するのが好きなユーザーには良くできたクルマだが、日本では実用性に不満を感じる人も少なくないだろう。

価格は高めに思えるが、安全装備を充実させたことでミドルサイズセダンの平均水準に収まる。

ただし最も買い得なのは、実用回転域の駆動力が高く、燃料代の安い1.8リッタークリーンディーゼルターボだ。価格は2リッターガソリンに比べて27万円高いが、税額の違いで差額は実質17万円前後に縮まる。クリーンディーゼルの税額の安さは、2019年10月に実施される消費増税後も継続するから、ガソリンと購入予算や運転感覚を比べて選ぶと良いだろう。

[筆者:渡辺 陽一郎]

マツダ MAZDA3 セダン主要スペック

マツダ MAZDA3セダン 2.0 20S Lパッケージ 主要スペック比較表

車種名

MAZDA3セダン

グレード名

2.0 20S Lパッケージ AT

価格(消費税込み)

245万円

全長×全幅×全高

4660mm×1795mm×1445mm

ホイールベース

2725mm

駆動方式

FF

車両重量

1350kg

乗車定員

5名

エンジン種類

直列 4気筒 DOHC

総排気量

1997cc

エンジン最高出力

115kW(156PS)/6000rpm

エンジン最大トルク

199Nm(20.3kg・m)/4000rpm

トランスミッション

6速AT

使用燃料

レギュラー

タイヤサイズ

215/45R18

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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