A4/Cクラス/3シリーズを徹底比較 ~輸入車プレミアムセダンの魅力に迫る~(4/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正・和田清志・小林岳夫
快適な乗り心地は長距離を移動する用途にピッタリ
A4が搭載する2リッターターボは、動力性能を抑えた2WDでも、実用回転域から十分な余裕がある。4000回転を超えた領域でも機敏に回って運転の楽しさを味わえる。
4WDはさらに動力性能が優れ、幅広い回転域で加速力が向上する。自然吸気エンジンであれば3.7リッタークラスの性能だ。
操舵感はアウディらしく穏やかだが、先代モデルに比べると小さな舵角から正確性を高めた。ステアリングの支持剛性を向上させ、機敏ではないが、操作に応じて確実に向きを変えるから上質な印象を受ける。
乗り心地は、もともとアウディが得意とする性能だが、新型ではさらに重厚感が増した。
ただしSラインパッケージは、タイヤサイズが18インチ(245/40R18)になることもあって少し硬い。粗さは抑えたが、路上のデコボコを伝えやすい。
その分だけ操舵感の切れも良くなって車両の向きを変えやすいが、A4でスポーティーな運転感覚を重視するユーザーは少ないだろう。その意味では、17インチタイヤ(225/50R17)のバランスが良い。足まわりの基本設定が後輪の接地性を重視する安定指向だから、動力性能を高めた2.0TFSIクワトロに17インチタイヤを組み合わせても、安定不足は感じない。
A4の運転感覚は、ドライバーにあまり刺激を与えないことが特徴だ。クルマ好きのユーザーによっては物足りなさを感じるだろうが、移動のツールとしては、幅広いユーザーにとって馴染みやすい。
だからA4は仕事で長距離を移動するような使い方にも適する。2WDであれば前述のように燃費が優れ、4WDは雨天の高速走行でも高い安心が得られる。街中では少し大柄なボディも、高速道路であればちょうど良い。
密度感のある乗り心地と優れた直進安定性が特徴
C180アバンギャルドが搭載する1.6リッターのターボは、1510kgの車両重量に合った動力性能を発揮する。自然吸気エンジンでいえば2.5リッターに相当するから、パワフルではないが力不足も感じない。小排気量の4気筒エンジンながらノイズは抑え込んだ。
また2.2リッターのクリーンディーゼルターボを選べることも特徴だ。このエンジンはディーゼルでありながら、4500回転付近まで滑らかに回る。低回転域で40.8kg-mの最大トルクを発生しながら、9速ATと相まってガソリンエンジンに近い運転感覚を実現させた。
操舵に対する反応は、以前のメルセデス・ベンツに比べると軽快感が伴う。峠道を走ったり、車線変更を行った時は車両の向きがスムーズに変わり、表現を変えればBMWの運転感覚に近づいた印象も受ける。
その一方で4輪の接地性が優れ、特に直進時の安定性が高い。前後輪の重量配分は車検証の記載値で54:46とされ、後輪駆動らしくバランス良く仕上げた。スポーティーに曲がると旋回軌跡を少し拡大させやすいが安心感が伴う。
乗り心地は17インチタイヤ(225/50R17)装着車であれば、密度感が伴って快適だ。路面の情報としてデコボコを伝えても、段差を乗り越えた時などの吸収性は優れている。
Cクラスの運転感覚は、日本のユーザーの多くがドイツ車に対して抱くイメージに近いように思う。セダンらしい低重心を感じさせて安定性が優れ、車両が正確に動く。走りから乗り心地まで、しっかりした感覚を伴うことが特徴だ。今回取り上げた3車種の中では、A4と3シリーズの持ち味を兼ね備えた位置付けとなる。
運転操作に忠実に反応する一体感のある走りが特徴
320iスポーツが搭載する2リッターのターボは、自然吸気エンジンでいえば2.7リッタークラスの性能だ。高性能ではないが、実用回転域の駆動力に余裕があって扱いやすい。最大トルクを1350~4600回転で発生するため、巡航時にエンジン回転が下がっても駆動力は落ち込みにくい。
最高出力の発生は5000回転だが、6000回転近くまで滑らかに回る。回転が上昇するにつれて吹き上がりが鋭くなる面はあるが、全般的にいえばターボの性格が弱く自然吸気エンジンに近い。
ATは8速だから、加速力が必要な時は高回転域が保たれ、効率の良い走りが行える。
3シリーズでは320dが搭載するクリーンディーゼルターボも魅力だが、320iの2リッターガソリンターボには、性能を使い切る魅力がある。適度なパワーを好むスポーティー派のドライバーに受けるだろう。
一番の特徴は操舵感で、小さな舵角から几帳面に向きを変える。ルーズな運転には合わないが、正確に操れば、その通りに車両が反応するから運転が楽しい。
また車両の向きが機敏に変わる半面、後輪が安定していることも特徴だ。前後輪の重量配分は、車検証の記載値で51:49。ほぼ均等になることも優れた走りの秘訣で、後輪駆動のメリットを十分に引き出せる。
乗り心地は、ライバル2車に比べると路上のデコボコを伝えやすいが、その分だけ路面の情報も分かりやすい。17インチタイヤ(225/50R17)であれば、硬さをあまり意識させない。
このように3シリーズは、イメージどおりのスポーティーセダンだ。リラックス感覚は希薄だが、ドライバーの操作に忠実に走るから、運転している実感を強く味わえる。ラフな操作をすれば、微妙な挙動変化として体感されるため、自然にていねいな運転をするようにもなるだろう。日常的な移動の中で、運転技量をレッスンしたり維持できる。
アウディ A4もドイツ車らしく正確な動きをするが、3シリーズとは違うリラックス感覚が伴う。運転を楽しめるクルマだが、快適な移動のツールとしての性格も強い。
メルセデス・ベンツ Cクラスは、A4に比べるとスポーティーだが、3シリーズほど機敏ではない。なおかつ乗り心地を緻密に造り込んだ。
総合的に評価すると、多くのユーザーが共感を得やすいのはCクラスだが、A4や3シリーズにもブランドに裏付けされた特徴がある。車内の雰囲気、後席の居住性などもそれぞれ異なるから、試乗した上で自分にピッタリのモデルを選ぶのが良いだろう。
それは自分のクルマに対する好みを再発見することにも繋がると思う。
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