トヨタ「エスティマ」の新型と旧型を比較してみた ~エスティマが未だフルモデルチェンジしない理由~(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
乗り心地
サスペンションの設定を変えてフロントパフォーマンスダンパーを装着したことにより、乗り心地も向上した。
17インチタイヤを装着したハイブリッドは、路上の凹凸が上手に吸収されて従来型の粗さを払拭させた。ハイブリッドの乗り心地は、マイナーチェンジを受けて快適になっている。
ただし、ノーマルエンジン搭載車には今でも硬さが残る。2WDだとハイブリッドに比べて車両重量が約200kg軽いのに、18インチタイヤを装着するからだ。
従来型の18インチタイヤ装着車よりは少し快適になったが、本質的にエスティマと18インチタイヤの相性は良くない。メーカーオプションで17インチにサイズダウンできるから(価格も2万7000円安くなる)、見栄えよりも乗り心地を優先するなら検討したい。
進化度数:3点/10点(比べてようやく気付くレベル)
快適&安全装備
装備で最も注目されるのは、緊急自動ブレーキのToyota SafetySenseC(トヨタ セーフティセンスC)を標準装着したことだ。
赤外線レーザーと単眼カメラを併用して、時速80km以下で緊急自動ブレーキを作動させる(警報は140km以下)。カメラを使うために車線逸脱の警報、ハイ/ロービームの自動切り替えなども行える。ただし歩行者は検知できず、前述のように緊急自動ブレーキの作動上限速度も時速80kmにとどまる。
Toyota SafetySenseCはヴィッツなどのコンパクトカー用に開発された経緯もあり、機能が不足した。その点でプリウスなどは、ミリ波レーダーと単眼カメラを備えるToyota SafetySenseP(トヨタセーフティセンスP)を採用する。緊急自動ブレーキの作動速度を高めて歩行者の検知も可能だ。さらに、車間距離を自動制御できるレーダークルーズコントロールも備わる。
トヨタ クラウンやトヨタ ランドクルーザーはこのToyota SafetySensePをマイナーチェンジで採用したが、エスティマはCにとどまった。開発者は「Pの採用には周辺機能の大幅な見直しが必要だが、Cであれば対応が可能なので装着した」という。
ちなみに従来型は、ミリ波レーダーとカメラを使うプリクラッシュセーフティシステムを最上級グレードにオプション設定していた。設計の古いタイプでオプション価格も30万円を超えていたが、ミリ波レーダーの装着を考えると赤外線レーザーのToyota SafetySenseCはグレードダウンとも受け取られる。
進化度数:5点/10点(順当に進化した)
旧型と比べて分かった、新型エスティマの総合評価
エスティマはマイナーチェンジの直後に売れ行きを伸ばし、1ヶ月で約8000台を超える受注があった。
その内の約85%は従来型からの代替えだ。顧客の多くはフルモデルチェンジを待っていたに違いない。
好意的な見方をすれば、廃止しないで改善を加えたことを評価すべきだが、代替えした人達の気持ちを考えると、先行きの需要が不透明とはいえマイナーチェンジで済ませたことに疑問が残る。
26年の歴史を持つエスティマは、ミニバンの草分け的な存在だ。ヴェルファイア&アルファードと競合関係にあるとはいえ、クラウンのように大切に扱うべき車種だろう。
「今はエスティマの需要が堅調だから進化をさせたいけれど、フルモデルチェンジには踏み切れない」という中途半端な扱い方は、トヨタの国内市場に対する取り組み方にも繋がっていると思う。次回はフルモデルチェンジを行って欲しい。
進化度数:2点/10点(比べてようやく気付くレベル)
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