スズキ アルトターボRS 新型車解説/渡辺陽一郎(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正/スズキ株式会社
ハチロクの半額以下!まさに最廉価のスポーティカーとなった「アルトターボRS」
以上のようにアルトターボRSは、走行性能から内外装まで大幅に手を加えたエボリューションモデルとなった。
価格は2WDが129万3,840円、4WDは140万5,080円になる。トランスミッションは前述のようにパドルシフトを備えた5速AGSで、赤外線レーザーを使って衝突の回避を支援するレーダーブレーキサポートは標準装着した。
アルトXに対する価格上昇は15万9,840円(2WD)で割安だ。エアロパーツ、ディスチャージヘッドランプ、パドルシフトといった装備の価格換算額だけを単純に加算しても、20万円前後には達する。これにスポット溶接の増加といったボディ剛性の向上なども加わるから、16万円弱の価格上昇であれば買い得だろう。
懐かしさが込み上げる「アルトターボRS」、きっと多くの共感を得られるはず
本稿を執筆していて、30~40年前のコンパクトなスポーティカーを思い出した。
例えば1974年に登場した初代シビックRSは、全長が3,650mm、全幅が1,505mmのボディに、最高出力が76馬力の1.2リッターエンジンを搭載して運転感覚が機敏であった。
このほかスターレット、マーチ、シャレードといったコンパクトカーも、ターボを含めて走りの楽しいグレードを設定している。いずれもボディサイズ、車両重量、動力性能などが、新型アルトターボRSにかなり近い。
特に車両重量は、今日のコンパクトカーは大幅に重くなった。衝突安全性能の向上、各種の装備を充実させたことで、ベーシックなグレードでも約1,000kgに達する。安全のためとはいえ、300kgも重くなれば軽快感は薄れるが、アルトターボRSの車両重量はレーダーブレーキサポートなどを装着して670kgだ。価格も安く、昔のスポーティなコンパクトカーと同様、若いクルマ好きのユーザーがさほど無理をせずに購入できる。
アルトをベースに、入念なボディチューニングまで施して真面目に高性能モデルを造るのは、見過ごされていたチャレンジかも知れない。特別にカッコイイわけではなく、コペンやS660に比べれば地味だが、多くの人達の共感を得られると思う。いかにもスズキらしいクルマ造りだ。
スズキ アルト ターボRS 主要諸元
全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,500/ホイールベース(mm):2,460/最低地上高(mm):155/車両重量(kg):[FF] 670・[4WD] 720/燃費(km/L):[FF] 25.6・[4WD] 24.6/最小回転半径(m):4.6/エンジン:R06A型 水冷4サイクル直列3気筒インタークーラーターボ/排気量(L):0.658/最高出力(kW/rpm):47(64PS)/6,000/最大トルク(N・m/rpm):98(10.0kg・m)/3,000/燃料タンク容量(L):27/使用燃料:無鉛レギュラーガソリン/トランスミッション:5AGS/タイヤサイズ:165/55R15 75V/価格:[2WD] 129万3,840円・[4WD] 140万5,080円
この記事にコメントする