スズキ アルトターボRS 新型車解説/渡辺陽一郎(2/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正/スズキ株式会社
ワゴンRターボと同エンジンが積まれているが、異なるチューニングが施される
エンジンについては、車名が示すように「ターボ」を搭載。R06A型だが、スズキワゴンRスティングレーTなどとはチューニングが違う。最高出力は64馬力(6000回転)で共通だが、最大トルクは、ワゴンRスティングレーTが9.7kg-m(3000回転)なのに対し、アルトターボRSは10kg-m(3000回転)まで高めた。
高タンブル吸気ポートで急速燃焼を行い、自然着火を抑えることで実用回転域の駆動力と最大トルクを向上させている。ターボのタービンについては、通路面積を縮小してガスが流れる速度を速め、アクセル操作に対する反応を従来よりも機敏にした。圧縮空気を作るコンプレッサーは、翼の形状を最適化して、高い過給圧に対応している。
各部の摩擦も低減させた。もともとR06A型のターボは、1リッターのノーマルエンジンに近い動力性能を得ている。アルトターボRSでは実用域の駆動力を高め、反応を機敏に改善することで、さらに自然な運転感覚を発揮できるようになった。
トランスミッションは、ワゴンRなどはCVT(無段変速AT)を使うが、アルトターボRSは5速AGSとした。アルトFなどと同じシングルクラッチを使う有段式のATだ。ギヤ比は高回転域を保ちやすい設定としている(最終減速比はアルトバンVPと共通)。
変速時のショックを抑えるチューニングも施し、ハンドルには5速のマニュアルモードとして機能するパドルシフトを組み込んだ。
走行安定性と乗り心地の改善で、要注目の「スポット溶接の増加」
走行安定性と乗り心地に影響する改善も、さまざまな方法で行っている。
注目されるのはスポット溶接の増加で、ボディの捩れが生じやすい中央のピラー(柱)付近、リアゲートの開口部付近を増し打ちした。ボディの前側は、フロントサスペンションのアッパーブラケットとアッパーエクステンションを厚くして、左右のサスペンションの頂点を繋ぐストラットタワーバー、左右の骨格の前端を結ぶフロントバンパーメンバーも装着した。このあたりはスイフトスポーツと同等、あるいはそれ以上の本格的なボディチューニングだ。
ボディの捩り剛性は5%、ストラットの取り付け剛性は14%の向上とされるが、数値以上の効果をもたらす。サスペンションも専用にセッティングされ、カヤバ製のショックアブソーバーは、フロント側についてはシリンダーとロッドの径を太くした。剛性感と走行安定性の向上を図っている。リア側のショックアブソーバーは、専用のバルブを使うことで摩擦抵抗を軽減。滑らかな作動を実現させている。
減衰力も専用にチューニングした。スプリングとブッシュも専用で、前後のサスペンションには、アルトXと同様にボディの傾き方を制御するスタビライザーが備わる(4WDは前輪のみ)。
タイヤはハイグリップな「ポテンザ RE050A」を装着
タイヤサイズは15インチ(165/55R15)。このサイズはアルトXと同じだが、銘柄は異なり、新たに開発されたブリヂストン・ポテンザRE050Aを装着した。ちなみにアルトXのブリヂストン・エコピアEP150も新開発だったから、アルトは2種類の上級タイヤを新開発したことになる。ベーシックな軽自動車では、かなり綿密な開発だろう。
アルミホイールはENKEI製のalloneをベースに、アルトに合わせてアレンジを施した。
ブレーキはフロント側を上級化。ベースのアルトはソリッドタイプのディスクだが、ターボRSは放熱効果の優れた13インチのベンチレーテッドディスクを装着している。
JC08モード燃費は、前輪駆動の2WDが25.6km/L、4WDは24.6km/Lだ。ATがCVTではなく、5速AGSにしたこともあり、ワゴンRスティングレーTの27km/L(2WD)にはおよばない。それでも運転の楽しさにこだわった軽自動車としては、納得できる燃費数値となった。
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