「燃費不正フィーバー」ひと段落したと思ったら、今度はスズキ!?浮き彫りになったメーカーと国の課題(2/2)
- 筆者: 桃田 健史
スズキの説明は、あくまでのスズキの言い分
こうして、スズキの緊急会見が始まった。
結局、スズキの「言い分」としては2010年からこれまで国内で発売してきた16車種・累計約210万台に対して、国が定める走行抵抗値の計測方法「惰行法」で得たデータを、スズキ独自の方法で補正したということだ。
具体的には、空気抵抗では風洞実験で、転がり抵抗についてはタイヤ・ブレーキ・トランスミッションなど個別のパーツで測定してそれらを合算したという。
その理由について、スズキの「言い訳」はこうだ。
静岡県・相良テストコースが海に近い丘の上にあるため、風の影響を受ける「惰行法」のデータはバラツキが大きくなり、データ収集に多大な時間を要する。そのため、認証を担当する部門が業務の効率化を図るために行ったことであり、燃費を良くしようとした意図はない、と説明。
また、燃費値等へ影響について「惰行法」で取り直した結果、データを補正して申請した値とは測定誤差の範囲内であるため、型式認定の再申請は行わず、生産・販売がこれまで通り継続するとした。
これに対して、午後8時からの国土交通省によるブリーフィングでは、次のようなコメントがあった。
「(スズキからの報告は)本日が初めてなので、まだまだ不明な点がある。特に、スズキの説明では、燃費性能では(惰行法で計測した場合と)同程度というが、本当に正しいのか、その裏付けとなるデータが今日は無かった。そのため、5月31日までにその裏付けデータを含む、さらなる説明資料を取りまとめて、提出する様に指示した」
軽4車種以外にも不正行為が行われている事態は「由々しき問題」
また、国交省は同ブリーフィングで、三菱自に対する今後の対応について次のように語った。
「我々の理解は、軽4車種(eKワゴン、eKスペース、デイズ、デイズ ルークス)については実態がある程度明らかになったと認識する。それ以外の(現行で販売されている)9車種については、これまでは(国の定める惰行法ではない、三菱自オリジナルの)高速惰行法を使用してきたと説明していたが、それ以外に(机上計算など)各種不正行為が行われており、由々しき問題だ。
(4回目となった今日の報告で三菱自は)出すものは出したと思うが、9車種についての不正について追及していく。ただし(三菱自からの)追加での報告は求めず、(こちらの疑問点を説明してもらうために三菱自を国交省に)呼んで話を聞くことはある。
一方、軽自動車以外で現在、すでに販売をしていない古いクルマについては、三菱自はまだ調査を継続中であり、これついては三菱自からの報告を待ちたい」
[自動車ニュース] 三菱自、相川社長および中尾副社長が辞任 ~アウトランダーPHEVは机上計算していたが「不正」ではないと説明~
筆者はこの数週間、一連の「燃費不正事案」を追ってきたが、今回のスズキ・三菱自、両社の会見に出席して、メーカー側の問題点、そして国側の課題がはっきりと浮き彫りになった印象だ。
メディアとしても、先週12日の日産・三菱自の共同会見で「燃費不正フィーバー」がひと段落したと考えているフシがある。
そこへ飛び込んできた、スズキの事案。2日前の舛添都知事の不正経費問題、昨日の清原容疑者の裁判と続き、「ニュースの穴」が開いた5月18日に「スズキがはまった」というイメージだ。
今後も、スズキと三菱自は、国、社員、サプライヤー、そして消費者への説明責任を継続するのは当然だが、メディアの「燃費不正フィーバー」熱は、まもなく本格的に下がっていきそうだ。
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