フォルクスワーゲン ゴルフGTI 試乗レポート/藤島知子(3/3)
- 筆者: 藤島 知子
- カメラマン:オートックワン編集部
4WDのような、路面に張り付く安定感をみせるゴルフGTI
エンジンは2008年にパサートから導入されたEA888型に一新され、ゴルフⅤのGTIと比較して最高出力は11馬力アップしながら、燃費は13km/Lで3%向上した。
タイミングベルトは省スペースで耐摩耗性に優れたチェーンベルトに変更。バランサーシャフトをシリンダーブロック内に組み込むことでコンパクト化に成功し、エンジンの搭載位置が低く抑えられた。
先ずは17インチの標準仕様に試乗してみる。足まわりについては、低速域でわずかにコツコツとした上下動でスポーツ性の高さをアピールするものの、タイヤの当たりがマイルドなので、不快な乗り心地を強いられるほどでもない。
やがて車速がのり始めると雰囲気が一転。まるで路面に吸い寄せられたかのように活き活きと動きだし、ドライバーのイメージ通りのラインをトレースしてみせる。
しっかりと手応えを与えてくるステアリングの操舵感は、前輪の状況が手に取るように掴みやすい。しっかりとしたストローク感を与える足の動きは、ベースとなるゴルフⅥの持ち味ともいえるしなやかさが生きている。
もう一台は、アダプティブシャシーコントロール(DCC)付きのモデルを試乗した。
この手の装置は、コンフォート・ノーマル・スポーツという3つの異なる特性を両立させるため、それぞれの状況に求められる機能性をバランスさせるのが難しいものだが、ゴルフGTIに採用されたものは、操舵感、足の動き、乗り心地が、それぞれのシーンにおいてドライバーが求めるイメージに的確にマッチしてみせた。
DCCは迫力あるデザインの18インチホイールとセットオプションとなるが、ルックスや走りの質を考慮しても、買いは18インチのDCC付きだろう。
また、今回私が最も驚かされたのは、FF車のコーナリングの概念を覆すほどの秀逸な制御をみせる電子制御式のデファレンシャルロック「XDS」だった。
XDSはコーナーで駆動輪が空転したことを感知すると、内側の車輪の空転を抑えることで、グリップを確保する態勢に持ち込む。
これは中高速域でクルマ側が曲がりやすい態勢を作ることでいっそうスポーティーなドライブフィールを与える機能だが、単なるLSDの疑似作用の領域を超え、4WDのクルマをドライブしているかのような安定感とスムーズさを見せつける。
従来モデルと比較すると、運動能力の差は歴然だろう。
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