【試乗】ポルシェ911シリーズ「GT3・ターボ カブリオレ・タルガ4・カレラ7速MT」2015年モデル イッキ乗り!/金子浩久(2/6)
- 筆者: 金子 浩久
- カメラマン:小林岳夫・原田淳
GT3史上初の2ペダルシフト「PDK」を初採用
ポルシェは頑に未だにエンジンスタートボタンを採用しておらず、差し込んだキーを捻ってエンジンを掛ける。と、轟音でボディ全体が打ち震えるようだ。911 GT3のレッドゾーンはなんと9000回転。スロットルペダルをちょっと踏んだだけで超敏感に反応する。
音だけではない。引き締まったサスペンションはゆっくりと一般道を流すのにはハード過ぎて、少しの段差でもそのまま全部ハネ返してくる。これはもう、ただごとでは済みそうにない。
街中では電子制御ダンパー「PASM:ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム」を”スポーツ”から”ノーマル”に戻すのがいいだろう。
トランスミッションは、ついにPDK(ポルシェ・ドッペルクップルング:デュアルクラッチトランスミッション)となった。3ペダルのマニュアルトランスミッションはGT3には設定されていない。
PDK自体の働きは他のポルシェと変わらず、短い変速時間でギアを変えていく。センターコンソールに並ぶボタンの中に「PDK SPORT」というものが新たに加わったが、これはPDKの変速をスポーツモードを選ぶためのものだ。
それを選ぶと、シフトアップせずに走行中のギアで極力高回転域まで引っ張ろうとする。ノーマルモードでは、GT3と言えども早め早めにシフトアップを行い、省エネ運転をしてしまうからだ。
右足の動きに極めて忠実な高回転型エンジン
箱根ターンパイクでペースを上げていくと、911 GT3の超敏感なエンジンは、5000回転を超えると鋭さを増して、さらに高回転域に自らを引きずり込もうとする。乾いた雄叫びは半オクターブ上がり、タコメーターの針が眼で追い付かないくらい速く上下動し始める。クルマに乗っている以前に、まずエンジンと格闘している気になってくる。音、素早い回転の上下動、パワーの盛り上がりなどが自分の右足のホンの少しの動きに忠実に反応してくる。こんなに敏感でパワフルなエンジンは他にちょっと思い付かない。
前述した通り、ノーマルモードではスロットルペダルを少し戻しただけでシフトアップして回転数がドロップしてしまうが、スポーツモードならば同じギアを維持して、右足の次の踏み込みに備えている。少し踏み込んでからハンドル裏の右側のパドルを引いてシフトアップする際の回転の落ち方の速いことといったらない。昔の911の回転の落ち方のようだ。
PDKのシフトダウンが超絶に気持ちイイ!
PDKのスポーツモードの真骨頂は、シフトダウンにある。GT3に限ったことではないが、PDKはスピード、エンジン回転数、ギア段数、ハンドル切れ角、路面の傾斜など重層的に存在するパラメータを勘案しながら変速を判断している。それが見事に現れているのがシフトダウンだ。
例えば、直線の末にフットブレーキを踏む必要のあるコーナーが待っていたとする。軽く踏めばその分だけ減速し、強めに踏めばそれに加えてギアも1段落ちる。もっと強く踏めば2段落ちるのだ。
7速あるいは6速、もしくは5速から4速へは強く踏まなくても簡単に落ちる。4速から3速へはある程度強く踏まないと落ちないし、3速から2速はなおさらだ。前述の通りハンドルの切れ角と路面の傾斜などによっても落ち方は多少変わってくる。
これは便利で、体験してみるとその判断の賢さには誰でもが驚かされるはずだ。PDKに備わったセンサーとコンピュータとそのソフトウェアが、ポルシェのテストドライバーが実際に走行して得た膨大なテストデータを元に最適なギアを選択して、瞬時にシフトしてくれるのである。スポーツカーにとって最も大切な一体感というものを強く感じさせられる。
[あの超高性能ブレーキを支える、意外なものとは・・・次ページへ続く]
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