ホンダ フィットハイブリッドRS 試乗レポート/渡辺陽一郎(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
フィットと比べてもまったく遜色のない実用性
一方、フィットハイブリッドRSの実用性は、ノーマルのフィットハイブリッドとほぼ同じ。というか、荷室の床下に装着される収納ボックスなどを除けば、ノーマルエンジンを積んだフィットと比べても遜色はない。街中で運転のしやすいサイズながら、大人4名が快適に乗車できる。この実用性の高さが何より嬉しい。
1,525mmの全高によって、立体駐車場の利用性を妨げずに前後席とも頭上空間は十分に確保されている。コンパクトカーでは狭まりやすいリアシートの足元空間も、2,500mmのホイールベースによって狭くは感じない。
リアシートの座面の奥行寸法がフロント側に比べて40mm短いことは注意すべきだが、床面へ落とし込むように小さく畳む機能が備わる。
ボディの後部に専用バッテリーを搭載するハイブリッド車でありながら、2名乗車時には、ボディの後部をボックス状の広い荷室にアレンジすることが可能だ。
また、燃料タンクをフロントシートの下に搭載するため、リアシートの座面を持ち上げると背の高い荷物も積める。
日常生活の便利なツールとして使えるフィットの機能を生かしながら、燃費性能を向上させ、さらに走行性能も高めて運転の楽しさまで身に付けたのがフィットハイブリッドRSだ。
この魅力を存分に味わいたいなら、6速MTも検討すると良いだろう。
フィットハイブリッドRSとCR-Zでは「運転の楽しさ」におけるベクトルが異なる
ここまで走りのアイテムを充実させると、同じ1.5リッターエンジンを積むハイブリッドスポーツカー「CR-Z」と比較してどうなのかということも気になってくる。
確かにフィットハイブリッドRSはCR-Zの方向に発展したグレードといえるが、CR-Zは全高が130mm低く全幅は45mmワイドだ。ここまで外観の寸法が異なれば重心も低くなり、CR-Zにはスポーティクーペとしての走行安定性を持ち得ることができる。
ただし「運転の楽しさ」ともなれば、その受け取り方はユーザーによって様々だろう。
高重心のフィットハイブリッドRSでコーナーを曲がれば、CR-Zよりもボディの傾き方は拡大するが、挙動の変化が穏やかに進行するために同じ速度で曲がっても“操っている”実感が強くなる。
先に触れたように、ボディやサスペンションの徹底的な煮詰めにより、高重心の不利を楽しさの要素へと変えた。従って、フィットハイブリッドRSとCR-Zの走りの楽しさは、一概にどちらが上とは決められないのだ。
一般的には実用性を重視するなら「フィットハイブリッドRS」、走る楽しさを求めるなら「CR-Z」という結論となるであろうが、私的には両車の違いは“運転感覚の好み”で決めて欲しい。そう思ってしまうほど、フィットハイブリッドRSは走りのレベルが高められていた。
ハイブリッドカーということで、気になる燃費にも触れておきたい。フィットハイブリッドRS(CVT)のカタログ燃費は「22.2km/L」(JC08モード)。
取材時に実燃費を計測したところ、高速道路をノーマルモードとスポーツモードを切り換えながら機敏に走ると「14km/L」。街中をECONモードでアクセル操作に気を使いながら走ると「20km/L」となった。(どちらもエアコンは作動させずに計測)
つまり、燃費は悪くて14km/L、少していねいに走れば20km/Lとなる。中間を取ればJC08モード燃費の80%前後ということをみても、妥当な数値だろう。
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