元祖ホットハッチ! ゴルフGTI史上最強の限定車「GTI TCR」に試乗

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初代フォルクスワーゲン ゴルフ登場の1年後、1975年に追加設定されたのが「ゴルフGTI」である。GTIとは「グランド・ツーリング・インジェクション」の略で、初代には1600ccのSOHCエンジンに電子制御インジェクションの組み合わせにより高い動力性能をプラス。当時、高級車の独壇場だったアウトバーンの追い越し車線を走る性能を備えた初めての小型車と言われた。ズバリ、ホットハッチの元祖である。そんなフォルクスワーゲンゴルフGTI史上最強の限定車「GTI TCR」を今回試乗してきたので、その様子をレポートする。

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目次[開く][閉じる]
  1. 長年愛され続けるゴルフGITの魅力とは?
  2. 出力大幅アップで史上最強のゴルフGTIに
  3. その走りはどうか?
  4. ノーマル越えで更に魅力的になったGTI TCR

長年愛され続けるゴルフGITの魅力とは?

40年以上に渡り、ゴルフGTIは一度も途切れることなく設定されてきた。世代を重ねるにつれて性能は引き上げられ、街中からワインディング、高速道路と道を選ばずフィットする走りと懐の深さに「さすがのお手前!!」と頷くほどのマルチパフォーマンスっぷりだが、僕はあまりに洗練されすぎてドライバーが熱く(=ホット)なりにくい事が気になっていた。

そんなモヤモヤを一気に吹き飛ばしてくれるのが、特別なゴルフGTI「TCR」だ。TCRの名でピンと来る人もいると思うが、WTCR(ワールド・ツーリング・カップ)を戦うレーシングカーのノウハウをフィードバックしたストリート仕様である。

フォルクスワーゲン/ゴルフ
フォルクスワーゲン ゴルフカタログを見る
新車価格:
341.1万円792.8万円
中古価格:
32万円825万円

出力大幅アップで史上最強のゴルフGTIに

リリースには「日本仕様史上最強のGTI」と記されるが、その理由は本国に310psを発揮する2Lターボエンジンと軽量化、空力のアップデートが施された「GTIクラブスポーツS(2016年)」と言うスーパーモデルが存在するためだ。ただコイツはナンバー付ながらも当時のニュルFF最速記録を目指した特殊なモデルであり、純粋なロードカーと言う意味で言えばGTI TCRが「ゴルフGTI史上最強」と言っていいと思う。

パワートレインも兄貴越え!

パワートレインはノーマル(GTI)と同じく2Lターボだが、兄貴分のゴルフR用をベースに専用チューニングやアクラボヴィッチ製チタンエキゾーストシステムの採用などにより、パフォーマンスはノーマル+60ps/+30Nmとなる290ps/380Nmを発揮。トランスミッションはDSGのみの設定だが、ノーマルの6速から7速に変更されている。

大幅な出力アップに合わせてフットワークも強化されており、専用セットアップのサスペンション(5mmローダウン)、電子制御油圧式フロントディファレンシャロック、235/35R19サイズのピレリP-ZERO、大径ブレーキディスクなどを採用する。

外装は男前だが、シャレてる内装で女子受けも◎

エクステリアはフロントリップスポイラー/サイドスカート/リアデュフューザーなどの専用パーツ(ブラックペイント)や専用デザインのアルミホイール(マットブラック)、更にサイドのTCRのデカールにより、明らかにノーマルとは異なるオーラがプラス。ボディカラーは4色用意されるが、TCR専用色の「ピュアグレー」はGTI伝統の赤いラインの入りのフロントグリルがより際立つ。

インテリアはGTI伝統のチェック柄シートではなくブラック&レッドのコーディネイトで、専用ファブリック&マイクロフリースシート、専用ステアリング(12時のポイントに赤いセンターマーク付)、専用シフトノブなどを採用。更にフロントドアを開けた際に地面にTCRロゴが映し出されるプロジェクション機能も用意。これはユーザーのみ味わえる特権の一つだろう。更に購入者には車両の鍵に加えてシリアルナンバー刻印のプレート、Bluetooth発信機が同梱された「スペシャルキーボックス」もプレゼントされるそうだ。

その走りはどうか?

 エンジンは実用域ではノーマル同様に非常に扱いやすい特性だが、3000rpmを超えたあたりから力強さが爆発。ラフなアクセルコントロールだとトラクションコントロールのお世話になることも……。レッドゾーンを一気に超えてしまいそうなくらいの伸びの良さも印象的で、欲を言えばあと+500rpmほしいと思ったくらいである。エキゾーストは音量は控えめながらも回すほどに低く野太い乾いたサウンドを奏で、ドライバーの気持ちをより高めてくれる。

 

ノーマルのバランスを崩さずより精緻、より研ぎ澄ましたハンドリング

クルマの重さを感じさせない軽快かつレスポンスのいい動きに加えて、薄皮を一枚剥がしたかのようなダイレクト感とハイパワーFFを感じさせないトラクション性能の高さ、そしてノーマルよりも抑えられたアンダーステアも相まって、まさにオンザレールのコーナリング。

ただ、パワートレインとシャシーのバランスで言えば、わずかにパワートレインが勝っている印象。バランスを取るにはドライバーがコントロールする必要がある。僕はむしろそれこそがホットハッチの旨みの一つだと考えている。また、細かい部分になるがファブリック&マイクロフリースのシート表皮はノーマルよりも体が滑りにくく安定したドライビングにも寄与しているように感じた。

憧れのクルマをファミリカーとして使える!?

快適性に関してはDCC「スポーツ」だとコツコツ感は多少あるも激しい突き上げはないので不快感はなし。逆にDCC「コンフォート」であれば19インチを履いていることを忘れるくらいの優しい乗り味なので、ファミリーカーとして使っても問題はないだろう。ちなみに7速化されたDSGにより高速走行時の回転数も抑えられており、結果として燃費低減も期待できそうである。

ノーマル越えで更に魅力的になったGTI TCR

そろそろ結論に行こう。GTI TCRはGTIの世界観を崩すことなく動力性能を大きく引き上げたことも重要だが、僕はそれよりもノーマルにはちょっと足りないと思っていたホットハッチに必要不可欠な「ワクワク/ドキドキ」が色濃くなったことを高く評価したい。僕は「初代GTIの衝撃」をリアルに体感していない世代だが、GTI TCRに乗って当時の人の気持ちが少し解ったような気がした。実はレースからフィードバックされたのは、実は「GTIの原点」だったのかも!?

価格はノーマル+約100万円の509,8万円だが、変更内容を考えれば決して高くはないと思う。600台の限定販売だが、12月上旬までにその半分が売れてしまったとの事なので欲しい人は急いだほうがいいだろう。

[筆者:山本シンヤ/撮影:和田 清志]

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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