人気のSUV市場、でも隙間はまだあった! 新型カローラクロスの巧妙過ぎるパッケージングと走りには驚きっぱなし![カローラクロス 試乗&解説]

  • 筆者: 今井 優杏
  • カメラマン:茂呂 幸正・MOTA編集部・TOYOTA
画像ギャラリーはこちら

大小の新型SUVラインナップを矢継ぎ早に投入し続けるトヨタが”カローラ“の名を冠するコンパクトSUV「カローラクロス」を発売した。『そんなに出して需要はあるの??』と最初は疑問符だらけだったというモータージャーナリストの今井 優杏さん。しかしそんなカローラクロスを速攻試乗したところ、巧妙なパッケージングと走りの良さに心底驚いた!

目次[開く][閉じる]
  1. とにかく豊富なトヨタのSUVラインナップ、そこにあえてカローラクロスを投入する意義とは
  2. 価格やサイズが接近する本格SUV「RAV4」と新型カローラクロスの最大の違いとは
  3. ハイブリッドとガソリン1.8リッター、どちらの走りも好印象で悩ましい…
  4. 新型カローラクロスのイチオシはハイブリッドだが、価格も安く軽快な走りが魅力の1.8リッターガソリンも捨てがたい

とにかく豊富なトヨタのSUVラインナップ、そこにあえてカローラクロスを投入する意義とは

正直そんなにSUVばっかり出して、需要はあるのか? と思っていた。カローラクロスに乗る前は。

だってそう思ったって不思議じゃない。今やトヨタは世界のトレンドに倣い、とかくSUVとかクロスオーバー的な車種が豊富だ。そもそも車種バリエーションの多いメーカーであるからして、ヤリスがヤリスクロスになったりカローラがカローラクロスになったりする前から、ライズもC-HRもハリアーも、さらにRAV4も存在しちゃっていたんだから。

ライズ、ヤリスクロスから、C-HR、ハリアー、RAV4まで…豊富過ぎるトヨタのSUVだが

しかし、これらのラインアップをじっくりと観察すると、やはり人間の欲求の落とし所の穴というか、セグメントの隙間はたしかに存在している。

たとえば今でも大人気車種のライズはお手頃価格のワリに大きなボディサイズでお買い得感はあるけれど、いかんせん1.0リッターエンジンで遠出にはもう少しパワーが欲しい人もいるだろうし、もっと高級感が欲しい人もいるだろう。

ヤリスクロスはやっぱり小さいからもうちょっとラゲッジ容量や室内空間が欲しいという人もいる。C-HRはすごくカッコいいけれどやはり、後部座席が狭め。

飛び越えてハリアーは…これはちょっと高級すぎるしチャラすぎる…もとい(失礼)、ちょっぴり若向けな感じだから落ち着きが欲しい。そしてRAV4は本格的オフローダーすぎて所有に敷居が高いうえに、背だって実際に高くて取り回しが不安。値段も高いし。なんていう具合だ。

豊富なSUVラインナップ、しかしどれももうひとつしっくり来ない人のために誕生したカローラクロス

そこにカローラクロスである。

巧い。実に巧い。クロスオーバーモデルでありながら、SUVと言うにはやや生真面目っぽい雰囲気を醸し出す、“線”を基調にしたデザインで優等生感もあるからファミリーユースにも向くし、実際に乗ってみれば後部座席の広さにも舌を巻く。

ラゲッジの広さもボディサイズから察する以上だったのだ。ああ、もうパッケージをチェックしただけで人気出そうなムードがムンムン。

さらに先に言っちゃうけど、実は走りもとても良かった。順に話していこう。

価格やサイズが接近する本格SUV「RAV4」と新型カローラクロスの最大の違いとは

ベースとなったのは、2019年のフルモデルチェンジで走りの質を大幅に向上させ高評価を得た「カローラ」シリーズ

カローラクロスのベースとなっているのは言わずもがな、すでに発売されているカローラだ。グローバル車としての確固たる地位もあり、これまでのトヨタの屋台骨を支えたクルマである。

だから、2019年のフルモデルチェンジには相当なコストと工夫を注ぎ込んできた。その甲斐あって、今のカローラは従来のカローラのレベルを越える、凄まじい走りの味、ハンドリングの手応えを手に入れている。

今回のカローラクロスは、パワートレーンやアーキテクチャなど、ベースはカローラのものをそのまま流用している。しかし、クロスオーバーというボディを持つにあたり、走りや使いやすさへの変更ももちろんぬかりはない。

本格派のRAV4よりも、日常での丁度いい使いやすさを重視したカローラクロス

カローラベースであることで得た利点といえば、ドアなど乗降口の低さだ。本格派クロスカントリーモデルであるRAV4と比較すると、この乗り込み口、つまり足入れの低さはむしろ、都会中心で乗るユーザーには利点となるだろう。特に小さなお子様にとっては、この乗り降りのしやすさが決めテになるという人も多そうだ。

そう、カローラクロスは都会ですごく重宝がられるような仕様になっているのである。

実は価格をよく吟味していくと、カローラクロスのハイエンド側グレードであれば、RAV4にも手が届く価格帯となっている。

悩ましいことにRAV4もどう考えてもメッチャいいクルマだ。悪路走破性は抜群だし、上級機種らしい威厳に溢れている。スノースポーツやキャンプ、山登りなど、アウトドアを趣味にしているようなエクストリーム系パパママには、もうこれ以上ない選択肢だとは思う。しかし、繰り返すようだが街乗りであれば意外にもこのカローラクロスに軍配が上がりそうなのだ。

先述の乗り込みの良さも然り。そしてカローラ由来の優しいマイルドな乗り心地も、その理由として推したい。

ハイブリッドとガソリン1.8リッター、どちらの走りも好印象で悩ましい…

今回はガソリンエンジンとハイブリッド、両方の試乗が叶った。1.8リッターのガソリンエンジンモデルと、1.8リッターエンジン+モーターのハイブリッドであるリダクション機能付きのTHS II。双方、二駆だ。

試乗を終え、どちらにも言えるのが、パワートレーンの違いによっての“味”の差があまりないことだった。

軽快なハンドリングが印象的だった1.8ガソリンモデル

細かく言えばガソリンエンジンはとても軽快でハンドリングが楽しい。交差点を曲がったり、チョチョっとコンビニに入ったりするのでさえ、鼻先が機敏に反応してスポーティな楽しさに満ちている。

感激したのがこの1.8リッターガソリンエンジンの、繊細で滑らかな吹け上がりの良さ。欧州プレミアム勢のマイルドハイブリッドに引けを取らないくらいの、スッキリした走り出しを見せることだった。車体が大きくなることに対して、デファレンシャル比をひとつロー側にして促進感を補っていること、さらに車体全体の軽量化に尽力したことが、その理由として挙げられる。

圧倒的な低燃費、だけじゃない! 高級・重厚な走りが心地よいハイブリッド

ハイブリッドはやはり、高い静粛性から生み出される高級・重厚感が魅力だ。ガソリンエンジンモデルよりも重量がある分のモッタリ感をモーターのトルクで補う手法はすでにお馴染み。さらにこの重みが接地感と繋がって、がっちりと地面を掴むようなフィールを存分に味わうことが出来る。しかし、そんなに重厚なのに、メーター内の燃費表示は実に23km/Lに達していた。カタログ燃費の26.2km/Lには及ばずとも、普通の試乗、しかもなんなら全然エコドライブを心がけたりもせず、撮影のためにアイドリングしたり急に走らせたり、駐車場の中であっちこっちに頭を向けて移動させたりしていたりした、にもかかわらず、この数値! 正直、多少のアラなら目を瞑らされてしまうレベルの低燃費ではないか。

ガソリン・ハイブリッド共通の美点はハンドリング性能と乗り心地の高度な両立にある

…という双方の個性はありこそすれ、コーナリングでも意外なほどに傾きが少なく、きっちりと走行ラインを取って走ることの出来るオンザレール感覚は双方に健在だし、さらにそれほどにハンドリングがしっかりと固められているにも関わらず、サスペンションのアタリはどこまでも柔らかで、角を丸めてあるような感じなのだ。そう、ガソリン/ハイブリッドともに、足回りの印象がめちゃくちゃ似通っているのだ。

実は自動車として、これは難しいことではないかと私は考えている。なぜならば、同じクルマでもパワートレーンが異なるだけで全く別の個性を持ってしまった、という例のほうが、圧倒的に多いからである。

しかしカローラクロスは、ちゃんと“カローラクロス味”を貫いていた。なぜか。これを聞くと、開発陣から面白い答えが返ってきた。それが、『カローラクロスの隣には、常にC-HRを置いて開発を進めて来ました』というものだ。

評価軸となったのは、欧州でも定評のスーパーハンドリングマシーン「C-HR」だった!

トヨタにおいて、コンパクトSUVというセグメントの中でのC-HRの評価は非常に高い。私個人もはじめてC-HRにサーキット試乗したとき、慄(おのの)いたものだ。こんな技術を安価で然るはずのコンパクトクロスオーバーに搭載したことを恐ろしく思ったものだ。

しかし、同時にC-HRはハンドリングに振りすぎたクルマでもあったという。これを教訓に、リアを中心に入力を下げ、お尻に入るゴツゴツとした感触を伝えないよう苦心したという。

今回の新型カローラクロスのリアサスペンションはトーションビーム式(C-HRはダブルウィッシュボーン式)だが、これが新開発なのだという。その出来を「世に出ているトーションビームの中では最高級だと自負しています」と、そうはっきり言い切ってくれた。

さらに言うなら、そのサスペンションの機能を引き出すための、カローラ譲りの骨格もやはり、重要なのだそうだ。ボディがしっかりするからそれぞれの仕事をパーツごとに高い次元で発揮することが出来る。常にキャラの異なるC-HRを置いて開発することで、ブレのないゴールを目指せたのだという。

新型カローラクロスのイチオシはハイブリッドだが、価格も安く軽快な走りが魅力の1.8リッターガソリンも捨てがたい

というわけで、心がだいぶカローラクロスに傾いてきた諸兄に、じゃ、買うならガソリン/ハイブリッドどっちなのよ、という結論を申し上げたい。

ハイブリッドはやはり、圧倒的な燃費が魅力だ。実に現在、受注の9割がハイブリッドというくらいに人気があるそうだ。間違いじゃない。むしろ正解だ。

しかし、敢えて言いたい!

ハンドリング好きならガソリンエンジンめっちゃ良いよ! と。

なによりこのエンジンフィール自体が「あれ?」ってくらいに気持ちいいし、軽やかな挙動がキャラにも合っている。スポーティなハンドリングを求めるなら断然コッチだ。しかもここだけの話、ヤリスクロスにチョイ足しくらいの価格で手に入る、コスパも最強。

さあ、今週末は是非カローラクロスに乗ってきて欲しい。派生車種と侮ることなかれ。単にカローラのボディをでっかくしただけでしょ、な〜んて言葉を後悔すること間違いなしだから!

[筆者:今井 優杏/撮影:茂呂 幸正・MOTA編集部・TOYOTA]

トヨタ/カローラクロス
トヨタ カローラクロスカタログを見る
新車価格:
218.4万円345.9万円
中古価格:
208.3万円441.8万円

この記事の画像ギャラリーはこちら

  すべての画像を見る >

【PR】MOTAおすすめコンテンツ

検索ワード

今井 優杏
筆者今井 優杏

自動車ジャーナリストとして、新車や乗用車に関する記事を自動車専門誌、WEBメディア、一般ファッション誌などに寄稿しながら、サーキットやイベント会場ではモータースポーツMCとしてマイクを握り、自動車/ モータースポーツの楽しさ・素晴らしさを伝える活動を精力的に行う。近年、大型自動二輪免許を取得後、自動二輪雑誌に寄稿するなど活動の場を自動二輪にも拡げている。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

MOTA編集方針

「車好きのみんなが見ているメルマガ」やSNSもやってます!
カー用品・カスタムパーツ

愛車の売却を、もっと楽に!もっと高く!

  • 一括査定はたくさんの買取店からの電話が面倒?

    これまでの一括査定は、たくさんの買取店からの電話が面倒でした。MOTA車買取なら、最大20社の査定額をwebで簡単比較。やり取りするのは査定額上位の3社だけ。車の査定が楽に完結する仕組みです。

  • 一括査定は本当に高く売れるの?

    これまでは、買取店に会わないと査定額がわからず、比較がしづらい仕組みでした。MOTA車買取は、申込翌日18時に最大20社を簡単比較。加えて、買取店は査定額上位3社に選ばれるために競い合うから、どうしても高く売れてしまいます。

新車・中古車を検討の方へ

人気記事ランキング
最新 週間 月間

新着記事

新着 ニュース 新型車 比較 How To
話題の業界トピックス・注目コンテンツ

おすすめの関連記事

トヨタ カローラクロスの最新自動車ニュース/記事

トヨタのカタログ情報 トヨタ カローラクロスのカタログ情報 トヨタの中古車検索 トヨタ カローラクロスの中古車検索 トヨタの記事一覧 トヨタ カローラクロスの記事一覧 トヨタのニュース一覧 トヨタ カローラクロスのニュース一覧

この記事にコメントする

コメントを受け付けました

コメントしたことをツイートする

しばらくしたのちに掲載されます。内容によっては掲載されない場合もあります。
もし、投稿したコメントを削除したい場合は、
該当するコメントの右上に通報ボタンがありますので、
通報よりその旨をお伝えください。

閉じる