ポルシェ タイカンはEVでも”ポルシェらしさ”を継承! 内燃機関にはなかった加速感に注目
- 筆者: 伊藤 梓
- カメラマン:ポルシェジャパン
内燃機関のスポーツカーを乗り継いできた人にとって、EVにはスポーツカーの“味”は感じられないのではないか、そこが気になるところだろう。
しかしポルシェ初のフル電動スポーツサルーン『ポルシェ・タイカン』には、その不安を払拭するような“ポルシェらしさ”があったという。そう語るモータージャーナリストの伊藤 梓さんが感じたタイカンの魅力について紹介していこう。
内燃機関のないスポーツカーに「味」は感じられるのか?
2022年12月中旬、トヨタが2030年までに30車種の電気自動車(EV)を展開していくと発表してから、にわかにEVに注目が集まりはじめたように思える。個人的には、EVだけでなく新しいエネルギーを動力源とした、インフラの整備などに課題は残るとはいえ、純粋に楽しみだ。
そんななか気になることは、これまでの内燃機関のようにEVでも「味のあるモデル」は作れるのだろうか?ということ。
特にスポーツカーブランドは、これまでファンに好まれてきたそのメーカーらしさが薄まってしまえば、あっという間に淘汰されかねないだろう。
その不安を払拭させるスポーツサルーン『ポルシェ・タイカン』が登場
長年愛されてきた歴史あるスポーツカーブランドと言えば、ポルシェもそのひとつ。内燃機関のスポーツカーを作り続けてきたポルシェも、2015年のジュネーヴショーで同社初のEVのコンセプトカーである『ミッションE』を発表。
これまでのポルシェとは一線を画す斬新なデザインで、いかにもコンセプトカー然としたモデルだった。「市販モデルはこんな形では出ないだろうな」と思っていたら、2019年にほとんど変わらないデザインで量産モデル『タイカン』が発表されたことに驚いた(観音開きのドアだけは実現していないが)。
タイカンは、ひと目見ただけで他のポルシェとの違う先進性がはっきり感じられるのに、滑らかでつるりとしたボディはこれまでの歴史をしっかり踏襲しているようにも見える。
EVの課題は給電速度。そこでポルシェは高出力の『ターボチャージャー』を投入
タイカンのバッテリー容量は79.2〜93kWhで、満充電あたりの航続距離は、約335〜464km(WLTPモード)。日本に普及するEVは、40~60 kWhなので、タイカンほどバッテリー容量が大きいと、一般的なCHAdeMO規格の急速充電(50kWh)では30分で80%まで充電することができない。
しかしタイカンは、市販車のEVとして初めて800V電源を採用したことで、超高速充電を可能とした。もちろん、それには高出力の充電施設が必要になるが、最近では150kWの出力を誇るポルシェ独自の急速充電『ターボチャージャー』が全国に設置され始めている。※2021年現在は充電ケーブルの関係で90kWに抑えての運用されている
これから本格的に電動化にシフトするためには、単なる電気自動車の普及だけではなく、これまでのインフラに加えたプラスアルファがなければ、大きく普及させるのは難しいように思う。
そういった意味で、ポルシェは自車のポテンシャルに合わせたインフラを整えるなど、オーナーに投げっぱなしにしないところに好感が持てる。
内燃機関のスーパーカー並みのスペックを持つスポーツカー
タイカンの走りについて話していこう。とにかくタイカンは他のEVと比較しても圧倒的なパフォーマンスを誇っているのが特徴だ。
ポルシェはSUVですら「スポーツカーです」と言い切るブランドで、その言葉に違わない性能のモデルを提供してくれる。それは、EVになっても変わらない。むしろ、タイカンに触れてみて、その期待を大幅に超えたモデルになっていると感じた。
もっともベーシックなタイカン以外は、前後アクスルにそれぞれモーターを搭載した4WDモデルとなる。その4WDのベーシックなモデルである4Sでも最大出力435〜490ps(ローンチコントロール使用時571ps)を発揮し、最大トルクは640〜650Nmをとなる。見かけ上の数値では、他の内燃機関のスーパーカーのそれと似ているが、全く違うのはその加速感だ。
内燃機関にはなかった加速感、そして紛れもないポルシェの味
内燃機関のパワートレインと比較すると、モーターは急激にトルクが立ち上がるので、SF映画でよく見るようなワープをしているような感覚になる。大容量のバッテリーを搭載しているので、車両重量はゆうに2000kgを超えるが、驚くのはその重さをほとんど感じさせないこと。
コーナーリングでも鋭く切れ込み、緻密にクルマをコントロールして曲がっていくことができる。そのクルマの所作からブレーキのタッチ、ステアリングフィールまで、「紛れもなくポルシェだ」と感じさせてくれるモデルになっている。
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