日本は既に周回遅れ!? 広州で乗った中国最新EV事情に猛烈な危機感

中国の最新EVをサーキットで試乗する!

チャンスに恵まれて、2018年10月に中国で中国製EVを4台試乗し、翌日に広州モーターショーを取材することができた。

4台のEVとは、「Cherry iEV5」「JAC EV200」「BYD e5」「Geely EM GRAND EV」。

乗ったのは、郊外のサーキット。規模としては、日本の筑波サーキットぐらいのところ。

>>広州モーターショーに展示されたカッコいい車両たちや〇〇にそっくり!?な中国のEVを画像でみる

航続距離は301km!?〇〇にそっくりなEV「Cherry iEV5」

まず初めに乗ったのは、Cherry iEV5。スマートフォーツーやトヨタ iQにそっくりな、ボディ前後長が極端に短いプロポーションのEVだ。38kwhの容量のリチウムイオンバッテリーを搭載し、航続距離はNEDCモードで301kmという強気な設定だ。本当にそれだけの距離を走ることができるかどうか確かめることは今回はできないが、最新のバッテリーを積めば、かなりの距離は走行可能なのだろう。

インテリアも良く考えられ、配色と造形のセンスも良い。大きなモニター画面を配して、インターフェイスも良好だ。コースを走った感触も悪くない。キビキビと良く走る。価格さえ妥当だったら、シティコミューターとしてこのままで売れるだろう。

良いところなし?「JAC-EV200」と「BYD e5」

次に乗ったのが、JAC-EV200。バッテリー容量が23kwhと小さめなので、航続可能距離も170kmと短い。モーターの最大出力も50kw。したがって、加速力も乏しい。おまけにブレーキもプアな上に、スタビリティも貧弱で、コーナーでは終始強いアンダーステアに見舞われていた。トラクションコントロールも装備されておらず、雨で濡れた路面では滑りまくっていた。すべてが古く、良いところを認められなかった。

基本設計が古く、試乗車のコンディションも万全ではなかった点を考慮に入れても、このクルマを購入することは考えられないだろう。レンタカーで渡されても困ってしまう。

BYD e5は、モーター最大出力が150kwというだけあって、実際にパワフルだった。ただ、そのパワーをタイヤを通じて路面にしっかりと伝えることができていない。アクセルペダルを強く踏み込むとホイールスピンを起こすし、アンダーステアも強い。せっかくのパワーが有効に生かされていない。

圧倒的な性能を誇る中国最新鋭のEV「Geely EM GRAND EV」

そして、最後はGeely EM GRAND EV。いまやボルボやロンドンタクシーなども傘下に収めている中国最大の地場資本メーカーだ。設計年次が新しく、最新型だということがシートに腰掛けただけでわかる。フルデジタルメーターで、モニター画面も大きい。

走り出しても最新型であることは一目瞭然。120kwのパワーは強力で、加速も鋭い。路面への駆動力もキチンと伝えられている。直線で140km/h出た。バッテリー容量は52kwh。

静かでスムーズで速い。トラクションコントロールもきちんと効く。回生ブレーキも3段階に変えられるのも日欧のEVと遜色ない。前述の3台と比べるのが無意味なほど、完成度が高い。4台の中で、ダントツで優れている。価格次第では、このまま日本やヨーロッパで販売されてもおかしくないほどの商品力を備えている。

中国のEV事情

4台の比較は、完成度やポテンシャルを比べても半ば無意味なことだった。なぜならば、優劣は設計年次の新旧によるところが大きかったからだ。その意味から、GeelyのEM GRAND EVは中国の最新鋭のEVだということになる。

中国国内のEV販売については、国家政府と地方政府双方からの補助金が交付されている。その算定基準が複雑で、簡単には補助金額が窺い知れないのがもどかしいが、国を挙げてEVを普及させようとしていることが良くわかる。

つまり、EM GRAND EVのような最新鋭のクルマでなくても補助金対象となっていて、その額も地域によっては大きかったりすれば売れ行き鈍化も起こらなくなる。この辺りは、単にクルマの出来の良し悪しだけでは推し量れない中国のEV事情の複雑さを物語っている。

広州モーターショーでひと際存在感を放つプレミアムEV「NIO」

その翌日、広州モーターショーを取材した。広大な会場は見て回るだけで大変だったが、その中でもひときわ存在感を示していたブランドがあった。

「NIO」(ニオ)である。2014年に創設された中国本拠のスタートアップ企業で、中国のIT大手や投資ファンドなどから巨額の投資を受けている。

同ブランドのEVのスーパーカー「EP9」が2018年春にドイツのニュルブルクリンク北コースのラップタイムを更新した。そのニュースは日本でもだいぶ広まったからご存知の方も少なくないだろう。

そのNIOがブースを出していた。輸入高級車やEVだけをひとまとめにした棟にだ。NIOのブースには、その真ん中にはEP9が展示され、その後ろにはニュル攻略の際のオンボード映像が流されていた。

7人乗りSUVのEV「es8」も登場

NIOの目玉はもうひとつあって、それが「es8」だった。アルミボディ/シャシーを用いた3列7人乗りシートを備えたSUVで、EVなのである。

前後に2基搭載したモーターの合計出力は652馬力、最大トルク840Nmを発生して4輪を駆動し、0-100km/h加速4.4秒という俊足を誇る。エアサスペンションと4ピストンのブレンボ製ブレーキを装備する。

航続距離はNEDCサイクルで355km。それほど長い距離ではないが、es8はオーナーがバッテリーを交換できるという一大特徴を持っている。交換作業は3分で完了し、NIOによるバッテリー交換ステーションの建設を2020年までに中国全土で1100カ所も予定されているというから驚きは尽きない。

es8には4万4000元からという価格が付けられ、すでに販売を開始している。展示された何台ものes8は人気で、運転席に腰掛けてスタッフの説明を聞いている人が何人もいる。

自分も運転席に座ってみると、そのクオリティの高さに驚かされた。レンジローバーかカイエンかというくらい品質が高い上に、造形や素材遣いのセンスが良い。昨日乗った4台のEVとは大違いのプレミアム感だ。

「Hi!メルセデス」の上をいく高精度AI「ヌーミ」を実装

es8のダッシュボード中央部分にはAIロボットの「NUMI」(ヌーミ)が備え付けられている。

半球形型のNUMIのこちらに向いた断面には人の眼のようなデジタル表示がなされていて、それは上院からのコマンドごとに肯定を表す笑顔や否定を表す渋い顔に変わっていく。

NIOのスタッフが見本を見せてくれた。「ヌーミ、窓を開けて」中国語でそう口にすると、es8のドライバー側の窓ガラスが降りた。「ヌーミ、こっちも開けて」後席に移ったスタッフが命じると、彼の座っている後席の、それも右側の窓ガラスだけを下げた。声のする方向と距離をヌーミが測って判断し、その窓ガラスだけを開けたのだ。「ヌーミ、ぜんぶ開けて」それを聞いたヌーミは、まだ閉まっていた残りの窓ガラスすべてを開けた。

これには驚かされた。ヌーミは音声を認識するだけでなく、命じた人物がどの席に座っているのかを測定し、把握した上でコマンドを実行している。

同じようにして、エアコンの設定、カーナビの目的地設定、音楽の選択と再生、さらにはダッシュボード中央の大きなモニター画面を反転させ、車内の乗員の写真を撮影し、ウェイボーで友人に送るメッセージに添付まで行った。それもすべて音声のみで、である。命令が良く聞こえなかったり、理解できなかったりすると、ヌーミは“困った顔”になり、聞き直してくる。

運転に関する操作以外は、車内の各種の操作がこのヌーミによって行うことが可能だとスタッフは自慢気に説明していた。

新しいメルセデス・ベンツ AクラスがAIを搭載しているらしいけれども、ここまでAIを実用化しているクルマに初めて遭遇した。この説明の通りに使えるのだったら、とても便利だ。世の中のクルマが早くこうなって欲しいと心から願った。

日本はもはや周回遅れ!日本の自動車メーカーの動きが猛烈に遅い理由とは

聞けば、NIOは自動車メーカーとは言っても工場を持っていないのだという。きのうサーキットで試乗して、あまりいい印象の残っていないJACに製造を委託している。JACに資金を投下して、es8専用の製造ラインを新たに建造して製造している。

家電やアパレルの世界などでは、“ファブレス”という言葉が一般化し、自ら工場を持たずに、デザインと設計だけを行うビジネスモデルが一般化している。アップルがその際たるものだろう。

NIOはそのクルマ版、EV版である。クルマもそうして造られるような時代になったのである。優れたデザインと設計を行うことができるならば、製造設備を自ら持たなくてもクルマを造れるのだ。

ヌーミのようなAIロボットは日本でも技術的には造ることはできるだろう。しかし、es8のような魅力的なクルマ、EVは日本からは一向に出てくる気配もない。工場をいくつも持ち、巨大な組織である日本の自動車メーカーは図体が大きいが故に小回りが効かず、es8のようなクルマを生み出せていない。世の動きの速さに付いていけていないのではないか?

もちろん、EVの世界はまだ始まったばかりのジャンルで、過去の経験の蓄積が問われることがない。だからがゆえに、中国のメーカーや政府筋などもそこに一層の投資を行っているわけだ。

また、魅力的なEVを造り出したところで、EVの売れ行きは充電設備などのインフラの整備に大きく左右されるという事情もある。日本においてはそこが大きなネックになっているから、日本の自動車メーカーはその事情を良くわかっているからあまり積極的でないのかもしれない。

それでも、このes8が体現しているスピード感や同時代性などが日本の自動車メーカーからまったく漂ってこないところが残念でならなかった。中国のEVはかなり先を行っていて、日本は慎重すぎて取り残されてしまっている。

中国のEVに乗り、モーターショーで中国の最新のEVに触れて、彼我の差の大きさを思い知れされた。一日も早く、es8に乗ってみたい。

[著者:金子 浩久/ 撮影:金子 浩久]

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金子 浩久
筆者金子 浩久

モータリングライター 1961年東京生まれ。 自動車と自動車に関わる人間について執筆活動を行う。主な著書に、『10年10万キロストーリー』(1~4)、『セナと日本人』、『地球自動車旅行』、『ニッポン・ミニ・ストーリー』、『レクサスのジレンマ』、『力説自動車』など。記事一覧を見る

監修トクダ トオル (MOTA編集長)

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