三菱 新型アウトランダーPHEV 試乗|フルモデルチェンジ並みの走りの進化に驚く!

進化・熟成を重ねてきたアウトランダーPHEVが、これまで以上に大幅改良

自動車業界は現在「電動化」は避けられない状況である。三菱はそんな時代を予想していたのか(!?)、1966年より電気自動車の開発をスタート。その一つの分岐点となったのが1995年。シャリオをベースにした「三菱HEV」を発表した。三菱初のリチウムイオンバッテリー搭載で航続距離は約100km、バッテリーがなくなるとエンジンで発電機を回して走る、つまり「PHEV(プラグインハイブリッド)」の先駆けであった。このモデルは実際に走行可能で、実証実験も行なわれた。

その末裔と言えるのが2013年に登場した「アウトランダーPHEV」である。古くから研究を行なっていた「電動化技術」に加えて、ランエボで培ってきた「四輪駆動力制御」、そしてパジェロで培ってきた「オフロード性能」と、現在三菱が持つテクノロジーを集結させたモデルと言っていいだろう。

日本はもちろん世界でも販売が行なわれ、累計販売台数は16.2万台(18年6月)と世界で最も売れているプラグインハイブリッドSUVではあるが、初期モデルは「とりあえず技術を集結しました」という印象で、ハード/ソフト共にせっかくの技術を上手に活用できていなかったと思う。

その辺りは三菱自身も認識しているようで、登場以降毎年のように進化・熟成を行なってきたが、今回の改良はちょっと別格。見た目の変更は僅かながらも、中身に関してはフルモデルチェンジに匹敵する進化と言ってもいい。

>>最新モデルのアウトランダーPHEVの内外装デザインを画像でチェック!

エンジンは2リッターから2.4リッター アトキンソンサイクルに変更

まずPHEVシステムが大きくアップグレードされた。フロントのエンジン+モーターとリアモーターを独立制御する「ツインモーター4WD」をベースに、AYC(ブレーキ制御)、ASC(アクティブスタビリティコントロール)、ABSなどを統合制御する「S-AWC」と基本構成は不変だが、エンジンは2リッターから2.4リッターアトキンソンサイクルに変更された。

ジェネレーターの最高出力は10%アップ、駆動用バッテリーはバッテリー容量15%、バッテリー出力は10%アップ、そしてリアモーターは最高出力+10kWと全面的に見直しが行なわれている。

これによりEV領域の拡大や航続距離の向上(60.8→65.0km)、EV最高速度アップ(135km/h)を実現した。

パワートレインの進化に合わせてシャシー側も手が加えられ、ボディには従来Sエディションのみに採用されていた構造用接着剤が、前後ドア/ラゲッジルーム開口部/リアホイールハウスのボディパネル接合部と、塗付範囲を拡大して全モデルに採用。

そしてサスペンションは、ビルシュタイン製ダンパー採用のSエディション以外のモデルでは、サイズアップ&新バルブ採用の新ショックアブソーバーを採用。更にステアリングのギア比のクイック化と電動パワーステアリング制御の変更がされており、モータードライブにマッチした「滑らかな走り」を目指したそうだ。

S-AWCはモーターの持つ優れたレスポンスを活かし、クルマの走行状況、路面μの変化に対し瞬時に前後のトルク配分のみならず、左右の駆動力配分もコントロールする三菱独自の制御技術だが、パワートレイン/車体側のハードの進化に合わせてソフトを刷新。ツインモーター4WDの特性をより活かした駆動力統合制御により、4つのタイヤの性能をバランスよく最大限に発揮できるセットアップに加えて、新たに「スノーモード」と「スポーツモード」が追加されている。

エクステリア&インテリアデザインの変更はほんの少し

大きく刷新されたメカニズムに対してエクステリア/インテリアの変更は僅かである。

エクステリアはヘッドライトのデザイン変更(HiビームLED採用)、ラジエターグリル、LEDフォグランプベゼル、フロントスキッドプレート、アルミホイールのデザイン変更、リアスポイラーの追加を実施した。

そして、インテリアはオーナメントパネルやハザードスイッチのデザイン変更、ダイヤモンドキルティング本革トリム(上級グレード)採用、パワーメーターの表示変更や座り心地やホールド性が引き上げられたフロントシートの採用、USB電源増設や後席送風口の追加など、質感向上と利便性向上が図られている。

また、充電中のエアコン機能の使用が可能になったのも嬉しいポイントの一つだ。

そして気になる走行性能は!?その変貌っぷりがハンパない!!

パワートレインの特性は「今までモデルは何だったの?」と思ってしまうくらいの変貌っぷりである。

アクセルを踏むとより今まで以上にレスポンスがよく、まるでクルマが軽くなったかのような力強さに加えて、アクセルをかなり踏み込んでもなかなかエンジンが始動しない“粘り”もある。

静粛性も大きくレベルアップされ、従来モデルはいきなり「ウイーン」と唸るエンジンに興ざめしたが、新型はエンジンが始動しても回転自体が低い上に、アクセル開度に合わせて回転が上昇する制御になっており、アクセル全開にしない限りはほとんど気にならないレベルに。また、エネルギーマネージメントも進化しており、従来モデルとリアルワールドでのEV走行可能距離も確実に増えている。

それ以上に驚いたのは“走り”の部分だ。ステアフィールは従来モデルでは操舵力は重いのにインフォメーションが希薄だったが、新型は軽い上にインフォメーションもシッカリしている。ただ、センター付近はよく言えばおっとり系だが、もう少しビシッとした安心感が欲しいと感じた。

ハンドリングでは、駆動力制御「S-AWC」は低μ路では実感できたものの、オンロードではどちらかと言えば典型的なFFのようなフロントタイヤに依存したハンドリングだった。しかし、新型はまるで前後重量配分のバランスが変わったかのように、より4輪を上手に使って曲がるのだ。

同じコーナーを同じ速度で走ると、従来モデルよりも明らかにステアリング舵角が少ない上に安心感が全然違う。クルマの動きも一体感が増した上に動きも自然だ。これは基本性能のレベルアップに加えてモーターの特性をより活かすS-AWCの制御の相乗効果である。

結果としてワインディングを走って“楽しい”と思えるレベルに来ており、“電動化”と“駆動力制御”の旨みをより実感できる走りと言っていいだろう。

サスペンションの味付けは2タイプあり、今回試乗した「Gプレミアムパッケージ」を含む標準車は、スポーティと言うよりもツーリング志向のセットアップとなっている。快適性は、従来モデルの400万円近いプライスを考えるとウーンと言わざるを得ない乗り心地と、ドタバタした足の動きが気になっていたが、新型はタウンスピードレベルでも足がスムーズに動いている印象と路面からのアタリが確実に柔らかで、結果として動的質感も高まっている。

スポーティ&プレミアムな「Sエディション」にも試乗!

一方、スポーティ&プレミアムな「Sエディション」に乗ると、ビルシュタイン製ダンパーのセットアップは従来モデルと一緒だが、ボディ剛性アップの効果はテキメンで走りは明らかに違う。

具体的には、より無駄な動きが抑えられ正確になったハンドリングと若干硬めながらヒョコヒョコした動きは影を潜めた吸収性により快適性もレベルアップ。キャラクターに見合った走りになっているのだ。

また、新型で追加された「スポーツモード」を選択するとパワートレインはより俊敏/より力強く、駆動力制御はより曲がりたくなる制御に変更されるが、標準車ではやや過剰かな?と感じたものの、Sエディションだとシャシーとのバランスとマッチしていた。

そう言う意味ではSUVのランエボと言うとちょっと言い過ぎかもしれないが、走りに関して言えば、Sエディション+S-AWCスポーツモードは、エクリプスクロスと同じように“ランエボDNA”を感じた。

デザイン変更は少ないが“三菱らしさ”が戻って来た一台

ただ、走りの進化に驚く一方で、エクステリア/インテリアは設計年次の古さを感じるのも事実だ。

変更アイテムを単品で見るとデザインや質感の向上を感じるが、クルマ全体としてみるとややバランスに欠けているし、初期モデルから気になっていた無造作にレイアウトされているスイッチ類や現在のトレンドから考えると画面が小さいナビゲーション、そしてラゲッジの使い勝手などは手を入れて欲しかった部分だ。三菱としても本当は刷新したかったと思うが、台所事情だけでなくアライアンス内での将来の商品計画などなど、様々な問題が絡みあっているのだろう……。

とは言え、今回の変更で商品性が大きくレベルアップしたのは紛れもない事実である。従来モデルのユーザーなら間違いなく“箱替え”したくなるし、新規ユーザーには国内外に様々なクロスオーバーSUVが発売されている中で、電動化パワートレイン以外にも指名買いしたくなるようなプラスαの魅力、エクスプスクロス同様に“三菱らしさ”が戻って来た一台として積極的にお勧めしたいモデルだ。

[Text:山本 シンヤ/Photo:和田 清志]

三菱 アウトランダーPHEV 2019年モデルの主要スペック

三菱 アウトランダーPHEV 2019年モデルの主要スペック

モデル名

Gプラスパッケージ

全長

4695mm

全幅

1800mm

全高

1710mm

ホイールベース

2670mm

トレッド(前/後)

1540mm/1540mm

最低地上高

190mm

車両重量

1890kg

乗車人数

5人

エンジン

DOHC 16バルブ 4気筒

排気量

2359cc

エンジン最高出力

94kW(128PS)/4500rpm

エンジン最大トルク

199Nm(20.3kgm)/4500rpm

モーター最高出力 前/後

60kW(82PS)/70kW(95PS)

モーター最大トルク 前/後

137Nm(14.0kgfm)/195Nm(19.9kgfm)

駆動方式

4WD

JC08モード燃費

18.6km/L

EV航続距離(JC08モード)

65km

WLTCモード燃費(平均)

16.4km/L

WLTCモード燃費(市街地)

15.4km/L

WLTCモード燃費(郊外)

16.8km/L

WLTCモード燃費(高速道路)

16.8km/L

※燃費は車両認可前のため参考値

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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